「ミッドサマー」鑑賞後にカップルが破局? アリ・アスター監督「僕がひとりぼっちなら、みんなもそうでなきゃ」

2023年12月20日 22:00


アリ・アスター監督
アリ・アスター監督

へレディタリー 継承」「ミッドサマー」のアリ・アスター監督が来日し、12月19日に都内で行われた「ミッドサマー」のQ&A付き特別上映に登壇。新作「ボーはおそれている」のほか、日本でも人気の高い監督作についてファンからの質問に答えた。

ミッドサマー」は、スウェーデンの奥地で開かれる「90年に一度の祝祭」を訪れた大学生の男女が、想像を絶する悪夢に遭遇するさまを描く。

3年ぶりの来日となったアスター監督は「『ミッドサマー』で初めて日本を訪れた時は『アメリカに帰りたくない』と思ったくらいで、本当に日本のことが深く心に残っていました。こうして『ボーはおそれている』という新作を携えて戻ってこられて嬉しいです」と挨拶した。

観客とのQ&Aで最初に質問をしたのは、「ミッドサマー」を20回以上鑑賞しているという熱烈なファン。同作によって「人生が変わりました」と監督への感謝を述べ、「(物語が終わった)この後、ダニーはどうなっていくんでしょうか」と問いかけると、アスター監督は 「(ダニーが訪れるホルガ村の死生観、ルールに則り)72歳までは幸せに生きられるんじゃないかと思います」とユーモアたっぷりに回答。

京都から駆けつけたという女性は、アスター監督との対面に感激のあまり涙を流しながら「大好きです」と思いを伝えてから、「監督の一番のお気に入りのシーン」を尋ねた。アスター監督はまず「京都は大好きで、今回も4日間ほど滞在しました」と微笑みかけ、お気に入りのシーンについては「女性たちがダニーを囲んでわんわん泣いているシーンのみなさんのお芝居が好きです。現場で監督としてあのシーンを目撃して、まるで魔法のような瞬間だったことを覚えています」と振り返る。

続いて「(長編第1作の)『ヘレディタリー 継承』は、ある意味で観客は、監督との“共犯関係”にあるような悪魔的な立ち位置 に置かれていましたが、この『ミッドサマー』では、監督は観客をどういう立ち位置に置き、どういう視点で観てもらいたいと考えたのか」という質問が寄せられた。

アスター監督は少し考えた後「『ミッドサマー』では、観客のみなさんの視点はやはりダニーになるように設計しています。どんな作品であれ、どうしても監督の視点で撮るので、観客も監督の視点で観ることは避けられませんが、この作品に関して言うとダニーに共感するようにつくられています。とはいえ、そう言いつつも、多少の客観性があり、どちらかと言うと“神の視点”的な主観性を帯びている作品であると言えます。ダニーはやはり、一番面白い登場人物であり、複雑な経緯を持っています。家族を失い、彼氏は ダメダメで、この彼氏に頼れないので、代わりにすがる“何か”を求めて、さまようわけですが、その“何か”を手に入れるけれど、『あれ、なんかちょっと違う…』というものを手に入れてしまうわけです」と説明。

さらに、「この映画のエンディングをみなさんがどう受け取るか。僕はロールシャッハテストのようなものとして作ったつもりです。これをハッピーエンドと受け止めるか、そうではないのかという問いを投げかけています。カタルシスのあるラストシーンですけど、みなさんの見方次第で受け止め方は分かれると思います。その線引きをなるべく曖昧に描いたつもりです」と意図を明かした。

また、これまでの作品において、必ずと言っていいほど刺繍が登場する点について意図や理由を尋ねられると、「僕自身もイマイチわからないんですが、登場人物たちに何がしかのアートピース(小物)を通して表現する機会を設けようといているのかもしれません。そういえば新作『ボーはおそれている』もそうですし、春先から撮る予定の新作にも刺繍が登場します。おそらく、僕自身のバックグラウンドが影響しているんだと思います。僕の母はビジュアル・アーティストであり詩人でもあり、父はミュージシャ ンで、僕もスケッチするのが好きです。それもあって、登場人物たちは芸術行為を通じて自己表現をするようになっているのかもしれ ません」と分析した。

これまでのインタビューでは、自身の失恋経験が「ミッドサマー」を作るきっかけになったこと明かしてきた。実際、本作を恋人と鑑賞した後、別れるカップルが数多くいたとも言われている。こうした現象について「そうなることを予期していたんですか? 自分が失恋したから、他のカップルに対しても『別れちゃえ』という思いがあったんですか?」という直球の質問が寄せられると、アスター監督は 「Yes. Sure!(=もちろん!) 僕がひとりぼっちなら、みんなもそうでなきゃ」と即答。会場は爆笑に包まれ、大きな拍手がわき起こった。

ボーはおそれている」は、2024年2月16日に全国公開。R15+指定。ホアキン・フェニックスが主演を務めている。

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