戦争を生き抜いた少年が父になり、現代を生きる娘に伝えた思い「8時15分 ヒロシマ 父から娘へ」今夏公開

2021年4月30日 10:00


ハリウッド映画化への準備も進められている
ハリウッド映画化への準備も進められている

1945年8月6日、世界で初めて広島に投下された原子爆弾を至近距離で被爆した父・進示さんの壮絶な体験を、娘である美甘章子(みかもあきこ)が、長い時間をかけて聞き取り、2013年英語で書籍化。2014年日本語版「8時15分 ヒロシマで生き抜いて許す心」(講談社エディトリアル)を出版し、2020年にエグゼクティブ・プロデューサーとして自ら映画化した「8時15分 ヒロシマ 父から娘へ」が、2021年夏公開される。

戦争の愚かさ、原爆の残酷さのみを声高に訴えるのではなく、その地獄の様な状況にあっても、生きることを諦めなかった父の思いと、その40年後に起こったある事件から導き出され、父から娘へ受け継がれた、世界の平和を叶えるためのメッセージを紐解いていく。また、ナッシュビル映画祭2020観客賞受賞など世界的評価も高く、ハリウッド映画化への準備が進められている。

1945年8月6日、第2次世界大戦中の広島。父の福一と共に建物疎開の準備をしていた19歳の美甘進示の頭上を、激しい光が襲った。史上初めての原子爆弾は広島中を焼き尽くし、瞬く間に7万人以上の命を奪ったのだ。真夏の炎天下、父と息子は想像を絶する苦痛の中、焼けただれた体を引きずって、救助を探し彷徨う。父と離れ離れになった進示はひとり、父との再会を待っていた。しかし3カ月後、燃え尽きた瓦礫の中から、高熱で針の影が文字盤に焼きついた父の懐中時計を見つける。全て焼き尽くされた広島で進示を家族や先祖と結びつけるものはそれだけだった。そして40年後、進示の平和への願いは形となってニューヨークにある国連本部に届く。その数年後、ニューヨークを訪れた娘の章子は驚くべき事実を知る。

美甘氏と、原爆投下の経緯に疑問を投げかけるドキュメンタリー「もうひとつのアメリカ史」をオリバー・ストーン監督と共同で脚本執筆したピーター・カズニック氏、「ぼけますから、よろしくお願いします」の信友直子監督がコメントを寄せた。

2021年夏に、新宿・K's cinema、広島・八丁座ほか全国順次公開。

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▼コメント一覧

美甘章子

本作は、私の父である美甘進示の被爆体験を聞き取り、2013年に英語で書籍化、2014年に2020年、日米の仲間たちの支援や世界各地の友人達の励ましを受けながら、家族総出で手弁当で映画化した作品です。

父の想いを娘である私が受け継ぎ、本作の撮影や書籍の編集などでも参加してくれた息子のアンドリューや娘の聖羅、またその子孫の世代にも伝えていきたい。戦争、原爆の悲惨さと逆境を乗り越えて生きていく人間の強さを、世界中の若い世代に知って欲しいと思い、本作を作りました。私は被爆2世の日本人であり、現在カリフォルニア州サンディエゴを拠点に臨床心理医として生活しています。アメリカで原爆をメインのテーマにした映画を制作するのは非常に困難であるからこそ、30代のアメリカ人制作チームを編成して挑戦しました。多くの外国人は、「原爆投下があったから戦争が終わった」と信じています。我々日本人でさえ、そう思っている人も多いでしょう。この映画を世界に発信することによって、ご覧になった方がそういった認識をもう一度みつめ直すきっかけになれば良いと思います。

父は、祖父から受け継いだ許す心があったからこそ戦後75年間も生きぬけたのかもしれません。その許す心によって、個人間から国際関係までの様々なレベルで起こっている葛藤や紛争を乗り越え、文化や信条の異なる人たちが手を取り合い、2度と核戦争で他の人が苦しむことがないようにという父の強い願いのもとに育てられた私は、それを世界に伝えることは自分の使命のように子供の頃から感じていました。父は昨年、2020年10月全米でオンライン初公開となったナッシュビル映画祭開催中に94歳の生涯に幕を下ろしました。

ピーター・カズニック(「オリバー・ストーンが語るもう一つのアメリカ史」共著者、アメリカン大学歴史学部教授)

広島で若くして体験した被爆の苦しみ、生きる勇気と力、そして許す心―

美甘章子氏が綴った自身の父の物語は、人の心を動かすだけではなく、戦争について、そしてそれに関わる全ての被害者についてより深く考えるきっかけになるだろう。
 「8時15分 ヒロシマ 父から娘へ」には私たちの人間性を引き出す大きなインパクトがあり、争いを非暴力的に解決する未来に、少しでも私たちを近づけてくれるよう願っている。

それが美甘進示氏の夢である。

信友直子(「ぼけますから、よろしくお願いします」監督)

いわゆる商業映画ではなく、被爆二世の彼女がご自身のお父さまの「あの日」からの過酷な人生を、娘として絶対に将来に伝えなければという使命感のもと、身銭を切って作った作品です。51分と短い作品ですが、圧倒されました。

彼女は高校時代から、私にとって憧れのカリスマでした。当時から私の何倍も深く世界を見ていた彼女のまなざしは、このお父さまに育てられたからだったのだと、思い知りました。

辛いシーンも多いですが、見終わった後に胸に溢れるのは、人間の尊厳と希望。ここからまた始めようという「立ち上がる人間の強さと美しさ」に心が震えます。

コロナ禍で先が見えず不安な今だからこそ、みなさんにぜひ見て、生きる力をもらってほしい映画です。

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