森達也監督、望月衣塑子記者が注目される理由は「当たり前のことをやっているから」

2019年11月16日 13:09


望月衣塑子記者(右)と森達也監督
望月衣塑子記者(右)と森達也監督

[映画.com ニュース] 東京新聞社会部の望月衣塑子記者を追ったドキュメンタリー「i 新聞記者ドキュメント」の公開記念舞台挨拶が11月16日、東京・新宿ピカデリーで行われ、望月氏と森達也監督(「A」「A2」「FAKE」)が出席した。

シム・ウンギョン松坂桃李が主演した「新聞記者」の原案者としても話題を集めた望月氏の取材活動を通し、日本の報道の問題点、社会全体が抱えている同調圧力や忖度の実態に肉迫していく。今年の第32回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門に出品され、同部門の作品賞を受賞した。

挨拶に立った望月氏は「私自身が見直すと、自分の恥ずかしいところが満載でしたが、森監督が今の政治や社会にメッセージを突き付けてくれる映画を、皆さんがどういう風に受け取ったのか。気に入ってくだされば、ぜひ周りの皆さんにも伝えてほしい」とアピール。官邸での取材シーンについて「森監督がその場に入れなかったことも含めて、記者がいかに戦っているか。ときには、どんな風に(質疑に)妨害が入るかといった空気がトータルに描き出された」と話していた。

「これほど裏表がない人もめずらしい。よくしゃべりますよね(笑)、だから(取材が)楽です」と振り返る森監督は、望月氏について「パーフェクトな記者じゃないし、過剰でバランスもとれていないが、それでも注目されている理由は、(記者として)当たり前のことをやっているから。逆に周りの記者たちが、当たり前のことをやっていない」と分析。「組織ジャーナリストであっても、一番大事なのは現場性。1人称の主語で五感を使い、怒り、悲しみ、使命感を、組織の論理にぶつけるべき。それがなぜ、できないのか。それがしたくて、ジャーナリズムの世界に入ったはず」と指摘した。

東京国際映画祭での受賞に関して、森監督は「これまで1度も呼んでもらったことがないし、商業的な映画祭だから、ドキュメンタリーなんて上映する気がないと思っていた」。それでも、「プログラムディレクター(矢田部吉彦氏)が絶対にやりますと言ってくれて、びっくりしました。要は忖度しなければ、問題はない。委縮し自主規制してしまうからこそ、問題になる」と力説した。また、望月氏は「満場一致(での受賞)だと聞いて、勇気をいただいた」と喜びを語っていた。

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