夢か現実か…二人の同名の男を描くチベットのペマツェテン監督新作

2018年11月21日 12:00


新作を語ったペマツェテン監督(左)
新作を語ったペマツェテン監督(左)

[映画.com ニュース] 第19回東京フィルメックスコンペティション部門出品作「轢き殺された羊」が11月20日に上映され、チベットのペマツェテン監督がティーチンを行った。

チベットの広大な大地を走るトラック運転手ジンパが、羊をひき殺し、その後同じ名を持つ男と出会う。二人の男の現実と幻想を入り交えながら描いた物語。ウォン・カーウァイがプロデュースを担当。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門脚本賞受賞作。

ペマツェテン監督にとって3年ぶりの新作で、チベットの作家の「人殺し」という短編小説とペマツェテン監督の短編小説を合体させて新たな物語を作り出した。「数年前に『人殺し』を読み、とてもひきつけられました。父の敵討ちをする主人公物語です。映画化したかったのですが、5~6000字と短い物語だったので、私の小説と合わせたのです。私の作品はひき殺した羊の魂を救い、来世に送る物語。映画ではその二つの軸を描きました」とテーマを解説する。

さらに、「二人の関係は表裏一体で、二人とも自責の念にとらわれているのです。ですからジンパという、チベットの言葉で他者に施しをするという意味の名前をつけました。登場人物二人が同じ名前であるということで、荒唐無稽な雰囲気を出したかったのです。二人が出会うシーンでは、鏡のような一人の人間の両面を表現しています」と登場人物の設定を詳しく語った。

プロデューサーとしてウォン・カーウァイが名を連ねていることについては「ウォン・カーウァイの製作会社がチベットを題材にした映画を作りたかったのです。4年前に脚本が出来上がっていた作品がありましたが、その作品は成立しなかったので、今回申請が通ったこの作品でプロデューサーとして参加してもらいました」と説明した。

第19回東京フィルメックスは、11月25日まで東京・有楽町朝日ホールほかで開催。

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