劇場公開日 2021年8月6日

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映画 太陽の子のレビュー・感想・評価

全110件中、1~20件目を表示

3.5日本の原爆開発計画と戦火の翻弄される3人の若者の悲劇を追いかける作...

2021年8月31日
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鑑賞方法:映画館

日本の原爆開発計画と戦火の翻弄される3人の若者の悲劇を追いかける作品を8Kで撮影している。8Kと時代ものの相性はどう考えたらいいだろう。はっきり映りすぎていて、時代を感じないというか。「スパイの妻」の黒沢清監督も苦労されたようだが、あまりにはっきり映りすぎるのも考えものだなと思ってしまう。8Kは超クリアに映ってしまうので、セットも衣装もごまかしはきかない。日本ではNHKくらいの予算がないと手を出せないんじゃないかなあと思った。
映画そのものは、良い作品だ。原爆被害国の日本でも実は原爆の開発を進めていたという実態と科学者たちの葛藤と業の深さを浮き彫りにしていた。三浦春馬の役どころが、現実とダブって切なくなる。最も未来を見据えているのが、女性の有村架純というのは現代を意識した部分か。原爆の恐ろしさを知りつつ物理学者として魅了されてもいる主人公を演じる柳楽優弥が的確に演じていた。目が純粋すぎて怖いのだ。

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杉本穂高

4.0あまり知られていない戦時中の日本の現実と、「これから」を考える上で示唆に富んだバランスの良い映画。

2021年8月6日
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まず正直に言うと、三浦春馬さんの遺作でなければ見なかった気がします。ただ、結果的に「見て良かった」と思いました。
舞台は、第二次世界大戦の末期を迎えた日本。あまり知られていない「日本で作ろうとしていた原子爆弾の実話」をベースに、フィクションも交え当時を描き出しています。
当時、劣勢に立っていた日本では形勢逆転を狙い、海軍からの依頼で京都帝国大学(現・京都大学)の物理学研究室で「核分裂のエネルギー」を利用した「原子爆弾」の開発が行なわれていたのです。
理系だけでなく文系でも理解できるように、ウランから核分裂反応をするウラン235の取り出し方、濃縮ウランの作り方などがCGを使って分かりやすくなっています。

様々な葛藤を抱えながらの現場で、教授が諭す以下の言葉はかなり示唆に富む本質的な論だと思います。
「この戦争は何で始まったんやろ? エネルギーや。土地も鉱物も人間はエネルギー資源を求めて戦争をする。先の戦争もそうやった。
我々が核分裂をコントロールして、そのエネルギーを自由に使うことができるようになったら、人間のエネルギー問題は永久に解決するはずや。そしたら、戦争は無くなる。
戦争をやっているのは事実だ。それなら世界を変えたい。世界を変えるために科学をする、原子物理学をやる」

ただ、この論に欠点があるとしたら、バランス論の面でしょうか。
ウラン235の取り出し、ウランの濃縮度を100%近くすると「原子爆弾」となり、広島や長崎のような惨劇が生まれてしまいます。
一方で、ウランの濃縮度を3~5%にするだけで「原子力発電」ができ、エネルギー問題は理論上は永久に解決します。
とは言え、濃縮ウランのパワーは、僅か濃縮度3~5%でさえ強烈で、3.11のような惨劇を生み出したりもするわけです。

三浦春馬さんが演じる戦地から一時帰宅している裕之が「いっぱい未来の話をしよう」と前向きに話しますが、それは必ずしも戦時中の話ではなく、現在にもつながる重要なシーンでしょう。
気丈にふるまっていた裕之が不意にみせた涙なども今となってはリアリティーを、より感じます。

主人公の柳楽優弥が演じる科学を学ぶ修の言動から、改めて「戦争」の多面的な面を感じられます。多面性を見事に演じ切ったのは流石の演技力でした。
有村架純の演じる世津からは、「戦争なんて早う終わればいい。勝っても負けても変わらん!」「いま日本は物もお金も使い果たしている。そん時に大事なんは人や、教育や」といった極めて真っ当なセリフなど、有村架純の演技だからこそ沁みる言葉が多くあります。
このように、様々な面で示唆に富む名作だと思います。

ちなみに、NHKで2020年8月15日に「太陽の子」が放送されたのは「80分のダイジェスト版」で、ようやく本作で1時間53分という全編が見られ、「かなり印象の違う作品」に仕上がっています。

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細野真宏

4.5夏に観る映画としてオススメ

2023年12月8日
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鑑賞方法:VOD

後半ちょっと失速して内容としてはそんなに面白いものではなかったけれど、いい作品だったし、すごく「映画」してると感じた。
核分裂を模した光の粒のシーンや、花火の美しさの話が後半どう活きてくるのかと期待したけれど、ほとんど関係なくなってしまったのは残念。
てっきり兄弟二人と世津の三角関係が核反応のように展開するのだと思ったんだけど。

全体的に長めのカットが多く、重厚な雰囲気があるのはいい。
特にラスト近くの、柳楽優弥演じる修がにぎり飯を食べるシーンはかなり良かった。多分泣くんだろうなと身構えていて、やはり泣いたわけだが、普通にもらい泣きしてしまうほどだった。長回しとまではいかないが、このシーンが結構長くて、その長さ故に泣けてしまった気がするんだ。

そんなわけで、メチャクチャ面白いということはないけれど、なかなか良い作品で夏に観る戦争映画の一本としては見やすくてオススメな気がする。

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つとみ

5.0命懸けで戦った人たちが夢見た「平和」とは

2023年10月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

知的

兄のヒロユキは雲の上で戦っている時、なんで自分は戦っているのかという気持ちを押し殺しながら、一機でも多く撃ち落としてやると全てを捧げていただろう。 家に一時的に戻った時でも、今も仲間が日本のために戦っていて、死んでいる事実はあって、アメリカのグラマンやシコルスキーが出ていることもあり、もうそろそろ戦争が終わりそうなことは知っていたからこそ、自分だけ生き残りたくないとまで思ってしまったのかもしれない。国のために命を捧げなければならない意味を探して、もがき苦しんで、死ななければならない理由を自分で結論づけていた。温かいお母さんのそばにずっといたかっただろう。大好きなセツの元にいたかっただろうな。
 修は、今まで、コマのまわり方に疑問を持ったりと、ただただ自分の知らない化学の世界をもっともっと知りたいという気持ちだけで化学をやっていた。日本中が戦争モードになっていて、気づいたら、戦争のために化学をしていた。戦争に兄の自分が行かず、弟に行かせるという大きな決断をするほどに、化学がしたっかった。自分が大好きな科学で戦争がなくなる世界を目指して研究をしていると自分を納得させ、大好きな科学を続けた。
でも、広島へ原爆が落ちた。自分の大好きな、ゆういつ自身の持てる科学で負けた。絶対に負けてはならないと思い込んでいた科学で負けた。天皇陛下が神であるとどこかで本気で信じていたのだ。だからこそ、まだ終わってないと、まだ間に合うと、比叡山に登った。現実を受け入れられなかった。もしかしたら京都に原爆が落とされるかもしれないと、延暦寺へ登った。お母さんの作ったおにぎりを食べながら、いろんなことを考えただろう、たいせつな家族に会いたいと思っただろう。
でもセツの声が聞こえてきた。やっぱり自分の一番守りたいものの声が聞こえた瞬間に、彼は化学を手放して、愛を抱きしめた。
何もかも手放して、愛する人の元へ向かえることほど幸せなことはないのかもしれない。
 この人たちが夢見た未来の日本の中に私たちは生きているんだと実感した。彼らが望んでいた日本の未来は「平和」だったということ、私は、太陽の子を観て、今の日本の姿を命懸けで戦った人たちに見せることができるのかと考えさせられた。自分と違う考え方の人を受け入れず、誹謗中傷して人が死ぬ時代だ。戦争と同じだ。そんな世の中のために彼らは戦ったのか。絶対に違う筈だ。私たちは戦争があったことを知り、悲しいねだけで終わらせることはあってはならない。太陽の子は、私たちの未来のために、自分がどう生きていくべきか考えるための映画だ。

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こんにゃく巾着

3.0邦画特有のグダグダエンディング

2023年4月30日
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それまでの秀作感が台無し…
役者さん達は素晴らしかった

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マルボロマン

3.0戦争と科学者の苦悩

2023年4月16日
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戦争をなくするために、近視眼的には目先の困難を打開して戦局を有利に転換するために、戦争の道具である原子爆弾を開発するというのは、それ自体、にわかにはおかしな考え方とは断言できませんが…(「パワーバランス(力の均衡がもたらす平和)」という考え方には、是非の両論がある。)。
科学者の荒勝教授(國村隼)としては、純粋に、またもっと根本的に、科学の進展によって争いのない世の中を希求していたのかも知れません。
あるいは、目先の軍事研究を軍部から受託することで、日本の将来を担う白眉の若者を一人でも二人でも、戦地に送らずに済ませたかったのかも知れません。
いずにしても、「戦争と科学との関係」「戦争と科学者としては関わり」ということの考察については、面白い一本だったと思います。評論子は。

〈映画のことば〉
なぁ、この戦争はなんで始まったんやろ。
エネルギーや。土地も、鉱物も、人間はエネルギー資源を求めて戦争をする。先の戦争も、そうやった。
我々が核分裂をコントロールして、そのエネルギーを自由に使えるようになったら、人間のエネルギー問題は、永久に解決するはずや。そしたら、戦争はなくなる。
わしも、この戦争に大義があるとは、とても思えん。けど、いま日本は戦争をやっとる。それは、どうしようもない事実や。それなら、世界を変えたい。世界を変えるために、科学をする。原子物理学をやる。

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talkie

4.0三浦春馬、柳楽優弥、有村架純の三人が縁側で未来を語るシーンが泣ける。

2023年3月26日
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鑑賞方法:VOD

三浦春馬、生前最後の出演作品。

日本での原子爆弾の研究には、陸軍による二号研究、海軍によるF研究があったのですが、この作品はF研究の方を描いています。

NHKのテレビ放送の方でも見たのですが、こちらの方が時間も長く、物語の背景も描かれているので、わかりやすいです。

タイトルにも記した通り、三浦春馬、柳楽優弥、有村架純の三人が、縁側で未来を語るシーンが印象的なのですが、あのシーンで有村架純が、三浦春馬と柳楽優弥の手を握ったのは、アドリブだったと、のちに有村架純が語っていました。なんか、手を握りたくなったのだと。良いシーンです。

戦争の狂気だとか、残されたものの悲しみだとか、行くものの悲しみだとかいろんなものが描かれています。物語として、どこかで盛り上がるわけでもないのですが、全体を通してみて見て、とってもいい作品だと思います。

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勝手な評論家

3.0普通位

2023年3月10日
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鑑賞方法:VOD

普通位に面白かったです☆

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hide1095

2.5事実だから仕方がないがストーリーは弱い

2023年3月5日
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鑑賞方法:VOD

観終わった感想はレビュータイトル通りだが、戦争の裏側で科学者の葛藤があったという史実を役者がしっかり表現しているという点では他の方のレビューも見た上で、良い作品なのだろう。

演技は文句なし。

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まっしー

3.0科学者から見た戦争

2023年3月1日
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日本も原子爆弾を作っていたことが分かる。

仲間は戦場で体を張って戦っている中、原子爆弾を作るための実験に励む学生は、仲間を思いつつ、これを続けていていいのかという葛藤があるのが理解できる。

ただ、謎が多い映画に感じた。

兄弟の関係性が最後までわからなかった。

また、比叡山でおにぎりを食べるシーンが長時間流れ、そこで色々と想像を膨らませていくべきなのだが、色々と別に想像しないといけないことがあって感情移入できなかった。

最後のエンディングソングは良かった。

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hiro

3.5柳楽ユウヤの

2023年3月1日
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演技幅の広さ、すごい。「ファブル」の狂気じみた男と同一人物とは思えない…
原爆投下後の広島を、研究室のメンバーが歩くシーンが印象的。辺り一面が灰色一色。
京都からきた人間、物体だけが色を放つ…
何もかもを灰にしてしまう、「原子核爆弾」(劇中の言い方)の恐ろしさをあらためて痛感。

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トッキー

3.5科学者が夢を忘れたら終わり

2023年2月22日
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鑑賞方法:VOD

1944年日本でも新型原子核爆弾の研究をしていた。柳楽優弥扮する石村修は、赤点を取る様な若手科学者だった。

しかし火災予防のため家を取り壊されるにも関わらず、お世話になりますと言わねばならない時代だったがそれなりに原子爆弾を研究しようという意思はあったんだね。計算は出来なくても科学者が夢を忘れたら終わりだ。

胸を痛めるシーンが多かったが柳楽優弥の朴訥さ、有村架純の健気さ、田中裕子の無気味さがいいね。ところでこの映画でも三浦春馬にお目にかかった。麗しき姿に合掌。

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重

3.0若者3人の配役は光っていたが。。

2023年2月18日
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鑑賞方法:VOD

太平洋戦争末期、原子爆弾の開発に身を捧げる京都の学生たちを描く。主人公の弟は軍人になったが特攻で戦死する。家を失った幼馴染の女性と、一つ屋根の下に母親と暮らしながら、実直に研究に明け暮れる。研究に勤しむ学生は兵役を免除されている。だが、アメリカはいち早く、原子爆弾を実用化しており、広島、長崎に落とされる。さらに、次は京都なのか?そんな状況を描く。
なにしろ、テーマが重すぎて、映画にするにはかなり大変なテーマ。若者3人のそれぞれの在り様は、配役はよかった。但し、柳楽優弥と三浦春馬はタイプが違いすぎて、兄弟にはみえなかったが、そこは映画。有村架純は戦時女性の質素なみなりも朴訥とした感じが似合っていた。丸顔だからか、庶民の感じに溶け込むし、健気な感じもよく出ていた。
映画全体はテーマに追いつけない印象を受けたが、キャスト若者3人の存在感は光っていた。特に柳楽優弥は抑えた感じの演技がよかった。

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菜野 灯

2.5戦時中に日本も原子力爆弾の開発をしていた。

2023年2月12日
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怖い

大東亜戦争(第二次世界大戦)時に日本も原子力爆弾の開発に成功していた事は知っている人は知っている話だとは思います。
しかしまだまだその事を知らない人は多く居ると思うので日本でも原子力爆弾の開発をしていた事を伝える映画としては良いのかもしれません。
しかしこの映画を見ていると日本が何のために戦争を始め、戦争をしないとけなかったのかなど詳しい所は描かれておらず。
言い回しなどを聞いていると大東亜戦争は無意味な戦争だったかの様な印象を与える作品に感じました。もっと日本人が日本人として生まれて来た事を誇りに思える、大東亜戦争の作品を作って欲しいと改めて感じました。

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HY

4.0陰のテーマと陽の関西弁のマリアージュ

2022年10月3日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

日本の原爆開発といえば理研の仁科博士だと思っていたが、京大でも研究していたとは初めて知った。理研じゃなく京大が舞台、やり取りが関西弁というのがこの作品の質を爆上げしていると思う。大量破壊兵器開発の是非という暗く重いテーマを、明るく直接的な関西弁でズバズバやりとりすることで、とても分かりやすく心に刺さる議論になっている。関西弁ってすごいなぁ。(いや京大がすごいのか)
そしてことさらに原爆の悲惨さを煽るのではなく、ウランを分けてもらう陶器屋の娘がある日唐突に小さな仏壇になっている。これが日常になっしまうことが戦争の本当の怖さだと感じた。

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あっきー

5.0戦争は、破壊しかない、思い出も、夢も希望も、恋人も全て奪っていく、...

2022年8月30日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

戦争は、破壊しかない、思い出も、夢も希望も、恋人も全て奪っていく、大事な子供までも、奪っていく、悲惨のたまもだ!日本も、アメリカより先に開発していればと、恐ろしい人の命、を、実験に使うのか!考えさせられた!
3人の演技が、秀逸だった!

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fukusann

3.5アメリカだけでなく、日本も原爆の開発を行っていた。 もし日本が先に...

2022年7月29日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

アメリカだけでなく、日本も原爆の開発を行っていた。
もし日本が先に完成させていたら、戦争で使用していたのだろうか。
何ともやり切れない思いが募った。
あと、戦争中に一般家庭であれだけのコメが手に入ったとは思えないし、酒を酌み交わす余裕などなかっただろう。
ただ、戦争の悲惨さは伝わってきたので一定の評価はする。

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省二

3.0太平洋戦争中、実際に実在した日本による原爆研究。 若者、化学者たち...

2022年6月24日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

太平洋戦争中、実際に実在した日本による原爆研究。
若者、化学者たちの苦悩と葛藤。
よく描かれていたと思う。
リアル感じがある映像が良かったし、柳楽優弥、三浦春馬の演技が良かった。

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よっしー

4.0敗戦直前の日本・・・戦争秘話

2022年6月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

2021年(日本・アメリカ合作)監督:脚本:黒崎博(大河:晴天を衝く、他)

プロデューサー:コウ・モリ。音楽:ニコ・マーリー(愛を読む人、などの)

太平洋戦争末期の日本(1944年から1945年)
原爆開発を背景に、時代に翻弄された若者たちの生き様を描いた映画です。
海軍からの依頼で京都帝国大学(現在の京都大学)で「原子核爆弾」の研究開発が行われていたのは史実に基づく事実です。
荒勝教授(國村隼)の指揮下、研究者の石村修(柳楽優弥)等は、
日本が起死回生の勝利を収めるための秘策はこれしかない・・・と、思い詰めていく。

荒勝文策は実在の高名な物理学者でイギリス留学時代には、アインシュタインの
薫陶を受けたそうだ。
映画で、アインシュタイン(声=ピーター・ストーメア)と対話するのは、若き日の
荒勝か他の物理学者だったのかもしれない。
アインシュタインの相対性理論が、原子爆弾に直接利用された訳ではないが、
結果として原子核分裂が核爆弾開発に応用されて、原子爆弾となりアメリカが実際に使用したことを彼は深く悔いて、日本人物理学者に直接そのことを手紙で伝えているとの事だ。

ラストでは当時の京都帝国大学の荒勝文索の写真。
遠心分離機や加速器など大掛かりな機器。
その上に登っている研究員の写真もあります。
そして20名ほどの研究員たちの記念撮影の写真。
明るく楽しげに見える研究員たち・・暗さは見られない。
(彼ら、特に学生は、この時、本当に原子爆弾の殺傷力を知っていたのだろうか?)

実際に、石村修たちが原子爆弾の威力を知ったのは
広島に原爆が投下された8日6日以降で、
8月10日に現地入りした荒勝たち事故調査員が、
「これは原子爆弾である」と結論づけ、はじめて「原子爆弾」と命名された。
その直後、修が「次の投下は京都」と世津(有村架純)と母・フミ(田中裕子)に
避難を勧めて、自分は比叡山で爆発の瞬間を観察する・・・と告げる。
フミは「なんと恐ろしいことを!・・・科学者は!」と、絶句し、
世津は、「ご近所の人はどうするの?」と困惑する。
実際に荒勝文策は「これは千載一遇のチャンス」と公言し、
比叡山に登って京都に投下される爆弾の、
原爆投下から爆発の瞬間の状況を徹底的に観測してやろうと述べたと言う。

この映画は日本で行われていた「原子核爆弾の研究開発」という、
ショックキングでセンシティブなテーマに果敢に挑戦した映画です。
(万一、世界に先駆けて日本で完成を遂げていたら?)
そう思うと空恐ろしくなりました。
しかし映画は青春群像劇の初々しい側面も多く見られ、
石村修(柳楽優弥)
弟の裕之(三浦春馬)
幼なじみの朝倉世津(有村架純)
3人の男女を超えた清々しい友情に溢れ、思わず戦時下の圧力を忘れるひと時でもあります。
柳楽、三浦、有村の好演。
美しすぎる海と空。
格調高く内省的にして場面にマッチングしたニコ・マーリーの音楽。
重く苦しいというより、未来への伝言を感じます。

日米合作のための利点も縛りもあったでしょう。

狂気に落ちる修を演じる柳楽優弥の確かな演技力。
戦争後に思いを馳せる強さを、美しく演じた有村架純。
石村兄弟の母親役の田中裕子という人間の底力。
そして何より、軍人として国の為に死んでゆく自分の遺書の中で、
「母上とお兄様のご多幸をお祈りします。さようなら」
まるで、私たちへの別れの挨拶のようです。
これが最後の出演作の上映となったこと。
三浦春馬さん、あなたがこの世からいなくなったこと、とても悲しいです。

過去鑑賞

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琥珀糖

5.0戦争は本当にダメ

2022年6月20日
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誰も幸せにならない。化学実験も零戦作ったのもどれだけの犠牲があったのか、今ロシアとウクライナは戦争をしてるけど早く終わって欲しい。切に願います。あと三浦春馬くん見ると何もなくても泣いてしまう。以上!

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しをん