少女は悪魔を待ちわびてのレビュー・感想・評価

　7人殺したはずなのに裁判では1人を殺した罪として15年という刑期だった。ギボム（ソンオ）が出所した直後に売春婦と連れの男が殺されるが、やはりギボムが疑われる。一方のヒジュは実母をDVで痛めてつけたロクデナシの夫を殺した・・・

　ギボムをマークしているはずなのに、またもや連続殺人。そこで次に狙われるのは誰だ？と考えた捜査陣は15年前の密告者であるチョン・ミンスという男にぶち当たる。しかもギボムとは同級生・・・ギボムはミンスに会いに行ったが、そこでは警告だけだった・・・恋人ユンジョンを寝取った相手として。しかし、その晩、ヒジュはミンスを惨殺。床一面に敷いたガラス瓶の破片によって。さらにヒジュはミンスの死体をギボム宅へと運び・・・もうわけのわからない展開(笑)

　邦題も勘違いさせる原因なのか、結局は父親を殺された段階で少女ヒジュは悪魔に変わり果ていた気がする。実母の夫を殺したのは善良な市民による正義の鉄拳なのか、ギボムを追い詰めるための準備段階だったのかも不明だし、ミンスを簡単に殺したこともギボムに殺人罪を着せるためなのかも不明。

　とにかく、殉職した父のおかげで警察内の雑用係的なことをやってはいるが、ミンスがどこまで15年前の連続殺人に関わっていたかもわからないはずだし、ギボム一本に絞ってくれれば感情移入できる作品になっていたはず。最初から観客には真実が見えているところで、すでにストーリーは破たんしていたのかも・・・ただ、大人しいヒジュが殺人を起こすという猟奇的な部分はなかなかよい。

いくら韓国でもここまで警察を無能に描いては不自然がすぎるのではないだろうか。警察が監視してる二人の片方をその自宅で殺し、その死体をもう一人が宿泊してるモーテルに運び込むって、警察全員スマホゲーでもしてた？
最初の7人の殺人では1人の殺人しか認められなかったのは証拠がないからのはずなのに、最後は6人の殺人と1人の殺人未遂（最初の7人とは別件）が認められ死刑って、うち3人は証拠出てくるはずがないんだけど。まさか証拠捏造した？　なんだろう作者さん韓国警察に恨みでもあるのかな。

最愛の父を殺された少女が、出所してきた犯人に15年越しの復讐を誓う。
痛々しいバイオレンス、一筋縄ではいかないドラマ、やるせないラスト…。
ド直球の韓国サスペンス！

復讐を誓う少女ヒジュを演じたシム・ウンギョン。
詳しくは知らないが、本家｢怪しい彼女｣や韓国版｢のだめカンタービレ｣に出演しているとか。
パッと見愛くるしいので、それらの作品でのキュートな笑顔を容易く想像出来るが、本作では笑顔を封印したダークな熱演を披露。
その高い演技力が見事。

復讐の相手、殺人犯キボムを演じたキム・ソンオ。
こちらも詳しく知らないが、人を刺し殺す事が快感、挑発してるようなふてぶてしさ、目付きが心底ムカツク！
肉体改造も行ったらしく、その怪演は必見！

復讐ストーリー一本かと思いきや、それぞれの思惑や新たな事件が交錯する。
刑事だったヒジュの父親の元部下だったデヨン班長。先輩を殺したキボムへの憎しみはヒジュに劣らぬもので、キボムが出所してきてからも徹底的にマーク。またぶちこんでやろうと職権乱用して威圧しまくる。
キボムが出所してすぐ、手口を模倣した事件が発生。キボムが再び犯行を…？ が、確たる証拠は無く、アリバイも。
キボムの逮捕の決め手となったのは、密告者。その人物とは一体…？ 意外な繋がりが…。
ヒジュの復讐計画に狂いが。そのヒジュも思わぬ行動を。

思惑と真実が絡み、遂に対峙するヒジュとキボム。
ヒジュの15年越しの復讐は、意外な結末へ…。

ラストの台詞。悪が勝つ条件に対する答え。
短すぎる刑を終えて出所してきた犯人の事だけではなく、無能な警察、そして自身の赦されない復讐…。
それら全てへの痛烈な訴え。

WOWOWで先行放映、3月7日より公開。