秘密 THE TOP SECRET : インタビュー
生田斗真、大友啓史監督との念願の初タッグで作り上げた“心地よい疲れと頭の痛み”
今や日本映画界を代表する実力派として、数々の作品に出演する生田斗真が、「念願だった」と語る大友啓史監督(「るろうに剣心」シリーズ)との初タッグを果たし、人気コミックを映画化する「秘密 THE TOP SECRET」(8月6日公開)で主演を務めている。死者の脳内に残る記憶を映像化し、難事件を捜査する警視庁の特別機関「第九」の苦闘を描いたミステリー・エンターテインメント。生田はトラウマを抱える「第九」室長の薪剛を演じる。(取材・文/内田涼)
「リーダー的な立ち位置というのは、あまり演じた経験がないですし、薪は文字通り“秘密”を抱え過ぎた男で、内に秘めた怒りや悲しみ、闇といったものを表に出せずにいる。天才的なんですが、ガラス細工のように繊細で……」とキャラクターを分析する生田。「それを表に発散するのではなく、内面からにじみ出るような、そんなお芝居のアプローチが自分にとって挑戦でしたね。その分、今回はクランクインを前に『しんどい時間になりそうだな』と覚悟を決めました」。
原作の世界観を損なわない生田の薪剛像に、ファンからは「原作から抜け出したよう」と早くも評判の声があがる。「特に漫画作品の場合、作者やファンの皆さんが推すキラーカットがありますよね。役作りの際には、結構ヒントにしています。それと僕自身が、外見から役に入っていくタイプなので、目標となるビジュアルイメージは大切な要素。髪型を決め、衣装に袖を通すことで、自分を錯覚させて、役になっていく。そんな感覚ですね」と役作りのポイントを明かした。
メガホンをとる大友監督は近年、先進的なアクション描写とハリウッド顔負けの豪快なスケール感を駆使し、日本映画におけるエンターテインメントの定義を更新し続ける存在。監督作への出演を熱望する俳優も少なくない。「もちろん僕もそのひとりでした。クランクインを前に、何度も大友監督とお会いして、演技やセリフについて議論を重ねながら、『新しい生田斗真を見せてほしい』『俺を驚かせてほしい』と熱く鼓舞してくださった」。
ところが、いざ現場入りすると、「あとはお好きにどうぞ……という感じで、少し意外でしたね」と、大友監督からの具体的な指示はほとんどなかったという。「知らないうちに自転車の補助輪を外された感覚で、序盤は右往左往していました。自由になった分、プレッシャーもあるんですが、同時に喜びも感じて、気づいたら『大友監督の笑顔を見たい』と思う自分がいた。巨大で緻密なセットはまるで闘技場。思う存分暴れられる場を与えてくれた」と振り返る。
ただ“補助輪を外された”状態で、難役に苦しむ重圧もあった。「薪は感情を表に出さない男なので、『何もしない』演技が多く、自分でもなかなか良し悪しのジャッジが難しかった。撮影が進むにつれ、精神的にどんどん辛くなって、休憩時間はなるべく日光を浴びていました(笑)。体力的な消耗もあるし、僕に限らず、現場のみんながやせていった。後で聞いたら大友組はいつもそうらしく、大友式ダイエットと言われているらしいです(笑)」。
休憩時間、日光を浴びる生田に「お疲れ」と声をかけたのが、“嵐”の二宮和也。セットが組まれた東宝スタジオでは本作に加えて同時期に、二宮が主演した「母と暮せば」、「信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)」「テラフォーマーズ」の撮影が行われていた。「ぐったりした僕を尻目に、ニノ(二宮)がさっそうと帰っていくんですよ。さすが山田(洋次)組は早いなあと(笑)。とにかく、僕ら『秘密』チームの帰りが一番遅かったのを覚えています」。
SF的な要素を含み、「他人の脳をのぞき見する」という倫理的、哲学的な問いも投げかける本作。生田は「徐々に追い込まれる現場で、とにかく大変な撮影でしたが、僕らが感じた“心地よい疲れと頭の痛み”をぜひ観客の皆さんにも味わってほしい」と語る。「見終わった後は、感情の一部をがっつり持っていかれ、普段歩く街や世界の見え方が変わってしまう。問題提起をしながら、しっかりエンターテインメント作品に仕上がったと思います」と結んだ。