劇場公開日 1989年10月7日

ブラック・レインのレビュー・感想・評価

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4.0松田優作の気迫がノったアクション映画

2013年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

興奮

この映画の何がすごいのって、主演のマイケル・ダグラスがちっとも主役っぽい感じられないこと。
なんかアタマの悪そうなNY市警の刑事(マイケル・ダグラス)が、異国の地・日本でアタマの悪さそのままに暴れまくって日本の警察から総スカン。現地パートナーについた日本の刑事(高倉健)ともけんか腰。挙句、一緒にNYからやってきた相棒(アンディ・ガルシア)を失ってしまう。
なんかダサい。ダサいぞ、マイキー。

一方の松田優作は、新興ヤクザの頭を凶悪に演じてスクリーンに気迫を投影した。
『探偵物語』や『遊戯』シリーズに見られるコミカルな要素はカットし、殺気に満ちた存在感を冒頭から披露、それまでのマイキーな流れを松田優作に持っていってしまった。
眼光に宿る狂気と指先まで張り詰めた緊張感、そして嫌味ったらしい仕草。観客もマイキーや健さんと一緒に憎悪の対象とするに十分。

また序盤からレストランでの殺人があるなど全編バイオレンスなイメージもあるけれど、シーンの一つ一つを追ってみればコードに引っかかるような残酷描写は皆無だと気づく。
肉体損壊のカットも数秒でスライドするかロングショットで逃げるし、銃撃による出血も控えめ。
血なまぐさいイメージは、松田優作がスクリーンいっぱいに見せる暴力性にあるのだろう。なるほど、本作における松田優作が強い印象を残すのも無理はない。

優作ファンならずとも役者・松田優作を褒めちぎってしまう本作は、臭ってくるほどリアルな映像も魅力の一つだと思う。
雨の張り込みシーンでは汗蒸した着衣の臭いが感じられたし、ラストの農家では日に焼けて乾燥した草と暑い夏の葉のにおいがした。
ロケでは日本以外も使われたようだが、そこに込められたのはまさに日本。道路を埋め尽くすチャリ通勤以外は、日本そのもの。”らしさ”が情緒も含めて映し出されている。

そんなだから、マイケル・ダグラス演じる刑事ニックも、少しずつ日本の文化や習慣に理解を示していく様子も説得力を持つ。
英語を使いながらも日本人のメンタリティを表現した高倉健という存在もしかり。1989年公開という時代背景を考えれば、かなり日本の近づいたアメリカ映画だ。

またバイクによるチェイスも見物。
特にラストは松田優作がスタントを使わずにこなしたという。
迫力が違いますな。

ついて回る松田優作という存在感ばかりが取り上げられがちな本作、実はちゃんと映画の骨子もしっかりしているから、今でも口の端に上る作品になっているのだろう。

では評価。

キャスティング:10(松田優作と高倉健、二人の日本人俳優が日本らしさを強く出した。ヤンキーの象徴たるマイケル・ダグラスも好対照)
ストーリー:7(日本警察の許容量を考えたら、ちょっとアレレな場面も少なからず)
映像・演出:10(臭いつく風景、松田優作が映し込んだヤクザの狂気)
黒い雨:3(劇中、「黒い雨」のいわれが出てくるが、ちょっと無理のある話)
チェイス:7(泥臭くも迫力あるバイクのチェイス)

というわけで総合評価は50満点中37点。

1989年公開と古い映画。若い人は名前こそ聞くものの観たことないのでは。
狂気に満ちた松田優作のヤクザは必見。オススメです。

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永賀だいす樹

4.5松田優作が凄すぎる

2013年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、TV地上波

興奮

総合:85点
ストーリー:70
キャスト:100
演出:75
ビジュアル:75
音楽:65

 大阪の街並みの描き方は、リドリー・スコット監督の前作の「ブレード・ランナー」を思い起こさせる未来都市のスラム街のよう。ヤクザはバイクに乗って刀を振り回して暴走したりとか、犯罪者映画というよりは近未来SF映画。なんか日本を誤解しているよなと思う描写が多い。この映画を見た一部のアメリカ人の間では、大阪はすごく危険な怖い町だという印象が出来てしまったとか。大阪の本当の姿を知っている日本人からすれば、そのあたりの演出は好き嫌いが別れるかもしれない。自分は初めて見たときはいい気がしなかったが、これも危なさを表現する演出としてとらえればこれもありかなと今は思う。

 でもこの映画、とにかく役者が良い。というか松田優作が圧倒的に良い。正直それまで松田優作についてたいして知らなかったのだが、この映画を見たときにあまりの危険な存在感に圧倒された。こんな悪そうで頭がよさそうでかっこよくて手強そうな犯罪者を他に見た記憶がなかった。ただそこにいるだけで危ない匂いが漂っていて画面が引き締まった。
 私がこの映画を見たのは彼の死から何年もたってからで、それまでたいして気にもとめてなかった彼の死が急に本当に心の底から惜しまれた。そしてその後にわか松田優作ファンになった。リドリー・スコットが「ここ10年で最高の悪役」と言っただけでなく、この映画を見たショーン・コネリーとロバート・デ・ニーロが「日本にもこんな役者がいたのか」と映画出演の依頼をしたのは有名な話。ロバート・デ・ニーロを尊敬していた松田優作が死ぬ前の病床でこの話を聞けたのは、彼にとってはあの世へのいい土産話になっただろう。彼が生きていたらデ・ニーロとの競演でいったいどんな演技をしたのか、気になってしかたない。
 その他にも若山富三郎や安岡力也などが迫力のあるヤクザ役をやっていたし、アンディ・ガルシアの明るい性格も好きだった。そんな出演者たちの演技だけでも楽しめる映画である。

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Cape God