コラム:LiLiCoのHappy eiga ダイニング - 第8回

2010年9月8日更新

LiLiCoのHappy eiga ダイニング

第8回:深津絵里が最近見た映画3本は意外なセレクト
対談ゲスト:「悪人」妻夫木聡、深津絵里

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リリコ:この役からなかなか抜け切れないとは思うんですけど、どうですか? 抜けていないなと思う瞬間ってどんなときですか?

妻夫木:お互い違う作品に取りかかっていますからどういうときって言われると分からないんですが、ふとした瞬間に「あれはあれで良かったのかな」と考えちゃうし、取材を受けていると「悪人」の気分に戻っちゃうから「全然抜けてないな」と思います。公開するまでは抜けないですね、これは。人に見てもらって、どう感じたのか言葉を聞かないと安心できないのかなと思います。賛否両論あると思うんですよ、この映画って。批判もあると思うけれど、そういう声も含めてみんなの感じ方を聞かないと落ち着かないでしょうね。

リリコ:批判なんかあるかなあ。マスコミ試写ではみんな絶賛していますよ。

妻夫木:本当ですか? もともと原作のある作品ですから、原作の終わり方と違うところが何か言われるんじゃないかな。結局、何が言いたいんだ? と言う人も絶対いると思うんですよ。

リリコ:うそ~。その人が悪人だよ! そんなの、見れば伝わるじゃない。言葉には出来ないかもしれないけれどね。

妻夫木:でも、ちょっと批判があったほうが勉強になるかなとも思いますけどね。

また、原作に忠実に九州北部の福岡、佐賀、長崎をはじめ、平戸や五島列島で敢行。撮影時期の昨年11~12月は例年にない異常気象で連日、氷点下の寒さが続き、福江島の大瀬崎灯台でのロケは壮絶をきわめた。同所には灯台はあるが灯台小屋はなく、李監督たっての希望でセットを建築。キャスト、スタッフが一丸となって臨んだシーンは、感動的なクライマックスへと突き進んでいく。

リリコ:それと細かいことなんだけど、役柄も本当にリアルでしたよね。最後のシーンのあたりとかシャワーも浴びられなかっただろうし、髪がすごいことになっていたじゃないですか。私も昔、金髪にしていて、リアルドレッドじゃないですか。わざとシャワー浴びなかったりしたんですか?

妻夫木:さすがにそこまでいくと、深津さんにオイニー(匂い)の部分でちょっと……(笑)。

全員:爆笑

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妻夫木:僕はもともとクセっ毛なんですよ。最初にストレートパーマをかけておいて、徐々にクセが出てくればグチャグチャになってくるなっていう計算のうえでやっていたんですよ。あとはエクステだったんです。後半にかけて良い感じにとれてきたので、これはいいねと。

リリコ:じゃあ、ストパーかけたうえに染めたんですか?

妻夫木:はい。だから、風呂がイヤで、イヤで。「痛い、痛い、痛い!」みたいな。シャンプーが怖かったですよ。相当やばい髪質になっていたんじゃないですかね。もう大体落ち着きましたけどね。服もあのまま土木作業に入っていたので、リアルな汚れなんですよ。

リリコ:共演者の方々の話なんですが、会わない方もいらっしゃったんじゃないでしょうか。どうやって交流をはかっていたの?

妻夫木:僕は(樹木)希林さんとか、家関係の人くらいですかね。希林さんも結構タイトなスケジュールでやっていたので、それだけ李監督の熱意が伝わっていたんだろうなあ。本当にみんな寝ていなかったですからね。粘るしOKも出さないし、それでもニコニコ楽しそうに現場にいらしていたので、それほど李監督ってすごいんだなって思いましたね。

リリコ:今回は満島さんも岡田さんも良かったですよね。岡田さんなんて「何だ、こいつ!」みたいな(笑)。お父さん(柄本明)が怒ったあととかね。役に対するアプローチとか話したりしなかったんですか?

妻夫木:いや、あんまり話しませんでしたよ。僕も深津さんとすら話しませんでしたから。それぞれが李監督と向かい合ってやっていた感じです。満島ひかりちゃんが大変だったかもしれないですね。クランクイン前から「分かんない、分かんない」と言って監督に相談していましたから。でも、その分、彼女もいい芝居をしていましたよね。

リリコ:皆さんのキャリアのなかで、ずっと強く残っていくっていう感じが見ている側からはしていますよ。

妻夫木:キャストだけじゃなくて、スタッフも文句ひとつ言わず情熱をもって不眠不休で取り組んでいたので、ヒットするとかしないとかって問題ではなく、ただ「悪人」というものを感じてもらいたいんですよね。

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リリコ:そして、いつも皆さんにしている質問が3つあります。まず、誰かに言われた言葉で印象に残っているものってありますか?

妻夫木:人生の中でだったら、親に言われた「プロになれ」ですかね。中学生のころに「何でもいいからプロになれ」。ここ最近で一番うれしかったのは、李監督からの手紙で「祐一が妻夫木で良かった」って言われたことですかねえ。

深津:私は、クランクイン前に妻夫木くんに「迷惑かけるかもしれませんけれど、先に謝っておきます」って言われたことかな(笑)。まだ衣装合わせすらしていないタイミングで、「久しぶり」でもなく、いきなり言われたので「ああ、この映画はそういうことなんだな」と。それくらい妻夫木くんがこの映画に向き合おうとしている姿勢が強く感じられたので、いい現場にかかわれるんだなと思いました。

リリコ:続いて、宝物を持っていますか? いつも持ち歩いているものでも結構ですが。

妻夫木:テレビのお仕事で鶴橋康夫監督に会ったときに、「拾いもん」って言われたんですよ。「思いがけない拾いもんだった」って愛情の言葉なんですけどね。その鶴橋さんからお守り代わりにもらった5000円はいつも財布に入れて持ち歩いていますね。

深津:難しいですねえ。格好よく言ってしまうと、自分がかかわった全ての作品が宝物ですし。「悪人」はそのなかでもすごく大きな宝物になってほしいなと願いたくなるくらい素敵な作品になりました。ものというよりは、そういった出会いとかですかね。

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リリコ:なるほど。では、最後にベスト映画を教えてください!

妻夫木:「告白」ですね。あれは中島哲也監督すごいなと思いましたね。「悪人」を試写で見て、そのあと「告白」を上映するっていうからぶっ続けで見たんですよ。「悪人」のときはあんまりいい反応しなかったのに、「告白」のときにやたらといい反応をしちゃったから、プロデューサーに対してちょっと気まずいなあと思いましたね(笑)。

深津:私は、最近見たものだと「切腹」「飢餓海峡」「異母兄弟」の3本です。

全員:爆笑

妻夫木:どういう生活を送っているんですか? 何かあったんですか? 大丈夫ですか?

深津:先日まで撮影でご一緒していた西田敏行さんに、「これだけは見ておいたほうがいいというものはありますか?」ってお聞きしたら、この3本を教えていただいて。とにかく強烈で、日本映画ってすごいなと改めて思いました。こういう作品に私も出合いたいなと思いました。

筆者紹介

LiLiCoのコラム

LiLiCo(リリコ)。1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、1989年に芸能界デビュー。2001年からTBS「王様のブランチ」に映画コメンテーターとしてレギュラー出演中。映画俳優へのインタビューをはじめ、「レイトン教授と永遠の歌姫」「シャーロットのおくりもの」などでの声優業、トークイベント、ナレーション、雑誌エッセイなど幅広く活躍している。

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