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女性目線の過激な“純愛”映画「アンダー・ハー・マウス」隠し味は監督の大失恋

 
女性同士の恋愛を大胆に描いたエイプリル・マレン監督

[映画.com ニュース]女性同士の恋愛を女性の視点から官能的に描いた「アンダー・ハー・マウス」が10月7日に公開。メガホンをとったエイプリル・マレン監督が7月に来日し、映画.comのインタビューに応じた。

奔放な恋愛観をもつ大工のダラス(エリカ・リンダー)と、婚約者のいるファッションエディターのジャスミン(ナタリー・クリル)。バーの片隅で出会った2人の女性が、瞬く間に恋に落ちる。ボーイ・ミーツ・ガール改め、ガール・ミーツ・ガール。人生を変える出会いに直面し、自分に正直に生きようとする女性たちの姿を、カナダ映画では初めて女性スタッフだけで描いた。

女優としても活動するマレン監督は、「セックスや親密さについて女性の視点から描いた映画は、これまでほとんどなかったので、新鮮味を打ち出すのであれば今が好機だと思いました」と当初の意気込みを振り返る。ステファニー・ブリッツィによる脚本は、「女性の視点で描いた愛の賛歌」であり、「恋に落ちるということは、自分のアイデンティティが一瞬で覆ってしまうようなドラマティックな出来事。愛はあらゆる障害を越え、純粋に愛のためにあるということを書いています」と解説する。

映画に特別な色彩と説得力をもたらしているのが、中性的な美ぼうでユニセックスなトップモデルとして活躍するエリカ・リンダーだ。ダラス役の適材がなかなか見つからずにいたある日、マレン監督がグーグル検索でリンダーの動画を発見。「顔立ちも身のこのなしもまさにダラスだと直感したので、プロデューサーに『ダラスを見つけたわ! (スウェーデン出身の)彼女が英語を話せるのか調べてちょうだい!』とメールしたんです」。こうして“発掘”されたリンダーは、映画初出演にして主演を飾った。

「歩き方や視線の投げ方、腕の動かし方など、とにかく魅力的なんです。プロの俳優だと、そういったものをそぎ落として、まっさらな状態で役に入り込むのですが、エリカの場合は個性がそのまま反映されています。それこそが彼女の魅力だったので、直感に従って動いてもらうことで、真実味のある芝居が引き出せたと思います」

(C)2016, Serendipity Point Films Inc.

ダラスとジャスミンの赤裸々に求め合う姿も、本作が他の恋愛映画と一線を画す要素だ。「女性の視点からのリアルな恋愛を描くというのが、この映画の醍醐味ですが、彼女たちの体が自然に2人の愛を語っていくんですよね」とマレン監督は語る。セックスシーンは劇中の時系列どおりに本番1~2テイクのみ。「2人の間に走る電気のようなものや、その瞬間の生々しさをとらえたかったので、技術的な面で多少荒削りになってしまっても2人の真実をとらえることを優先しました」とリアルにこだわった。

「ダラスとジャスミンのファーストキスは、エリカとナタリーにとっても初めてのキス。リハーサルをしなかったので、実際にお互いの体に初めて触れるという瞬間の連続なんです。ジャスミンがクライマックスに達したあとに笑い出したのも、ダラスが『もう息ができない』と言ったのも、2人の自然の反応でした」

マレン監督のフィルモグラフィーを振り返ると、コメディ映画や3Dアクション映画などエンタメ色の強い作品が多く、過激な純愛映画は異色の存在。「実は、脚本を読む直前、大恋愛の末に大失恋をしたんです。だから、脚本にものすごく共感できて」と、パーソナルな経験が隠し味となった模様。「この作品をつくれていなかったらすごく悔いが残っただろうし、いまだにいい恋愛映画の企画がないかなと考えていたかもしれません」と、完成したいまも思い入れの強さは変わらない。締めくくりには、「チケットがよく売れるエンタメ作品もいいけど、この作品のように見た人の人生を変えられるような映画をつくれて本当によかったと思います」と優しく微笑んだ。

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