第87回アカデミー賞（2015年）トトカルチョ・展開予想コメント

LiLiCo氏

「6才のボクが、大人になるまで。」が"映画"の枠をはみ出し、当然いろんな映画賞を受賞するでしょう。これから同じ様に時間を掛けて撮影するのがなかなか難しい。

でもなんとなく、アカデミー賞のカラーではない気がします。それよりきっと、クリント・イーストウッドにと考える優しいアカデミー賞会員のような気がします。

助演女優は、残念ながらちょっと弱い気がします。監督賞に「セッション」のデイミアン・チャゼルがノミネートされていないのが不思議でしょうがない。主演男優で一番驚いたのがスティーブ・カレル。いまだに別の方ではないかと疑っています。

でもなんてったって、今年は助演男優賞が一番面白い！　誰に◎をつけても胸が痛くなります。だって、みんな素晴らしかった。マーク・ラファロの体づくりがすご過ぎます！

ハリウッドの役者は、やはり"役"のためにその人を生きるのでプロ根性が違います。

イーサン・ホークだって12年間……大人になったら何があっても不思議ではないのでよく維持出来ました。J・K・シモンズなんて、もう天才。この先生の教え子になりたい。世の中から消えかかっているハングリー精神や生きる厳しさを、見事に嫌味ったらしく演じてくれました。一瞬心が折れそうになる瞬間の演技も、強弱も完璧！　でもロバート・デュバルの老いていく姿を見て心が痛くなるほどでした。

助演男優のみなさんを見て、やはり映画の面白さを改めて実感します。興奮しました！

若林ゆり氏

今年も面白いデッドヒートが繰り広げられているオスカー・レース。作品賞・監督賞は「バードマン あるいは（無知がもたらす予期せぬ奇跡）」と「6才のボクが、大人になるまで。」の一騎打ちと言っていいでしょう。ものすごくオリジナルで驚きに満ちたこの2作なら、どちらが勝っても大拍手。個人的にはアメージングでカッコよく、離れワザ度がハンパなかった「バードマン」を推したい。これはイニャリトゥにしか撮れない！　というところで監督賞に輝き、作品賞は「6才のボク」に譲るかも……とも思うが、「バードマン」はショウビズ業界をネタにした"コメディ"というハンディがあるにもかかわらず、前哨戦最重要といわれる全米製作者組合賞（PGA）で勝っているので負ける気がしない。

俳優賞ですごい混戦を見せているのは、主演男優賞部門。ここはぜひ、久しぶりに真価を発揮した「バードマン」ことマイケル・キートンに輝いてほしい。ホーキング博士を熱演したエディは全米俳優組合賞（SAG）をとって勢いはあるが、まだ若くて後がある。ハンディキャップを抱えた実在の人物を演じればオスカーがもらえるというジンクスはもうやめにしましょうよ。ベネさまも舌を巻くほどうまいけれど、この先チャンスはいくらでもあるし。予期せぬ奇跡は、この部門には起こらないでいいです。キートンが翔ぶのを見たい！

オスカーノユクエ

毎年、混戦だ混戦だと言いながらも大抵は受賞作の目処がついていたりするものだが、今年は本当に大混戦でオスカーの行方を占うのが難しい。例年なら前哨戦の結果も踏まえて最終的には二択くらいまで絞れるところ、今年は四択までしか絞れない。どの作品にも受賞のチャンスがある。

下馬評では前哨戦の受賞数でリードした「6才のボクが、大人になるまで。」が優位とみられているが、ノミネート数6というのは少し物足りず、盤石の強さは感じない。逆に最多9部門でノミネートされた「バードマン あるいは（無知がもたらす予期せぬ奇跡）」は最重要視される前哨戦、アメリカ製作者組合賞を制して一気に劣勢を跳ね返した。同じく9部門ノミネートの「グランド・ブダペスト・ホテル」も美術や衣装などアート部門を中心に多くの票を集めることが予想され、作品賞含む最多受賞の可能性を捨てきれない。その一方で、ボックスオフィスでは「アメリカン・スナイパー」が社会現象とも呼べる大ヒットを記録しており、その猛烈な熱気がアカデミー会員を飲み込む勢いだ。

4作品がそれぞれに強みと弱みを持ち、それぞれに最後の一押しとなる決定打を持たない。ゆえにいずれの作品が受賞しても驚かないが、個人的には、かつてない製作過程で映画の新たな可能性を提示した「6才のボク～」が2014年を代表する映画としてふさわしいという観点から本命に推す。

映画情報 オスカーノユクエ @oscarnoyukue アカデミー賞、全米興行収入の話題を主にレポートするサイト「オスカーノユクエ」管理人のTwitter。週刊朝日で連載中。