黒沢清監督、限定販売の新作「Chime」は「映画の3大怖いもの」すべてを入れた恐怖作と明かす 世界初の動画流通の枠組みで展開

2024年4月9日 15:30


黒沢清監督
黒沢清監督

動画流通配信プラットフォームRoadsteadのオリジナル作品第1弾、黒沢清監督作「Chime」の独占発売に先駆け、4月9日、墨田区の映画館ストレンジャーで、日本初上映と記者発表が行われた。

第74回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門に出品された「Chime」は、黒沢監督が、プロデューサー陣から「自由に作品を制作してほしい」というオーダーから作られた、ホラーでもサスペンスでもない、どのジャンルにも属さないながらも極めて純度の高い、オリジナル脚本、45分の恐怖の物語だ。

株式会社ねこじゃらしが提供する、動画プラットフォームRoadsteadは、世界初の動画流通の枠組みDVT(DigitalVideoTrading /デジタル・ビデオ・トレーディング)で、映像作品を「消費する一過性のコンテンツ」ではなく、「コレクションする価値ある資産」として扱う。オンライン上に存在する映像作品をDVDやBlu-rayなどと同じように一意で固有のものとして扱い、作品を購入したユーザーは、視聴して楽しむだけでなく、第三者とトレード(有償でのレンタル、リセール)したり、プレゼントとして贈ったりすることもできる。購入者が仲間内などで鑑賞する、非営利上映も可能だ。

ブロックチェーンとDRM(デジタルライツマネージメンツ)を合わせた技術で、出品される映像は全てにシリアルナンバーが付与されており、購入者だけが観られるセキュリティが施された上でトレードすることが可能で、ユーザー同士のトレードの売上からも出品者に権利料が還元される仕組みだ。これにより、ユーザーは単なる消費者ではなく、出品者の活動を経済面で直接的に支援するサポーターになることができる、というWeb3的な概念で発案された。

ねこじゃらしの川村岬代表、黒沢清監督、岡本英之プロデューサー
ねこじゃらしの川村岬代表、黒沢清監督、岡本英之プロデューサー

この日の会見で、ねこじゃらしの川村岬代表は、このDVTの枠組みを広めていくことで、クリエーターに正当な対価と持続的な創作活動の場を提供するという狙いを述べた。また、映画館との両立も可能なサービスだとし、DTV発売後に期間限定で、作品を映画館で上映していくという。

記念すべき第1弾作品を手掛けた黒沢監督は、「45分という短くもなく長くもない、通常やっている映画とはと違う長さの作品です。こういう長さではやったことがなかったので、自分が何ができるか試してみたい、そういうシンプルな欲望で作りました。そして、新しい形態で届けられる。そういった新しいことに参加できるのも光栄だと思いました」と参加の経緯を明かす。

吉岡睦雄主演の「Chime」は、料理教室の講師が主人公。風変わりな生徒による不審な発言から、主人公の精神、そして家庭にも、チャイムのように不吉な恐怖が響き渡っていく。

「Chime」の一場面
「Chime」の一場面

ねこじゃらしは、黒沢監督作「スパイの妻 劇場版」や濱口竜介監督作「ドライブ・マイ・カー」など映画製作に携わっており、黒沢監督は「『スパイの妻』で気持ちの良い仕事ができたという経験があったので、また声をかけてもらってうれしいなというのが率直な気持ち。内容については『本当に僕でいいんですか? 濱口でなくていいんですか?(笑)』と聞いたら、それでいいと。ですので、通常の映画とは違う形式で、なんなんだこれは……という怖いものを作りたいと考えました。映画の中の3大怖いもの、それはまず幽霊。次に、自分が人を殺してしまうのでは、法律を犯すのでは、犯人になってしまうのでは……という恐怖、そして、警察に逮捕されること、秩序の側が迫ってくること。その3つ全部をやってみよう。それがこの物語の発想でした」と、作品のテーマについて語る。

Roadsteadについて、魅力に感じることを問われると、「(作り手にとって)長さが自由であることは魅力。めちゃくちゃ短くても、長くてもいいということ。また、そういった作品を作品として世の中に出してくれること。それはある意味プレッシャーでもありますが、たった45分であっても世の中に提供していただけるのが最大の魅力でした」と述べ、「僕は基本的には映画の信奉者、古い人間なので基本的には映画が第一と考えていますが、こういった新しい映画とは違う作り方、見せ方は、まわりまわって映画にプラスになると思う。こういう試みを取り込んで映画を豊かにできるチャンスがあるなら大いにやりたいと思いました」と同社の展開にも期待を込めた。

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黒沢監督の言葉を受けた川村代表は、「我々も作品作りを通しながら、Roadsteadの方向性を固めていった。映画文化をテクノロジーで破壊するのではなく、映画文化を支えたミニシアターと共存して、新しい仕組み、挑戦ができる。黒沢監督には見事にそれを形にしていただいた」と振り返った。

Chime」DVT販売は、4月12日、19時からスタート。5月11日23時59分まで。販売価格は99ドル(1万4850円)。全世界販売総数が999本に達した時点で販売終了。購入特典として、メイキングドキュメンタリー、デジタルポスターが無償配布される。本編、特典ともに5月13日より、二次利用(リセール、レンタル、スタニング)可能。詳細はRoadstead「Chime」公式サイト(https://roadstead.io/chime)で告知している。

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