妖怪の孫

劇場公開日:

解説

「新聞記者」などを手がけた映画製作会社スターサンズと「パンケーキを毒見する」の内山雄人監督がタッグを組み、“日本の真の影”に切り込んだ政治ドキュメンタリー。

連続在任日数2822日を誇り歴代最長在任総理大臣となった故・安倍晋三。タカ派的な外交政策と「アベノミクス」に代表される経済政策で支持を集めた反面、物議を醸す言動やスキャンダルでも世間から注目された。そんな安倍元総理の母方の祖父である政治家・岸信介は、社会の表と裏を渡り歩いて政財界を操る実力者としての姿から「昭和の妖怪」と呼ばれた。

「祖父の教え」として幼心に刷り込まれた野望を実現しようと極端に「前のめり」な政治姿勢となった背景にある血縁と生い立ちの秘密に迫り、安倍元総理とは何者だったのか、そして彼がこの国に遺したものは何だったのかを、ブラックユーモアや風刺絵本を交えながらひも解いていく。

2023年製作/115分/G/日本
配給:スターサンズ
劇場公開日:2023年3月17日

スタッフ・キャスト

監督
企画
河村光庸
企画プロデューサー
古賀茂明
アニメーション
べんぴねこ
音楽
岩代太郎
ナレーター
古舘寛治
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(C)2023「妖怪の孫」製作委員会

映画レビュー

4.0立場に関わらず、日本を憂うすべての政治家、公務員、有権者に観てほしい

2023年3月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

故・安倍晋三元総理とその政治姿勢の影に迫るドキュメンタリー映画と聞けば、自民党政治批判、体制批判と予断して、「観なくていいや」と敬遠する人が多いかもしれない。でも、ちょっと待って。政治家が自分の言動に責任を取らず、不都合なこと、不適切なことの後処理は秘書や官僚に押しつけ、場合によっては文書の内容や統計の数字をも変えさせ、批判的なマスコミの人事にまで干渉する、今の日本のままで本当にいいのだろうか?

内山雄人監督の「パンケーキを毒見する」のレビューで、「菅総理が誕生してから1年足らずで本作のようなドキュメンタリー映画を製作し公開までこぎつけたスタッフ陣の尽力にまずは敬意を表したい。本作の企画・製作などを務めたプロデューサーの河村光庸が手がけた『新聞記者』も、やはり日本では珍しく政権批判の姿勢を鮮明にした政治サスペンスドラマだった」と書いた。今回もまた難しい題材をスピーディーに劇場公開までこぎつけた関係者らの尽力に頭が下がるが、資料によると2022年7月の事件の前から河村プロデューサーが企画を立ち上げていたのだとか。だが河村氏が同年6月に死去、翌月にあの銃撃事件が起き、企画の存続が危ぶまれたものの、河村氏の遺志を受け継ぐ形で企画・プロデューサーを古賀茂明氏が担うことになったという。

「パンケーキを毒見する」に続き、SNSなどで政治的な発言をいとわない古舘寛治がナレーターを務めているのも嬉しい。もっとも、プレス資料に載っていたインタビューで、古舘さんは「ただ日本では、やはりこういった仕事を引き受ける人があまりいないようで、「それならば」と、断れなかったのが正直なところです」と語っている。ちょっと気になって、Wikipediaでテレビドラマ出演歴を見たら、民放ドラマの出演が2010年代に比べて20年代に大幅に減っているようだ。局側の政権への忖度とか、保守層からのクレームを恐れて起用を控えるとかでなければいいのだが。

本作で物足りなく感じるのは、あの銃撃事件そのものと、旧統一教会問題をほとんど取り上げていない点。おそらく製作費、スケジュール、尺の長さなどさまざまな事情から、それらは本作では主なテーマにしないと判断されたのだろう。河村氏が立ち上げ、「パンケーキを毒見する」と「妖怪の孫」を手がけた製作会社スターサンズにはぜひ、次作で旧統一教会と政治の問題に切り込んでいただきたいと大いに期待している。

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高森 郁哉

3.5こういう映画があってもいい

2024年6月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

故・安倍晋三元総理の疑惑が盛沢山の映画。

言ってしまえばワイドショーの情報を集めただけかもしれないが、個人的には知らない情報も結構あったし、官僚のインタビューもよかったと思う。
特に今の自民党を見ていると、どこを向いているのか分からない政策も多いので、こういった映画で少しでも政治、政党を分かってもらうのは必要なんじゃないかな。

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ひとふで

5.0映画として公開されること自体に意義がある作品

2024年5月15日
PCから投稿

今年185本目(合計1,277本目/今月(2024年5月度)19本目)。
(前の作品 「またヴィンセントは襲われる」→この作品「妖怪の孫」→次の作品「家出レスラー」)

 故首相を扱ったドキュメンタリー映画です。
作成当時はもちろん、このなくなった「事件」について意識などされていなかったのでしょう。

 ただその理解のもとにおいても、特に「人の死」という倫理・道徳として特殊な配慮が求められることがある(また、その「暗黙の理解・暗黙の強要」がある日本において)今回の事件をきっかけとした故首相について、事実は事実として扱い、それをドキュメンタリーとしてまとめなおした本映画は、それ自体がまた日本国憲法の要請する表現の自由ほかにまさに沿う内容であり、この映画は「存在すること自体」に意義があるのだろう、といった考え方です。

 映画の内容自体はすでに報じられている色々なニュース他等をまとめなおしたもので、「映画か」というと微妙なところはありますし、映画に娯楽性を求めていく立場ならおすすめできるものでもありませんが(だからミニシアター中心)、こうした作品は、存在自体に意義があるのであり(日本国憲法が要請する各種の権利が保障されていることの確認的な立ち位置)、「公開されること自体」に意味があるものと考えています。

 採点上、特に気になった点についてはないので(本人にとって有利な点、不利な点も含めて平等に描かれている)、フルスコアにしています。

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yukispica

4.0票田になるならなんでも有りきの開き直りには、ある意味感心した。

2023年12月20日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

いま、このレビューを書いているこの時に、安倍派の派閥事務所が検察庁の捜索を受けているので
配信で視聴しました。
パーティー券関連の、組織ぐるみでの申告隠しの疑いらしい。

安倍さんに歴代最長の在任期間をもたらせたのは、安倍カンパニーの天才的なイメージ戦略ゆえだと納得。
元々あの人、ドレッシーだし、お洒落で華があって国会での受け答えも面白い。

「やってる感が大切なんですよ」って言葉を、失言じゃなくてポリシーとして表明できて、それを聞いた人間に飛びつかせちゃうテクニック。
受け答えは学生サークルのノリだから、若者の心も掴む。
「国会中継」が面白くって視聴率が上がったなんて、そんなことかつてあったろうか。

けれど
実績を上げて政権の頂点に登りつめたい彼の、その「原動力」が、実はマザー・コンプレックスにあったのだとする評論家の読みは
それが本当ならば、安倍晋三さんは実際可哀想だったのだなと思わせるに十分な内容だった。
お母さんに愛されたくて、その手段として、祖父の嗣業を超えて褒められたかったのかと。

でもそれならば
寂しい子供たちのための学童保育の職員になっても構わなかったと思うんだけどね、
二世、三世議員の人生も大変だ。

自分の悲しい生育歴の埋め合わせに国政を利用するとか、案外政治家の動機ってそんなものなのかもしれない。

― そういえば、杉田さんとか、高市さんとか、三原さんとか、稲田さんとか、取り巻きに"猛女”を揃えるのは、"母親タイプへの意識下での屈折したこだわり”か。

いずれにせよ
当選するためなら
統一教会の組織票も、
連立の政権構想も、
お花見も、 闇の力も、
なんでもありで利用したいほど あの地位には魅力があるのでしょう。

明治憲法への回帰を果たしたら、
=母親への報復を果たしたら、その次に彼は何をやりたかったのだろう。
大統領制とか、核のボタンとか?

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きりん