ミツバチと私

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ミツバチと私

解説

自分の性自認に迷う子どもの葛藤と、寄り添う家族の姿をつづったスペイン発のヒューマンドラマ。

夏のバカンスでフランスからスペインにやって来た家族。8歳のアイトールは自分の性自認が分からず、違和感と居心地の悪さを抱えて心を閉ざしている。母はそんなアイトールを愛しながらも、向き合い方に悩んでいた。ある日、叔母が営む養蜂場でミツバチの生態を知ったアイトールは、ハチや自然とのふれあいを通して心をほどき、ありのままで生きていきたいという思いを強めていく。

オーディションで選ばれた新人ソフィア・オテロが主人公アイトールを繊細かつ自然に演じ、2023年・第73回ベルリン国際映画祭にて史上最年少となる8歳で最優秀主演俳優賞(銀熊賞)を受賞。スペインの新鋭エスティバリス・ウレソラ・ソラグレンが長編初監督・脚本を手がけた。

2023年製作/128分/G/スペイン
原題:20.000 especies de abejas
配給:アンプラグド
劇場公開日:2024年1月5日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第73回 ベルリン国際映画祭(2023年)

受賞

最優秀主演俳優賞(銀熊賞) ソフィア・オテロ

出品

コンペティション部門 出品作品 エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
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(C)2023 GARIZA FILMS INICIA FILMS SIRIMIRI FILMS ESPECIES DE ABEJAS AIE

映画レビュー

4.0アイデンティティーをめぐる家族の不協和のゆくえ

2024年1月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

幸せ

身体的には男性として生まれたけれど、男性的な名前「アイトール」やバスク地方で“坊や”を意味する愛称「ココ」で呼ばれることに反発し、性自認に悩む主人公。オーディションで女の子約500人の中から選ばれたソフィア・オテロが感情の揺らぎと精神的な成長を繊細かつみずみずしく演じた。ベルリン国際映画祭が2021年から俳優賞を一本化して男優・女優の区別をなくしたが、性的区別をしないという映画祭の理念にも合致する本作で2023年に主演俳優賞を史上最年少で受賞している。

母親のアネはそんな末っ子が抱える性自認の問題にどう接していいのか悩むが、著名な彫刻家の父と同じ道を志す彼女自身も、芸術家としてのアイデンティティーを確立できずに苦闘している。

長編初監督・脚脚本を手がけたエスティバリス・ウレソラ・ソラグレンが映画の舞台に選んだのは、自身の出身地でもあるスペイン領バスク地方。フランス領にもまたがるバスクという土地もまた、独自の言語があるものの近年話者が減ってきているそうで、地域としてのアイデンティティーの問題を抱えるという点において映画のメインテーマに呼応している。

子と母の転機になるのは、自分の信仰を貫いた聖ルチアの伝説。内なる心の声を信じることで、家族の不協和が美しいハーモニーへと変わる展開が胸に響く。

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高森 郁哉

4.0言葉にならない思いを物語構造が繊細に奏でる

2024年1月8日
PCから投稿

幼い主人公が違和感を抱えている。それはまだ本人が言葉で意思表示できるものではないが、この子は自分の小さな体で悩み、もがき続け、日常の至るところで信号を発している。大人達はそれに気づいているのかいないのか、まだきちんと正面から向き合えていない。フランスとスペインにまたがるバスク地方を舞台にした本作は、列車が国境を越える場面からして何かを隠喩しているかのよう。自分の名への抵抗、プールの会員証への嫌悪が示すように、何かをたやすく線引きするのは、ある特定の人にとって痛みを伴うものだ。もっと苦しいのは、自分の胸の内を誰も理解してくれないことかもしれない。水辺に放り込まれた聖ヨハネ像と、それを探し続ける人々がいる。本当の自分を探す主人公がいる。過去と現在、象徴と具象、さらに宗教的意味合いなども織り交ぜながら、細部が緩やかに重なっていく。そうやって見つめる、見つけるまでの洗礼的な過程が、繊細に胸を打つ。

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牛津厚信

4.08歳の子の自分を尊重する強さにしびれる。

2024年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

幸せ

私自身は、小さい頃から男の子に生まれたかった。
けれど、どんなに望んでも身体を作り替えることはできないので、早々に諦めた。
男の子になりたかったのは、友達付き合いや化粧、生理など、面倒なことが少ないから。
実利です。

アイトール(ルシア)は、男の子扱いされることに違和感を感じる。
その感覚を大事にして、髪型や服装、名前を選ぶ。
家族にも、それを表明する。
すごく、勇気がある行動だと思う。

母親は、ラスト近く、アイトールが死んだかもしれないと思った時に、彼のすべてを受け入れる。
母親にとって、子どもがどんな生き方を選んだって、生きていて欲しいのだ。
アイトールのこれからの人生を応援する気持ちでいっぱいになった。

犯罪行為でも、他人に迷惑をかけるわけでもないのに、自由に制限をかけるのはなぜだろう。
どんな服装も、髪型も、生き方も、社会のルールに反せず、他者の人権を侵害しないなら、それでいいんじゃないのかな。
100年前より格段に自由になっている今、100年後の世界は性別を意識しない世界になっているかもと想像した。

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のりたまちび

4.0言葉で表せない涙があふれた

2024年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

子供が主人公である。
その佇まいだけで、絵になるこの子を彼と呼ぶべきか、彼女と呼ぶべきか。

前から気になっていた映画ではあったけれど、観る機会を逸したまま、
残念だと思っていた。
ミニシアターでかかっていることを知り、大画面で、細かな音まで聞こえる場所で、
観たいと思い、迷わず予定を入れた。

ストーリーとしては単純なひと夏の出来事。
けれど子供だからこそ、言葉で表すことのできない葛藤を、
その繊細な優しさを、子供らしい無邪気さは残しつつも気遣う愛らしさを、
画面から受け取ることが出来るような映画だった。

映画館で映画を観る。
それは小説を読むように、ストーリーを追うだけのものでもなく
それは小説を読むように、情景描写を味わうだけのものでもなく
それは音楽を聴くように、その流れに身を任せるだけでもなく
それは会話のように、画面越しに映画と向き合うことで
自分とも向き合うような体験だと思える映画だった。
映画を観る意味を一つ、私の中で増やしてくれた
感覚で捉えて好きだと思えた一作だった。

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ひなたんく