消えゆくものたちの年代記

消えゆくものたちの年代記

解説

「D.I.」など中東パレスチナ問題を扱った作品で知られるエリア・スレイマン監督が1996年に発表した長編デビュー作。ベネチア国際映画祭で新人監督賞を受賞。日本では2020年・第21回東京フィルメックス(20年10月30日~11月7日、11月22日/TOHOシネマズシャンテ、有楽町朝日ホールほか)のエリア・スレイマン特集で上映。

1996年製作/84分/パレスチナ
原題:Chronicle of a Disappearance

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映画レビュー

5.0インタビューや会話のシーンで言語化の重要性を感じた。

2024年5月27日
PCから投稿

『天国にちがいない』を観た時、これほと面白いコメディを経験したことがないと思った。でも、他の人のレビューを読んだら、面白くなかったと。人それぞれの見解が違うのがコメディをより面白くさせていると思った。エリア・スレイマン監督の作品はストレス発散に個人的に効果抜群。

この映画だが、「天国にちがいない」より よりシニカルに言語で西欧やイスラエル政府を批判している。態度や目の動きなどより、言語がいかに力量があるかをまざまざと見せてるね。特に、ロシア正教会の聖職者(牧師か?ガリラヤ湖のオーバー・ツーリズムに否定的)や不動産屋(東イスラエルで部屋を借りるアラブの女性)や作家(祖父のイスタンブールの話)のインタビューが言語化されて、比喩化されてるのでパワフルだと感じさせる。

他にはフランス語人のレストランでの会話など。特にこのフランス語人の会話の内容は『A Stop at the american Colony.....から始まって、初めっから、これは土地の領土争いだから忘れるな。今までに平和の時期が決してなかった。解決策が出始めても混乱している。事実を知れば知るほど、複雑になってきて、わかればわかるほど、ごちゃごちゃになってしまう。このパレスチナとイスラエル政府のことは話しても話しても、意味がない。解決できない』と。1996年の前の現状を二人がフランス語でレストランで会話しているが、2024年の今まで、いや、今は、ハマスの攻撃にことを発して、パレスチナ人に対する大量虐殺まで進行してしまった。この二人の会話が、何も結論を見出せない会話になっている。それが、パレスチナとイスラエル政府の問題の比喩であったわけで、ここが滑稽なはずだが、現状を考えると「おかしいね」とは言えなくなっている。

小出しにしている滑稽さはスレイマン監督のよく使う手だ。たとえば、釣りのシーンだが、家族の家系を大事(自慢?)にしているのは文化なのかも知れない。それに、アジア系の団体の旅行者がHolylandの前で、無礼にも二人の写真を撮るシーンがあるが、それはアジア系(中国系?日本人?)のステレオタイプをよく描いているねえ。そこの絵葉書もイスラエルの国のスナックがファラーフェルだって。これは中東の料理でイスラエルばかりじゃないよ。笑うね。また、スレイマン監督がゲストスピーカーとして訪れ、講演をするシーがあるが、マイクが反響してしまいスピーチができなくなる。こりゃ、イスラエル政府のコントロールかも知れないし、たまたまそうなったのかも知れないが、周りのざわつき行動がおかしいねえ。

こういうちょっとした短いシーンより、先ほど簡単に述べた全部のインタビューのシーンが一番気に入った。ガリラヤ湖のオーバー・ツーリズムに否定的な牧師の主張が好きだった。最近、円が暴落してるからオーバースーリズムを経済発展と、勘違いして喜んでいるニュースを聞くが、ここでこの牧師は環境問題提起や自分が信仰を失いかけているという。ガリラヤ湖はキリストが海を鎮めるシーンが聖書にもあるがロシア正教にとっても同じで重要なところだ。それに、マタイ 14:27のキリストが海を歩くことに使徒が驚きを示すところが。これと水上スキー(海を歩く)をかけているのが上手で大笑い。この状況を聖職者曰く『ガリラヤ湖は排泄物がたっぷり入った美食水。その汚染は中国料理を食べたアメリカ人とドイツ人旅行者のクソだと。そして、クソが湖面に地殻を作ってる。誰でも水の上を歩けるようになり、今では奇跡を起こすことができる(爆笑:聖書との比喩、大好きだこの言葉)』そして、聖職者は周りを見ながら、『私は巨大な建物(シオニズムが建てたユダヤ人住宅地)とキブツ(イスラエルの北にある農業共同体特別地域)に囲まれている。それだけでは十分ではなかったかのように、カラー(聖職者が首に身につけるカラー)が私を窒息させる。』聖職者はこのインタビューですでにカラーをしていない。おかしい!

それから、恐怖(ユダヤ人の住宅地を移すので、この意味はシオニズムの拡大の恐怖)が聖職者を襲うと。(ユダヤ教の増加)宗教的な感情を伴う恐怖で、それが拡大し始めて場所全体を占領する。それが聖職者にとって終わりを示して、彼は 信仰を失い始めまたと私は理解した。
この聖職者のインタビューは辛辣である。シオンに帰れ帰れで、ユダヤ人が続々とイスラエルに戻り始めている時期に、イスラエル政府の住宅建築批判だけでなく、イスラエルに住んでいる(ウエストバンクやガザじゃない)モスリム教、キリスト教の住む場もなくなっている。それに、まして、欧米の旅行者の氾濫。このインタビューから察すると中国の店の進出も。特にアメリカ=イスラエルの構造があるから、アメリカの植民地じゃないよと。イスラエルの強みはキブツであり、第一次産業に力を入れて生産をするが、日本はそこがお粗末だから先が危ぶまれる。

インタビューを全て説明したいのは山々だ。なぜかというと、現代社会との対比もうまいし、ユダヤ教、イスラエル政府、欧米、などのステレオタイプを比喩的に表現していて、傑作だ。しかし、これだけしか書いてないのにもう疲れちゃったから以上。

挿入歌も好き。歌詞がいいねええ。Why do you fight? We were friends once. Listen to your heart, and you will hear the truth.......

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