劇場公開日 2021年4月16日

「ブレット(弾丸)トレインを競技場に撃ち込む」名探偵コナン 緋色の弾丸 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ブレット(弾丸)トレインを競技場に撃ち込む

2021年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

偶然か必然かわからないが、今の国民感情に寄り添った作品だった。タイトルの「弾丸」とは、真空超電導リニアのこと。これがオリンピックを模したワールドスポーツゲームのメイン会場(ザハ案のデザインに近い競技場だ)に突っ込む。そこから先は描写されていないが、開催直前にメイン会場でこれだけの大事故が起きたら、開催不可能なのではないかと思われる。今の日本人にとってこれ以上痛快な破壊のカタルシスはないのではないか。
五輪開催中止の意見がこれほど高まっていたのは、製作者たちにとっては偶然だろう、だが、そもそも、これをオリンピックイヤーにぶつけてきたのは偶然じゃないはずだ。よくよく考えたら、随分アナーキーなアイデアだ。
冒頭、過去のシーンでシカゴの競技場の建設が間に合いそうにないというニュース映像が挿入される。特に物語に絡まない要素なのだが、どうして建設が遅れている設定にしたのだろうか。日本の実際の国立競技場建設にかんする騒動を何となく揶揄しているようにも見える。
物語そのものは、アクション要素に比重を置いた、いつもながらのコナン映画だ。リニアモーターカーという移動する舞台を用意したのだから、もっとガッツリ車内を中心に展開してもよかったのでは、という気もするが、基本的に今回も飽きることなく最後まで楽しめた。灰原の活躍が多かったのも嬉しい。

杉本穂高