天安門、恋人たち

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天安門、恋人たち

解説

「パープル・バタフライ」「ふたりの人魚」のロウ・イエ監督が、1989年の天安門事件を背景に、自由と民主化を求める学生たちの青春と人生、男女の愛を描いたラブストーリー。

学生たちの間で自由と民主化を求める声が高まっていた1987年の中国。故郷の東北地方から北京の大学に入学したユー・ホンは、そこで運命の恋人チョウ・ウェイと出会う。恋に落ちた2人は狂おしく愛し合い、激しくぶつかり合う。しかし、1989年6月4日の天安門事件を境に、2人は離ればなれになってしまう。チョウ・ウェイはベルリンへ逃れ、ユー・ホンは国内で各地を転々とし、仕事や恋人を変えながら生活していく。そして数年後、互いを忘れることができずにいた2人は再会を果たすが……。

中国ではタブーとなる天安門事件を扱っていることや、過激な官能描写もあることなどから上映禁止になり、ロウ・イエ監督にも5年間の表現活動禁止処分が下されたが、2006年・第59回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されるなど国際的には高く評価された。日本では2008年に公開。2024年、オリジナルの35ミリプリントをノンレストアでDCP化してリバイバル公開。

2006年製作/140分/中国・フランス合作
原題:頤和園 Summer Palace
配給:アップリンク
劇場公開日:2024年5月31日

その他の公開日:2008年7月26日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第59回 カンヌ国際映画祭(2006年)

出品

コンペティション部門
出品作品 ロウ・イエ
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(C)LAUREL FILMS/DREAM FACTORY/ROSEM FILMS/FANTASY PICTURES 2006

映画レビュー

2.5男の残酷さ、女の痛々しさ。

2024年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

単純

寝られる

ユー・ホンとチョウ・ウェイが再会してからの流れで、ラストが忘れがたいものになる。
 ほとんど台詞らしいものはない。表情と行動、間合いで表現する。
 解説にある「互いを忘れることができずにいた2人」が、再会を果たして、どうして、こんな風になるのか。ユー・ホンがそうするのか、それがつぶさに表現されており、とても納得させてくれる。そして、それをうけたチョウ・ウェイの反応。確かに現実的にもあるあるなのだが、ここまでストレートに描くか?

その後に続く、エンディングを見れば、監督の親しい方をモデルにしたのか?
男女4人がクローズアップされて、その後が簡単に語られる。
監督の青春記録を描き出したものなのだと納得する。

原題は『頤和園』英語タイトルは『Summer Palace』。
 この映画の公式サイト(UPLINK)に載っている晏さんの寄稿によると、頤和園は「北大生(北京大学生)と清華大生にとっての公園はデートに使う恰好な場所」で、「原題は作者が青春に捧げるオマージュの時代風景として付けたものではないかと思う」とある。
 私もこの評に納得。ユー・ホンとチョウ・ウェイのカップルを要として、ありがちの、彼らの恋の成り行きを追っていると思う。

あの”天安門事件”が起こった時に大学生であり、当然、その状況を経験しており、その事件は出てくる。世界の流れとして、決して崩れることはないと言われたベルリンの壁の崩壊、ソ連の崩壊、香港返還にも触れてはいるが、正直、このドラマを他の時代に移しても成り立つ。

”天安門事件”を強く打ち出した邦題やチラシから”天安門事件”を期待してしまったが、肩透かし。評価が下がる。

ただ、評価が低いのはそれだけではない。
 青春なんて、恋なんてそんなもんだと言われてしまえばそうなのだが、
 ただただ、セックスしているだけ。2段ベッドが並んでいる雑魚部屋寮でのごたごた。一応男子寮・女子寮と分かれているが、出入り自由となれば、そこで起こることなんて。
 そこで出会うユー・ホンとチョウ・ウェイ。ユー・ホンはチョウ・ウェイを一目見ただけで、「運命の男」と判ったという。そういうことは確かにあるが。とはいえ、鑑賞している私たちには、どこに惚れて、好きになって関係を続けていくのか判らない。寮のごたごたの他は、セックス。二人がどんな信条をもって、どんな性格でとか、恋愛ドラマを見るときに私が期待するようなシーンはわずかというか、記憶にすら残らない。余程、体の相性が良いのだろうと思うしかない。あとは、二人とも他の大学生から「寝てみたい相手No.1。」とみられている。そんな相手を独占できているという自負だけか?

天安門の集会に、皆でこぞって行くのも、何かのイベントに行くようだった。
 大学全体を包み込む高揚感。その雰囲気から外れるのも仲間外れみたいだしと、皆で何かを行っているその思いに浮かれている感じ。
 中国語が解れば、字幕に表現されていない、例えば壁にびっしり張られたアジテーションの文言が解れば彼らの考えていたことが理解でき、集会に参集する意義とか思いが理解できるのだろうが…。
 検閲の関係で表現しなかったのか?でも、そもそも”天安門事件”を入れるだけで検閲に引っかかることは解っていて、あえて入れたのだからと期待する方が酷なのか。実は大きなうねり・ムーブメントであって、大半の学生は何も考えずに、たんに衝動・エネルギーのはけ口だったのか?

そんな浮かれた大学生たちの思いは、考えもしなかった軍部の介入によって、夢から覚めさせられる。
 そんな状況を心配したユー・ホンの前彼によって、ユー・ホンは故郷に連れ戻される。
 大学に残った学生は軍事訓練?何がどう起こっているのか説明はない。訓練を課すことによって、”考え””行動”する自由を、行政は奪おうとしたのか?
 そんな雰囲気を嫌って、チョウ・ウェイたちはベルリンに行ったのか?当局に目をつけられて逃亡したようには見えなかった。

それからの、二人のそれぞれが語られ、”再会”のシーンとなる。

チラシには「時代に翻弄され、時を超え愛に揺れ動く男女の官能ラブストーリー」とあるが、たんたんと登場人物を追うので、監督の親しかった人々の記録のように見える。
 時代が、彼らの生き様を変えたようなエピソードは特にない。ベルリンで、ポーランドから来た女性との会話もあり、時代の雰囲気はさらってはいるのだが、あの時代を知らない人々には伝わるのだろうか?
 セックスシーンだらけであることが”官能”なのだろうか?女優や男優が頑張っていることは認めるが、1本調子。二人きりになると、お互い相手を求めたくなるような関わり合いもなく、いきなりキスしてセックスが始まる。ちっとも官能的でも、ロマンティックでもない。その無機質なやり取りに空虚感を感じるだけ。それを狙っての演出なのだろうか?

役者はすごい。
 上にも記したように、ラストのシーンでは、表情と行動だけで、それぞれの心情を見せてくれるハオ・レイさん。
 リー・ティを演じられたフー・リンさん。大学時代は特筆すべきものはないが、ベルリンに行ってからの細やかな表情。クールに冷めているようで、不安定さをにじみださせる。唐突な行動には驚いたが、その直前の表情を思い返してみれば、やっぱりと納得させるものがある。
 そして、チョウ・ウェイを演じたグオ・シャオドン氏。周りに気配りし、大切にしているようで、自分でも自身をそういう風に規定しているが、実は、相手の心の機微に鈍感と言うか、それより自分の欲望に忠実な男を見事に演じている。

役者の演技やシーンだけを見ると、ハッとさせるようなものがあるが、全体を通してみると、特に残らない。眠たくなる。そんな風に気を抜いたところで、あのラスト。ワザとの演出なのだろうか?
 「人間は孤独を求め、死に憧れる でなければなぜ愛する人を傷つけるのか」と、いかにも哲学的なことを言っているが、この映画から伝わってくるのは、精神的未熟さ。相手のことを思いやることなく、ひたすら自分の欲望と思いを相手にぶつけるだけ。相手の幸せを考える言動がとれたら、もっとちがう局面が開けたのに。
 それを時代のせいにするのは、それこそ、自分で自分を育てられない精神的未熟さである。

そんな風に、ドラマとしても今一つなのだが、天安門がらみの広報の仕方も、評価を下げる。
 香港での弾圧。活動家の逮捕。そして、今ヒートしている台湾の情勢。そんな時期に「天安門」が邦題に入っている映画となれば、天安門事件について多少は触れていて、門外漢にも理解ができるような何かヒントが得られるのではないかと期待してしまう。
 若松監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』ほど、真正面に向き合った映画ではないことは、予告を見れば理解できるが、これほど単なる背景になっているとは。㊟
 チョウ・ウェイたちの行き先がベルリンなのは、映画的にあえてなのだろうか。それともモデルにした人々が実際にベルリンに行ったからなのだろうか。
 ベルリンの壁の崩壊に刺激を受けて、東西ドイツ併合1週間前に、ツアーでソ連:当時の国名(モスクワ・レニングラード:当時の地名)・ポーランド(ワルシャワ・クラクフ・アウシュビッツ)・東ドイツ(ベルリン・ドレスデン・ライプツィヒ・マイセン)・西ドイツ(ベルリン)・チェコスロバキア:当時の地名(プラハ)を旅してきた身には、描写が足りない。壁崩壊、ソ連支配からの脱却に希望を見て浮かれ、未来を夢見た世相。けれども、すぐにその時流に乗れた者と、完璧な保障を失って困った人達など、さまざまに分かれていった人々。自由に伴うその代償。そのもやもやは映画でも表現されているけれど…。

自分が生きてきた時代を客観視するのは難しいと思った。

㊟若松監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』は、映画としてこの映画以上にひどいし、中に表現されている思想も低レベルだが、それでも、ご自身も多少関わっていた思想・現象に真正面から向き合った姿勢にはこうべを垂れる。役者の迫真の演技も脱帽。

2006年製作作品。2024年、オリジナルの35ミリプリントをノンレストアでDCP化してリバイバル公開の試写会にて。

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とみいじょん

4.0日本の若い人や中国の人で一杯だった

2023年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画館に入った時、何故混んでいるのか(一度は満員札止めだった)はすぐ判った。比較的若い日本人に加えて、中国からの人が目立った。そうか、中国では、この映画は、未公開なのだ。
主人公は、朝鮮族自治州(朝鮮語が聞こえる)に住む若い女性ユー・ホン。北京の大学に合格し、上京する。女子学生寮に入って、友人にハンサムな男子学生チョウ・ウェイを紹介され、付き合い始める。ユー・ホンは、とびきり美しく、こうした女性でよくあるように、自分の魅力がどこにあるのかを知っている。それは、寛容でいて、かつ無慈悲であること。しかも、その魅力は性愛により、最も相手に伝わる。当然の結果として、この映画では、激しい性愛の場面が続く。こうした展開に慣れていない日本の若い観客は、辛そうだった。
ただ、性愛の喜びは刹那的で、理想の相手にめぐり会ったユー・ホンは、いつか二人の間柄が終わってしまうのではないかとの不安から、別れを切り出す。当然の帰結として、さらに激しい愛を交わす。それを繰り返す内に、周囲の学生たちは、自由化・民主化を目指して騒ぎ始め、二人も巻き込まれるが、軍隊の出動を招き(兵士が空に向かって発砲するところが出てくる)(89年の天安門事件)その混乱の中で、ユー・ホンは大学をやめ、かつての恋人が待つ故郷に帰る。それも長続きせず(中国発展の象徴である)深圳、(あの)武漢、(揚子江にかかる橋が美しい)重慶と移り住む。その度に、既婚者や年下を含め、様々な男性と愛を交わすが、本当に満たされることはない。チョウ・ウェイを忘れることができないのだ。
一方のチョウ・ウェイは、友人たちの導きで、ベルリンにわたる。ドイツ語もよくでき、壁崩壊後の現地になじんで行くが、肝心の友人を喪う結果となり、その原因であるユー・ホンの面影が消えることはなく、帰国することになる。帰り着いた重慶で、彼女と再会する。
確かに、物語には繰り返し感があり、少し退屈する。それには、監督ロウ・イエの意思も働いているのだろう。彼は、単なる天安門の物語にはしたくなかったものと思われる。60年代のステューデント・パワーの時代を想い出してみるとわかる。あの時のスローガンは、大学改革に端を発した政治改革だが、その底流には性の解放、個人の解放があった。脚本・監督のロウ・イエは、単なる政治のドラマではなく、その背景にある性を介した個人の解放を描きたかったのだと思う。そのためには、二人のその後の経緯を辿る必要があった。何より、二人が肉体をぶつけ合うことにより、ユー・ホンが本来持つ苛烈さが際立ち、人間としての根源が顕わになった。そこに、この映画の最大の魅力があったのではないか。
それにしても、出会ったときは輝いていた若い二人の、その後10年近くの経緯は、中国の歩み、そのものを象徴している。まだ、その決着はついていないのだと思う。是非、ロングランとなって欲しいが、それには、日本の若い観客と中国の方が頼りだ。

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詠み人知らず

5.0中国人しか共鳴できない映画

2023年11月1日
Androidアプリから投稿

難しい

まず、この中国人しか共鳴できない映画が海外で公開されることがちょっと変だと思う。実際観客の大半は中国の方なのだ。

監督自身が1989年に北京の大学を卒業し、中国ではいわゆる「89世代」という、天安門事件を身をもって経験した世代の人なので、この映画にはやはり、監督自身の天安門事件や学生と国との関係に対する思考、「89世代」の天安門事件以後の運命と彼/彼女らが当初の理想を、違う人生の段階でどう思っているのかに対する描写が込められていると思う。

外国人の観客はともかく、中国人でさえも、もし天安門事件の歴史や「89世代」のあれ以来の人生の歩みについて詳しくなければ、なかなか共鳴できない作品ではないかって思ってる。

セリフでよく出た主人公の独り言は、監督の、現実に何度も裏切られた自身の理想と欲望に対する考えではないかと思ってる。

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haoshez

5.0邦題違えども、荒削りなロウイエ作品良い

2023年2月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
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redir
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