フォロウィングのレビュー・感想・評価
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ゴム手袋は売ってない
展開が読めず面白く鑑賞したが、オチを知って振り返ると色々モヤモヤした。
まず、脅してくるような人間の家でわざわざ人を殺すボスの迂闊さ。(あの回想も嘘?)
何よりコッブの計画の杜撰さと迂遠さと無意味さ。
コッブの目的は、“女”を始末することだった。
スケープゴートを用意するのは分かるし、偶然ビルに出会ったのも問題ない。
しかし、ビルが“女”に興味を持たなかったら?彼女のために盗みに入るほどのめり込まなかったら??
金庫破りのタイミングに男が現れたのは作為があったにせよ、ソイツはボスの部下では。
コッブはボスを裏切っていて金も奪うつもりだったのか、とも思ったが、だったら“女”を殺す理由がない。
見落としがあるかもしれないが、辻褄が合わないと思う。
『メメント』では設定や脚本と有機的に結びついていた時系列シャッフルも、本作ではあまり意味がない。
画作りはカッコよかったし、70分かつ低予算ということを踏まえれば及第点か。
ビルが途中で容姿を変えたり怪我をすることで、時間軸を分かり易くしていたのも上手かった。
コッブと“女”がグル、というところで止めて、その背景に凝ってあれば名作だったかも。
きっと矛盾なくピースはハマるのだろう
いつもの映画館で
おそらく今年一番のオッペンハイマーの監督の
幻のデビュー作というので急遽鑑賞
もう今日のこの時間しか合わない
先週プリシラを観たおかげでリピーター割引
あさってもレザボアドッグスを観るど
時系列シャフル こっからメメントにつながるのかと
インセプションとかインターステラーなどよりは
理解できた気分 70分と短めで酔っぱらってなかったので
白黒でチト眠気をもよおしたり
長髪髭と短髪髭なしの主人公が別人なのかと思ったりも
よく分からぬ部分はあるが
きっと矛盾なくピースはハマるのだろう
伏線回収もあったっけ
いいと思います
けっこう面白い
今では大予算の超大作を手掛けるノーラン監督が、非常につつましい作品を撮っている若手時代を思うと心がきゅんとする。時系列がやたらと前後するなど今も続く作風だ。分かりにくくはなくて、けっこう面白い。いたずらに他人の後をつけると言う悪趣味な遊びも面白い。
さすが衝撃のデビュー作
・尾行趣味の主人公
主人公の男は尾行が趣味だ。
通行人を見つけては尾行をしている。なぜなら人の私生活が気になって仕方がないからだ。
ただ決して相手に危害は加えず気付かれることもない。少なくともしばらくはそうだった。
・泥棒の男
だが尾行男はある日、はじめてその尾行を気づかれてしまう。
そしてカフェで相手の男に問い詰められる。だが話して行くと、驚くことにその相手は本職泥棒だった。
しかも完全に金品目的の泥棒ではなく、空き巣に入ることで人の私生活を覗き見するという尾行男と同じような趣味を持つ人間だっだ。
泥棒は尾行男を誘い、二人組で人の家に空き巣に入るようになる。
・BARの女
尾行男はBARで女と出会う。そして恋仲になるのだが、その女は前に空き巣に入られたと話す。
なんと泥棒男が前に空き巣に入った家の女だったのだ。
・女とハゲ
女はまた別のハゲの男と微妙な関係にある。(劇中でもこの男は何回もハゲと呼ばれるのでちょっと笑ってしまった)
ハゲはちょっとした権力者で、かつて女の部屋でまた別の男をハンマーで殴り殺したことがある。借金を背負った男の指を砕き、頭を砕いたのだ。
なので女はハゲを怖がってきっちり別れることが出来ずにいる。
そしてハゲは金庫に女の写真を保管しており、それが女の弱みとなっている。
なので女と恋仲である尾行男は彼女のためにハゲの本拠地に乗り込み、金庫の中から金と写真を盗み出すのだ。
だがそこでハゲの手下に見つかり、手下をハンマーで殴り殺してしまう。
・女の裏
尾行男はハゲの金庫から盗みを働いた後、怒りを感じながら女の元に駆けつける。
なぜなら彼が取り戻した写真は女の弱みを握るものでもなんでもなかったのだ。女の目的は単に金だったのか?
そこで女は真実を尾行男に告げる。
実はこれは女のためではなく、女の別の愛人のための犯行計画だったのだ。その愛人とはなんと、尾行男が最近行動を共にしていた泥棒男のことであった。
・泥棒音の罪
事の顛末は、泥棒男がかつてどこかの家に泥棒に入った時、すでにその老女は誰かによって殴り殺されていた。
それで泥棒は警察に呼ばれるが、どうやら罪を着せられそうで身が危ない。
そんな時、自分のことを尾行する男の存在に気づき、尾行男を泥棒に仕立て上げ、わざと自分の女にハニートラップを仕掛けさせて、最後には泥棒男と似た手口の反抗をさせて、自分の身代わりに濡れ衣を着せようとしたのだった。
・尾行男の出頭
自分も人を殴り殺すという罪を犯してしまった尾行男は、警察に出頭する。そして真実を全て告白するのだった。
泥棒男のこと、その女のことや、自分の犯行や、誰かに殴り殺された老女のことなどをだ。
しかし警察は老女のことなど知らないと言う。まさか。何故か。
つまり尾行男は多重的な罠にハメられており、殴り殺された老女など存在しなかったし、泥棒男の存在の痕跡を残すものもひとつもない。泥棒男は雲のように証拠を残さずに消えてしまい、残されたのは単に罪を犯した尾行男だけだ。
しかも尾行男が自首したその朝、女も殴り殺されていたことが尾行男に告げられる。
・殺された女
殺された女は泥棒男の愛人であり、一緒に尾行男を罠にかけたかと思いきや、まだ裏の真実があった。
女は権力者のハゲの殺人をネタにハゲをゆすっていた。以前そのハゲに女の始末を依頼された泥棒男は女に取り入り、女の愛人となり、金庫の金と引き換えに最後には女を始末したのだ。
だが女を殴り殺したハンマーには、尾行男がハゲの手下を殴り殺した血もついており、疑われるのは尾行男だけ。
このように、本作は多重的に仕掛けが張り巡らされている劇であった。
・映画館で観た感想
非常に良かったし見応えがあった。上映時間は70分だしちょっとした小作品かと思いきやだ。
「オッペンハイマー」を観てクリストファー・ノーランという監督にはじめて興味を持って本作も観に行ったわけだけれど、デビュー作がこれというのは確かに衝撃だろう。
監督、脚本、ショットもクリストファーノーランとクレジットされていたので、自分でカメラを回したのだろうか。
オッペンハイマーでもそうだったが、クリストファーノーラン監督は時系列をバラバラに配置して観客を混乱させて、こちらに考えさせるのが好きだなと思った。僕もそんな映画は好きだ。
本作では作中できっちりと種明かしもしてくれるので親切だとは言える。
・会場
もうそろそろテアトル梅田に名前が変わるシネリーブル梅田にて。
客席はけっこう埋まっていた。おそらく僕みたいにオッペンハイマーで興味を持って観にきた人が多かったんじゃないだろうか。
・70分
70分は時間だけ聞くと短い印象だが、映画をいざ観終わってみると決して短い感じはしなかった。
この世の全ての映画が70分から90分ぐらいになれば良いのにと思う。3時間もスクリーンを観続けるのはなかなか集中力がもたない。
と言いつつオッペンハイマーは3時間の大作だったけど。
・なぜ白黒なのか?
1998年の作品らしいが、何故か白黒だ。舞台設定がおそらくCD全盛時代ぐらいなので、その時代の感じを表すのに白黒が選ばれたのだろうか。
デビュー作ということもあって決して潤沢な予算はなかっただろう。切り落とすべきところは切り落として狙い澄ましたように名作を作り出したノーラン監督。なんとなく白黒は映画ファンの受けも良さそう。
さすが。
パズルのピースのように散らばった時間と、それが揃ったときの面白さ。
◯作品全体
パズルのピースのように散らばったシーンたちが、登場人物たちの真の関係性を明らかにしていく。少ない登場人物ながら、誰かの関係性が変われば別の誰かの関係性も変わる…というように、状況が変化していく仕掛けが面白かった。
中盤まではビルとコッブの友好的な共犯関係が描かれるが、冒頭に挿入された口に手袋を詰められるビルの姿が不吉な印象を残す。短いカットながら強いフックとなっているところに巧さを感じた。一体ビルは誰にやられたのか。情報の限られたモノクロの画面が、より一層展開にモヤをかけている。
中盤にはコッブと金髪の女の共犯関係、男女関係が明るみになり、ビルにとってはコッブとの共犯関係も、金髪の女との男女関係も裏切られたことになる。次にどのシーンが映るかわからない分、唐突に示される関係性の変化は刺激的な演出だった。終盤、警察へ供述するビルの話と警察側の話に食い違いがでてくるあたりで、すべてはコッブがビルに罪をかぶせる謀略だったことがわかる。そのことはコッブと金髪の女の会話で既に判明していたが、コッブは金髪の女すらも襲撃対象だったことが最後の最後で明らかになる展開が面白かった。「禿げ頭の男」からの指示とコッブを知る人物を消すことができ、コッブはビルが語る妄想の人物としていなくなる。コッブの完璧な作戦はビルと金髪の女が孤独でいることによって成り立っており、作品冒頭でやたら多く映る人混みと、その中を尾行するビルの異質さが対比的で、伏線のような役割をしていた。
時系列がバラバラであることが単純な仕掛けの部分だけでなく、すべてのピースがそろったときの面白さもしっかりとある。ノーラン映画特有の時間の演出は、監督一作目にして核心ここにあり、だった。
○カメラワークとか
・予算がないこともあってモノクロにしたようだけど、モノクロによって建物の様子から状況を推測しづらく、それがまた良かった。屋外なのか屋内なのか、建物は前のシーンとおなじところなのか違うのか。作品内で使われている場所が少ない分、建物からの情報(壁紙の色や新古の状況などなど)も少なくしているように感じた。特にコッブと金髪の女の関係性が初めて明るみになるカットでは、それまで何度も映されていた金髪の女の部屋と同じ場所だと気づけず、金髪の女がベッドで寝そべっている姿が映されたときはかなり衝撃的だった。家の色合いとかが分かっていたらカット頭で「あれ?ここは…」と勘づくことができたかもしれない。
○その他
・ラストシーンでコッブの存在がどんどんと証拠の無いものとなり、ビルが作り上げた妄想の人物のように存在が消えていくところは素晴らしかった。なんとなく『ユージュアルサスペクツ』を思い出すラスト。本作では自分で別の人物を作り出すのではなく、コッブがビルを語らせることで「フッと消えた」を作り出した。
・侵入した先の住民とレストランで出くわす場面では、ビルが強く焦る。コッブがなだめても聞く耳を持たなかった。金庫の前で人を殴ったことも、誰も目撃者がいないにも関わらず直ぐに警察へ駆けこんだ。ビルは人を見る趣味があるくせに人から見られることにはまったく慣れていない。逆の立場になると途端に脆くなるのは物語によくあることだけど、登場人物の行動の根っこにあると、やはり説得力がある。
時系列再整理版も同時収録のDVDで鑑賞。 監督・脚本はクリストファ...
時系列再整理版も同時収録のDVDで鑑賞。
監督・脚本はクリストファー・ノーラン。
長編デビュー作で、製作・撮影・編集も兼務しています。
90年代末の英国ロンドン。
作家志望だが現在は無職の青年ビル(ジェレミー・セオボルド)。
生来の好奇心も手伝い、創作のネタを得るため、しばしば通りすがりの人々の後をフォロウ・尾けている。
ただし、相手の住居や職業がわかった時点で、尾行を中止するのを常としていた。
そんなある日、身なりのいい青年(アレックス・ハウ)を見つけて尾行したところ、カフェで尾行がバレてしまう。
男はコッブと名乗り、不法侵入をして、他人の私生活を覗くのが趣味だ、ついでに小物を盗んで換金している、興味があれば同行しないか、と誘われ・・・
という物語で、冒頭、警察の取調室らしきところでビルが尋問されるシーンからはじまり、コッブから誘われてある部屋に侵入するまでは、いくつかのインサートショットで時間は前後するものの、おおむね時系列どおり。
こののち二軒目、三軒目と侵入を繰り返すが、このあたりから時系列が組み替えられていきます。
ビルがブロンドの美女(ルーシー・ラッセル)と出逢ったあたりからは、ビルの身なりも立派になり、彼の風貌から時系列のどの辺に位置するエピソードかが分かる仕組みになっているので、観ていて、それほど混乱することはありません。
ブロンド美女は暗黒街のボスの情婦ということも判明し・・・
と後半は、時系列組み換えによって、どんでん返しの連続。
いや、こんなにどんでん返しがなくてもいいんじゃない?と思うほど。
モノクロ画面の撮影も巧みで、登場人物のキャラクターも描き分けが出来ており、クリストファー・ノーラン作品では上位に位置する出来だと思いましたが、これほど時系列組み換えは不要なのでは?とも思った次第。
なお、エンディングで群衆に消えるコッブは、のちの『バットマン(ダークナイト)』の原型ともいえるでしょう。
<追記>
つづいて、時系列順に再整理されたクロノロジカル版。
冒頭、ビルの警察での取り調べののち、ビルがコッブと出逢うあたりまではオリジナル版とほぼ同じ。
すぐに一軒目の住人とレストランですれ違い、押し込み強盗であることがバレるのではないかとビビったビルが、身なりを整え、そして三軒目、ブロンド美女の部屋へ侵入。
早々に美女の正体が(観客に)判明するあたりから、事件に巻き込まれた主人公が、さらに泥沼にはまり・・・しかし、事件にはさらに裏の裏がある、と正統派ハードボイルドの雰囲気。
この時系列再整理でもどんでん返しがいくつもあるので、物語の先が読めないというのは同じ。
オリジナル版を時系列順に再整理しただけで新たなシーンなどは追加されていないので、場面場面のつなぎがぎこちないのが難点だけれど、どちらかというとこちらの方が個人的には好み。
ノーラン監督渾身のデビュー作
作家志望の青年ビルは尾行(フォロウィング)が日課。ネタ探しの人間観察で始めたとするが、一人一回限りとか女性を暗がりでつけないとか自身にルールを課すあたりがノーラン監督らしい。
ある日コッブという男に尾行を気付かれて腐れ縁が始まる。どちらも作家志望だとするが「尾行なんていかにも初心者、他人を知りたいならてっとり早く家を探るのが一番」とのたまうコップに引きこまれるビルでした。
人は覗きやストーカーまでは行かないものの、他人の私生活に関心がある筈と言う前提でのつかみと展開。コッブがやってることは空き巣だが金目のものは盗まない、「ガラクタも無くなって初めてその価値に気付くのさ」と屁理屈まがいの泥棒哲学まで語るから妙に納得させられるノーランマジック。
このまま引っ張るのかと思ったらブロンド女が絡んで二転三転、人は見たものを真実ととらえがち、裏にそんな謀略があったとは・・・。
人間の心の闇を描き続けるノーラン監督の長編デビュー作、特典の監督インタビューで知ったのだが、予算の無いことから様々な手法が編み出されたのだから苦労のしがいがありましたね。
先ず、撮影機材、カラーフィルムは高いし良好な発色にはそれなりの照明も必要、モノクロにすることでノワール調を出したかったと逆手にとれる。スタッフも専業ではないのでスケジュール調整が大変、その日、その時でロケ場所を決め脚本も変えるという離れ業、従って繋がり重視のシーケンス撮りは止めて時系列を壊している、これはミステリーには好都合の難解性を醸し出す・・。登場人物も絞った方が深みが増すしギャラも節約と脚本、監督、製作と一人何役もやったノーラン監督渾身のデビュー作。
個人的には、映画好きだから人間が嫌いではないのだろうが昨今は年のせいか人間関係の煩わしさが先にたつし、監督の頭の良さは認めるもののノーラン作品は策を弄しすぎで一回見ただけでは分かりにくいところがやはり難点かな・・。
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