ルシアンの青春

劇場公開日:

解説

第二次世界大戦末期のフランスを舞台に、ナチとフランス・レジスタンスの戦いに捲き込まれた若者とユダヤ娘の愛の逃避行を描く。製作はポール・メグレ、監督は「好奇心」のルイ・マル、脚本はマルとパトリック・モディアノ、撮影はトニーノ・デリ・コリ、音楽演奏はジャンゴ・ラインハルトとフランス・ホット・クラブ五重奏団、アンドレ・クラヴォ、イレネ・ド・トレベール、編集はシュザンヌ・バロンが各々担当。出演はピエール・ブレーズ、オーロール・クレマン、オルガー・ローウェンアドラー、テレーズ・ギーゼ、ステファニ・ブイ、ルム・イアコベスコ、ルネ・ブーロックなど。

1973年製作/フランス
原題:Lacombe Lucien
配給:20世紀フォックス
劇場公開日:1975年5月3日

ストーリー

連合軍がフランスのノルマンディ上陸作戦を開始した一九四四年六月。フランス西部の農家の一人息子で十七歳のルシアン(P・ブレーズ)は、フィジアックの町の病院で掃除夫として働いていたが、休暇で家に帰ってみると、家は人手に渡っていた。さらに、父はドイツ軍の捕虜となり、母は村長の情婦になっていた。彼はレジスタンスに加わろうと思い、その隊長を訪ねたが拒絶された。ルシアンは再び病院に戻るためにフィジアックに向かった。その夜、ルシアンがホテルの前でぼんやり立っていると、一人の男に声をかけられた。そこはナチのゲシュタポの本部でその手先きとなったフランス人たちが集まる場所だった。酒を飲まされたルシアンは尋問にひっかかり、村の模様をしゃべってしまった。レジスタンスの隊長である教師が逮捕されたのはその翌日だった。ルシアンは彼らの華やかな生活に憧れ、その仲間に加わった。ルシアンはゲシュタポの手先きとして、レジスタンスの地下運動にたずさわる人々の逮捕や、財産没収に参加した。ユダヤ人の洋服屋オルン(H・ローウェンアドラー)の娘フランス(A・クレマン)と知り合ったのはそんなときだった。ある夜、ルシアンはゲシュタポの本部で催されたパーティーにフランスを連れていった。その帰り道、二人は結ばれた。だがオルンはフランスとルシアンの関係を認めず、ルシアンを中傷するために、ゲシュタポの本部を訪れたが、逆にユダヤ人であることがばれ、ドイツへ送られてしまった。連合軍が徐々にフランス領土をナチの手から解放していった。そんなある日、ナチは、レジスタンスのゲシュタポ本部急襲に対して報復検挙を開始した。ルシアンもそれに協力したが、その中にはフランスと彼女の祖母ベラ(T・ギース)もふくまれていた。ルシアンには二人を見殺しにする他なかったが、ふとしたことでナチの卑劣さを見抜き、翻然と我にかえった。彼はフランスと祖母を連れてスペインへ脱走する決意を固めた。国境に近い山間の空家にたどりついた三人は、そこで様子をみることにした。それはかつて体験したことのなかった安らかな日々だった。山々には花が咲き乱れ、ルシアンとフランスはその中で子供のように遊び廻った。それは生まれて初めて体験する楽しさだった。だがそんな楽しい日々も束の間だった。ルシアンとフランスと祖母ベラの三人はやがてゲシュタポに捕えられ、処刑されてしまう。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第47回 アカデミー賞(1975年)

ノミネート

外国語映画賞  

第32回 ゴールデングローブ賞(1975年)

ノミネート

最優秀外国語映画賞  
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映画レビュー

3.5音楽がジャンゴ・ラインハルト!それだけで価値がある。

2021年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 レジスタンス選定を行ってる小学校教師に断られ、いきなりゲシュタポに売ったルシアン。自転車に乗ってる彼のBGMはサンタルチアだ・・・そしてヒロインはベートーベンの“月光”がテーマ曲であるかのよう。

 フランソワという少女と知り合ってからは彼女のために生きるルシアン。父親をユダヤ人、共産主義者と罵倒しながらも彼女を守りたい一心で親子をスペインに逃がそうと努力したりする。結局はレジスタンスの法廷で死刑となったが、何を考えていたんだろうなぁ~

 なんとなくわかるけど、ゲシュタポに入る序盤の心理描写がイマイチなため全く感情移入できないのが難点。女もちょっとは抵抗してほしいところだし、父親だって「悪い奴ではない」と信じすぎるってのが・・・また「フランス人なのにドイツ人の手下になりやがって」という言葉の反証材料がほしいところだ。

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kossy

4.5ナチスの手先になったフランス少年の最初で最後の本気の恋

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

深い感動に包まれた作品でも、いつの間にか関心も興味も持たれなくなり誰からも話題に上がらない映画は数多くあります。常に今生きている人間や社会の姿を描くことが映画の宿命であり使命であり魅力だから当然なことですが、自分だけはいつまでも大切にしていたいと思うのもまた人間の心情です。このルイ・マル中期を代表する「ルシアンの青春」は、私にとってそんな映画の中の一本になります。

レジスタンスではなく、ゲシュタポの手先になった17歳の幼く浅薄なルシアンの初めての恋の相手がユダヤ人の女性。マル監督は情感を排した冷静で客観的な視点で、少年の愚かさと一途さを描きます。それまで受動的なルシアンが本気の恋で変わり、男として成長することで追い詰められていく。その哀れさ。ピエール・ブレーズとオーロール・クレマンが、逃げ場のない恋人たちを素朴に演じます。ラストのスペイン国境近くの山中で過ごす穏やかで幸せな安らぎが、何ともいえない世界観を表現します。ドキュメンタリーで映画デビューしたマル監督の最良と云える映像美ではないでしょうか。公開当時に荻昌弘氏がこの場面をドビッシーの「牧神の午後への前奏曲」のイメージで例えていたのが記憶に残っています。

映画大学の授業でルイ・マル教授による映画理論の講義を受けているかの堅苦しさもありますが、味わい深い主題と表現の厳しさに、私は感動しました。

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Gustav
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