渚にて

劇場公開日:

解説

ネヴィル・シュートの原作に基づき、「手錠のままの脱獄」のスタンリー・クレイマーが製作・脚本した人類の未来の物語。脚色はジョン・パクストン。撮影担当は、ジュゼッペ・ロトゥンノ。音楽はアーネスト・ゴールド。出演するのは「勝利なき戦い」のグレゴリー・ペック、フレッド・アステア、エヴァ・ガードナー、アンソニー・パーキンスなど。製作スタンリー・クレイマー。

1959年製作/アメリカ
原題:On the Beach
配給:日本ユナイテッド・アーチスツ
劇場公開日:1960年2月10日

ストーリー

1964年。第3次世界大戦の原水爆による戦闘のため、地球上の北半分は絶滅し、死の灰は南半球にも迫っていた。タワーズ艦長(グレゴリー・ペック)指揮の米原子力潜水艦ソーフィッシュ号は、難を逃れてオーストラリアのメルボルンに入港した。オーストラリアの若い海軍士官ピーター(アンソニー・パーキンス)は、妻と赤ん坊を故国に残し、ソーフィッシュ号に同乗して北半球偵察に行くことを命じられた。タワーズ艦長に会ったピーターは、艦長を自宅のパーティに招いた。女友達モイラ(エヴァ・ガードナー)もその席に招かれた。パーティの席上、原子科学者オスボーン(フレッド・アステア)の、原子力戦に関する口論で一同は雰囲気をそがれてしまった。タワーズ艦長はモイラにひかれるものをおぼえ、2人はデイトした。しかし、彼が故国の妻子の話ばかりするのでモイラはいらいらした。ソーフィッシュ号はやがて出航した。到着したサンフランシスコは死の町と化していた。サンディエゴで死滅したはずの町から発信されている無電を調査した乗組員は、それが風のいたずらであることを知った。艦はメルボルンに帰港した。オーストラリアの諸都市も次々と死滅していった。自動車レースが開かれ、自動車狂のオスボーンは大荒れに荒れるコースを乗り切って優勝した。タワーズとモイラは山小屋で一夜を明かした。いよいよ、メルボルンにも最後の時が近づいてきた。街では自殺用の薬が配給された。ピーターは身を切られる思いで妻子を納得させ、薬を与えた。オスボーンは車庫を密閉し、自動車の排気ガスで自殺した。一方、ソーフィッシュ号ではアメリカに帰国することが決定した。タワーズもモイラへの想いを断ち切って艦に乗った。出航を知ったモイラは渚でいつまでも潜水艦を見送った。艦は一路、死の海に向かって進んだ。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第32回 アカデミー賞(1960年)

ノミネート

編集賞 Frederic Knudtson
作曲賞(ドラマ/コメディ) アーネスト・ゴールド

第17回 ゴールデングローブ賞(1960年)

受賞

最優秀作曲賞 アーネスト・ゴールド

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀助演男優賞 フレッド・アステア
最優秀監督賞 スタンリー・クレイマー
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映画レビュー

4.0世界が終わるとしても意外と人は普通に暮らす

2021年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

アポカリプスものだけど、普通に日常が続いている。しかし、いつそれが終焉を迎えるのかわからない緊張感が漂う。主な舞台となる南半球はまだ無事だが、北半球はどうやら滅んでいるらしい。遠い異国の地が滅んでいるといわれても、ピンとこない。
後半、潜水艦で北半球に向かい、着いたのはサンフランシスコ。街が破壊された様子はないが、人がいない。死ぬときは生まれ故郷で死にたいと乗組員の一人が艦を抜け出す。
コカ・コーラのビンの使い方が本当にすごい。コーラは文明の象徴だろうか。人がいなくなってもモールス信号を送り続ける文明の残滓としてのコーラの空き瓶。
世界が終わる時、何をするか。だれもが一度は夢想したことがあるはず。自分の趣味に没頭するのか、穏やかにいつもの日常を過ごすのか。SFならではの壮大な終活だ。

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杉本穂高

0.5ワルチングマチルダとトム・ウェイツ♥

2023年9月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

3.0放射能汚染の地球にて…

2022年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

この映画のDVDジャケットが「エヴァ・ガードナーとグレゴリー・ペックの抱擁場面」だったのと、タイトルが『渚にて』だったので、「二人の恋愛ドラマかな…」などと勝手に思ってレンタルして来たが、観てみたら想定外のSF映画。

なんと、第三次世界大戦によって地球上の北半球は放射能汚染されており、南半球のオーストラリアに人々が地球人の最期を覚悟しながら暮らしている…という物語。

潜水艦には、艦長ドワイト(グレゴリー・ペック)や部下パーカー(アンソニー・パーキンス)、そして科学者ジュリアン(フレッド・アステア)などが乗っている。

サンフランシスコの街が無人であるという風景などを潜望鏡で見たりするが、第三次世界大戦が起こる場面は描かれないので、ジワジワ来る圧迫感という感じ。

オーストラリアでドワイト(グレゴリー・ペック)とモイラ(エヴァ・ガードナー)は愛し合うことになるが、地球の最期が迫ってくる…という物語。

フレッド・アステアは、だいぶ高齢なので、踊りはしないが、科学者でありながらスポーツカーで爆走するなど存在感を見せる。

潜水艦の中での会話…「平和を守るために武器を持とうとする。そして、果てしない原子兵器競争が続く…」という言葉から、あのウルトラセブンの『超兵器R1号』でのモロボシダンのセリフを思い出した。
ダンが「侵略者は超兵器に対してもっと強力な兵器を作りますよ」と言えば、「だったら、もっと強力な兵器を作れば良い」と言われたダンが、「それは血を吐きながら続ける哀しいマラソンですよ」と言う名ゼリフ。

本作が作られた1964年の米ソ冷戦下では、本作のように核戦争後の恐怖を感じていたのかと思ってしまう。
なかなか重たいスタンリー・クレイマー監督作品。

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たいちぃ

4.5核戦争を通して見える反戦への強い意志

2022年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

悲しい

随分昔に観た作品であるが、昨今の不穏な世界情勢報道から、本作が真っ先に頭を過った。

本作は核戦争の末路を描いている。

1964年。第3次世界大戦=核戦争で、地球は徐々に死の灰に覆われていく。最後に残った南半球のオーストラリアにも死の灰が迫り、人類は滅亡の時を迎える。

死期が迫った人々は、苛立ちを見せながらも、最期まで、以前と変わらぬ生活をしていく。街は静まり返っている。暴動も騒乱も起きない。本当の絶望の前では活力は生まれない。

また、本作は、何故、核戦争は起きたのか、誰が起こしたのか等のプロセスについては殆ど触れていない。核戦争の末路に焦点を絞り込むことで、普遍的に核戦争の不条理を浮き彫りにしている。そして、静かに切々と反戦への強い意志を伝えている。

我々は、二度の世界大戦を経験している。
三度目は絶対に起こしてならないという反戦への思いを新たにした意義深い作品だった。

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みかずき
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