めぐりあい(1968)

劇場公開日:

解説

「君が青春のとき」の山田信夫と、「伊豆の踊子(1967)」の思地日出夫が共同でシナリオを執筆、思地日出夫が監督した青春もの。撮影は新人の田島文雄。

1968年製作/91分/日本
原題:Two Hearts in the Rain
配給:東宝
劇場公開日:1968年3月27日

ストーリー

川崎のある自動車工場の組立工である努は、停年を迎える父の代りに一家の家計を支えなければならなかった。弟の宏が大学へ行きたがっていたが、そんな状態では無理な望みで、家中がイライラした空気に包まれていた。ある日、努はベアリング店に勤める典子を知り、その爽やかな印象に強く惹かれた。典子の母は保険の外交員をして細々と暮していたが夫の死後も明るさを失っていなかった。努は自分の誕生日に典子を誘い、工場から借りたダンプカーで夏の海にドライブした。典子はそんな努に可愛らしい貝がらをプレゼントした。二人の間に、愛らしいものが芽生えたのはその時だった。だが、心ゆくまで泳いで岩の上に寝ころんだとき、典子は努のたくましい身体に男を感じ、身体を堅くした。帰途、雨の降り出した中を、二人は無言で運転台に乗った。努も典子を意識し、態度がギコチなかった。そして、典子は一度は努の接吻を拒んだが、いつか唇を重ねていた。家に帰った典子に、母の突然の訃報が待っていた。バスが転落して死んだのだった。一方、努はいよいよ停年になった父のため、一家を背負わねばならず、その重在に気持ちを苛立たせていた。優秀な組立工だった努は、イライラが昂じて大きなミスを犯し、鍛造部に回されてしまった。そこで重労働を強いられているうちに、努は疲れ、いつか生きる意欲を失っていった。遊園地に勤めを変えた典子の励ましも役には立たなかった。二人の交流はそれ以来、途絶えてしまったが典子は、いつか努が自分の許に戻ってくると信じていた。汗と鉄紛にまみれながら、毎日働きつづけている間に、やがて努はこの仕事が車の組立よりも、自分に応しいと思うようになり、気持ちにゆとりを持ちつつあった。ある日曜日の遊園地を努は初めて典子を訪ねてみた。彼女は一生懸命に働いていた。お互いの視線が合ったとき努と典子は大きな感動につつまれ彫像のように動かなかった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.055年昔の青春 横浜ドリームランドと団塊世代の人生のシンクロ

2023年4月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1968年の青春
同年3月公開

黒沢年雄は公開当時24歳
役の江藤努は高卒2年目の20歳ほどにみえます
酒井和歌子は19歳
役の今井典子もそれぐらいでしょう
団塊世代そのものです

55年昔
1968年の日本
高度成長期の真っ只中です
冒頭の通勤風景からもその活気が伝わってきます
努の務める自動車工場の巨大さや忙しさもしかりです

調べて見ると、本作公開翌月の4月はこんな具合です
日本最初の超高層ビルの霞ヶ関ビルが完成
西武百貨店渋谷店が開店
日産、トヨタがどんどん新型車を発売
東名高速も部分開通しました

一方この年はこんな事件が起きてもいました
1月、東大闘争が始まる
同月、佐世保への原子力空母エンタープライズ号寄港反対阻止闘争
3月には成田空港問題でデモ隊と機動隊の大規模な衝突
10月には新宿駅が新左翼に扇動され暴徒となった学生達に占拠される暴動事件が起きる

政治とは関係のないところで、このように一般大衆は精一杯生きて、家庭の問題や恋愛で悩み、青春を過ごしていたのです

終盤、典子が勤めている遊園地は横浜ドリームランド
かって横浜の戸塚の丘陵地にありました
当時はディズニーランドは海の向こうの米国にしかない憧れのものです
ドリームランドはそれを模した遊園地で日本の遊園地の中では群を抜いたハイクラスな遊園地でした

開業は1964年、2002年に閉園しました
1947年の団塊世代の最年長なら開園時は17歳の頃、そして閉園は55歳になった時です

この二人はやがて結ばれて子供を産みこの横浜ドリームランドに家族で遊びに何度も来たことでしょう
団塊世代の全盛期をまるごと見守って来た遊園地なのです

遊園地は平和の象徴、繁栄の象徴でもあります
だから監督は、団塊世代の人生の象徴そのものとして、ここをラストシーンのロケ地に選んだのだと思います

さすがに本作公開から34年後に閉園することまでは監督も想像すらしてなかったと思います

それでも公開から55年たった21世紀に団塊世代を代表するような有名人が次々に退場していくニュースが続く中で本作を見ると、横浜ドリームランドと団塊世代の人生のシンクロに恐ろしいほどの感慨があります

人間の人生、世代の移り変わり
そして時代の変革です

そこに単なる青春映画を超えた感慨があるのです
だからこそ日本映画オールタイムベストのリストの一角を占めているのだと思います

美しいカメラの撮影も素晴らしい
何より酒井和歌子の可憐さ
21世紀生まれの若者だって胸が熱くなるはず

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あき240

3.0酒井和歌子

2020年11月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 胸タッチ!さわやかなエッチ・・・てか、やばいでしょ。不良とまではいかないが、ヤンチャな性格の努。「電車止めるぜ!」と言って田村亮の恋人を助けるが、こんなので酔っ払いが退散するんかな。

 ダンプカーでドライブして海水浴。努に男を感じてしまった典子は身を引くが、その後、ダンプの荷台を傾け置いてけぼりにしようとしてキスシーン。家に帰ると、典子の母は事故死。努の父は失業。さらに努は弟とケンカして家を飛び出し、自棄酒買春などとハメをはずし、工場でもミスをして左遷。重く暗くなるかと思っていたら、ようやく立ち直り・・・

 家族の風景などはかなり演技が上手い。黒沢年男が立ち直る描写をもっとわかりやすくすればgood。酒井和歌子が若いのにグラマラス。海のシーンは良かった。

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kossy
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