劇場公開日 1965年6月25日

「【”究極の夫婦愛。”哀しき人生を歩んできた女が、初めて自分を心から愛してくれた男の出征を阻むために行った事。今作は強烈な反戦映画でありつつも、究極の夫婦愛を描いた作品である。】」清作の妻 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”究極の夫婦愛。”哀しき人生を歩んできた女が、初めて自分を心から愛してくれた男の出征を阻むために行った事。今作は強烈な反戦映画でありつつも、究極の夫婦愛を描いた作品である。】

2024年3月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■苦しい家計を支えるため、老人の妾となっていたお兼(若尾文子)。
 老人の突然死を機に、お兼は多額の手切れ金を貰い家族の待つ村へ戻るが、村人たちの彼女を見る目は冷たかった。
 村の模範青年である清作(田村高廣)と出会い、2人は周囲の猛反対を無視して結婚した。
 初めての幸せな暮らしをするお兼。
 しかし、日露戦争が勃発し、清作に召集令状が届く。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・最近、頻繁に昭和三十年代から四十年代の邦画を見る。
 それは、令和のこの時代に配信で見れる昔の邦画は、何処か気品があり、作品としても深く、純粋に面白いからである。
ー でなかったら、配信で公開されないでしょう。-

■それにしても、今作は凄かった。
 若尾文子さんの渾身の演技に魅入られたし、(「青空娘」も面白かったが、芸風が広い方なのですね。)日露戦争開戦時の戦争に対する世相を見事に描いているからである。
 日露戦争に赴く青年たちに”死んで帰ってこい!”などと酔った高齢の村のオジサンが声を掛けたり・・。

■お兼を演じた若尾文子さんの、人々から虐げられつつ生きる姿。
 妾の地位を脱しても、村では歓迎してくれる人は誰もいない孤独な日々。
 そんな中、出会った清作は彼女を色眼鏡では観なかった。
 一人の人間として観てくれた。
 清作も同様で、彼女に心底惚れて行く。

<今作が衝撃なのは、清作が模範兵として、日露戦争に出征して行く姿と怪我をして一時的に戻って来るが再び出征する清作に対し行ったお兼の行動である。
 彼女は留置場に2年入れられるが、出所する。
 家に戻ると、お兼の行動により、盲目になった清作が待っている。
 お兼は”殺して下さい。私は一生も、二生も可愛がって貰ったから。”と清作に詫びるが、清作はお兼の首を閉めつつ、”独りぼっちの人間がどんなに悲しいか。お前が居なかったら、俺は馬鹿な模範兵、世間体を気にする阿呆だった。”と詫び、お兼を強く抱きしめるのである。
 こんな、ハイレベルな恋愛映画を見ると・・。邦画は昔から凄かったのだなあ。
 そして、若尾文子さんの渾身の演技には、素直に参りました、と思った映画である。>

NOBU