劇場公開日 2005年6月18日

「過酷な運命が紡ぐ壮大な人間ドラマ」砂の器 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0過酷な運命が紡ぐ壮大な人間ドラマ

2024年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

知的

かなり大昔に劇場鑑賞した作品だが、今でも鑑賞した時の衝撃ははっきり覚えている。

冒頭シーン。波打ち際に作られた砂の造形物が、波が打ち寄せる度に少しずつ崩れていく様を憂いを込めて描く。作品タイトルとリングしていて、作品世界に観客を誘うプロローグであり、凄い作品を観るんだなという予感がした。

JR蒲田駅近くで発生した殺人事件。犯人に結び付く手がかりは少なく、捜査は難航する。しかし、捜査を担当した二人の刑事は、わずかな手がかりをもとに、執拗に、粘り強く、執念の刑事魂で、犯人に迫っていく。

本作は、単なる犯人捜し物語ではない。壮大な人間ドラマである。

犯人の犯行動機が、あまりにも切な過ぎる。

犯人の子供の頃の回想シーン、差別を受けて父子で日本各地を放浪するシーンが、感動的で美しく、哀しく切ない。日本の美しすぎる四季の風景と、壮大で優美な音楽が相まって、いつ果てるともない放浪を続ける父子の姿に感涙必至。繰り返し挿入される、このシーンが作品の背景色的な役割を担っている。作品の雰囲気を作り出している。

父子がようやく辿り着いた安息の地での出会いが、後の過酷な運命につながっていく・・・。

差別、運命、宿命、生きること、愛すること、栄光、悲劇、等々、様々な要素を巧みに盛り込んでいる。それらの要素について深く考えさせられる作品である。長尺作品であるが、作品世界に入り込んで、この壮大な物語を鑑賞、否、体験することができる。正しく映像体験することができる。

観終わって、場内が明るくなっても、席から離れられなかった。暫く観終わったという充足感と、圧倒的な感動の余韻に浸っていた。

こんな作品を後何本観られるだろうか。

こんな作品に出逢えることを信じて、映画生活を続けていきたい。

みかずき
ぷにゃぷにゃさんのコメント
2024年5月16日

共感ありがとうございます。
劇場でご覧になったことがあるのですね。
それは迫るものがあるでしょうね。
ハンセン病で旅をするのは、本当に過酷だったと思います。
ひどい差別が招いた悲劇に、胸が痛くなります。
名作ですね。

ぷにゃぷにゃ