劇場公開日 2024年4月19日

「美しい映像の中で見る、孤独との向きあい方」異人たち ひなたんくさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0美しい映像の中で見る、孤独との向きあい方

2024年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

まず最初に思ったのが構図が綺麗だなということ。
あの大画面でも素晴らしいバランスで、人が、物が、風景が配置されているように思えた。
そしてロンドンの街はもっとうるさいはずなのに、静かさを強く感じる部分も大きい事。
それが主人公にとっては大切な静けさであることも、映画の中の地下鉄のシーンで感じた。

この映画を映画館で見ることにこだわっていたわけではない。
けれどこの映画を映画館で見たことで感じた風景の美しさや風の音は、
やはり映画の良さを改めて感じる一面であったと思う。

主人公は亡き両親に、ただ同じマンションに住んでいるだけの男に、
自分の中の生きづらさを告げることが出来たけれど。
LGBTの方々を含め、自分の中に「普通」とは違うと感じる部分を持つ人はみな、
どこか生きづらさを感じる局面に出会った時に、こんなふうに感じるのかもしれないという
一例を感じさせてもらった気がする。

この生きづらさに直面して、向き合って、それを自分のものとしていく主人公を見ながら、
どこか自分の中でも明るい道ばかりを歩いてきたわけではない部分を思い返して、
自分で自分の中の孤独やそうした部分と向き合う、いいきっかけになったと思う一作だった。

救いようがない、と言われればそれまでかもしれない。
けれど救いもあった。

日々の繰り返しは、物語のようにハッピーエンドが繰り返されるわけではなくて、
哀しいことも、折り合いがつけられずに澱のように溜まった感情を抱えながらも
幸せと言える今を模索することでもあるのだろうから。

ひなたんく