コラム：韓国の人がぶっちゃける、made in KOREA - 第7回

2011年7月26日更新

韓国が今、本当に求めているのは「少女時代」より「アナログ時代」

日本での支持、ヨーロッパからの関心、アメリカでのラブコールやデモ。K-POPがこれだけ注目を集めるとは、ひと昔前には誰ひとりとして想像もできませんでした。もちろん拒否反応を起こす人や、K-POP市場に問題を提起する人も少なくありませんが、K-POPアイドルに関心を持つ女性が増えていることは事実です。しかし「ああ、誇らしき韓国産アイドル……」ということを、今回のコラムで主張したいわけではありません。こんなことを言うと「おや？」と首をかしげる人もいるでしょうが、実は世界での関心が高まるにつれ、韓国ではK-POPがかげりを見せ始めているのです。

日本でも人気を博している「東方神起」「KARA」「少女時代」「BEAST」「BIGBANG」は、韓国アイドルの氷山の一角です。ほかに何10倍ものグループが活動しており、ここ数年は飽和状態に陥っています。歌のクオリティよりも、ダンスや中毒性を意識した反復メロディの乱立に、飽き飽きしてしまったのです。

そんな今、韓国では「レトロ・ブーム」が注目されています。80年代を感じさせるような、アナログ式音楽へのニーズが爆発的に高まってるのです。時代の動きに敏感だと評判の人気ドラマ作家「ホン姉妹」が手がけた、今期の大ヒットドラマ「最高の愛」の結果が如実に物語っています。主人公が所属するグループ「国宝少女」は、名前こそ「少女時代」を思わせますが、ヘタなダンス、衣装、雰囲気のどれを見ても、90年代後半の人気アイドル「Fin.k.L」にうりふたつ。懐かしい90年代を思わせるアナログ式アイドルは見事にヒットし、ドラマ内で使われた「国宝少女」の音源もなかなかのヒットを記録したそうです。

何よりも韓国女性の望む男性キャラクターの魅力で、ドラマは高視聴率を記録しました。金持ちで、ワガママで、唯我独尊的な性格だけれど、子どものように一途な愛を貫くトク・コジンに、韓国の女性陣が溺れてしまったことは言うまでもありません。8頭身で演技派の中年俳優チャ・スンウォンが見事に演じたコミカルで一途な役どころは、まさに女性ヒット製造機。このキャラクターはしばらくの間、韓国のトレンディドラマに使われることでしょう。

「最高の愛」には、今の韓国が望むさまざまな要素が散りばめられています。音楽のみならず、主人公のファッションもどこかアナログさを感じさせるものだったようです。便利性重視で移り変わりの激しすぎる冷たい時代の中で、人間が本当に心落ち着ける「最高」とは何なのかを感じさせてくれる、コミカルかつ心温まる作品でした。

筆者紹介

がっちゃん。韓国の人。東方神起様様の絶大なる人気に便乗し、持ち前の変態度合いが人様にウケてブログが何だか知らぬうちに物凄い事になってしまったが、（開設1年ちょっとで累計訪問者数3000万？）実際はただの平和主義でマニアックな大学院生。大統領との通訳をしたり、大学の生徒会役員を勤めたりなど、韓国内でもかなり幅広い経歴の持ち主ではあるが、実際は部屋にひきこもってアニメ鑑賞やラジオを聴いてる瞬間が一番心休まる人。東京外大に交換留学してた頃は、貴重な時間を「男はつらいよ」を見ることに全て費やして帰国した人。昭和ヲタク。