リー・チャイルド : ウィキペディア(Wikipedia)

リー・チャイルドLee Child、本名:ジェームズ・D・グラント (James D. Grant) 、1954年10月29日 - )は、イギリスの推理小説家。代表作は、ジャック・リーチャー・シリーズ。

経歴

イングランドのコヴェントリーに生まれた。父親は公務員、兄弟が3人おり、その内の1人の弟、アンドリュー・グラントもスリラー作家である。4歳の時に一家でバーミンガム北西部のハンズワース・ウッドに移り住み、より良い教育環境の中で育った。11歳まで地元の公立小学校に通った後、私立のキング・エドワーズ・スクールに進学。

1974年、シェフィールド大学で法律を学んでいたものの、法曹界に進むつもりはなく、学生時代は劇場のバックステージでアルバイトをしていた。大学卒業後は民放のグラナダ・テレビジョンに就職し、プレゼンテーション・ディレクターとして、イーヴリン・ウォーの『ブライズヘッド再訪』をドラマ化した"Brideshead Revisited" や、"The Jewel in the Crown" 、『第一容疑者』、『心理探偵フィッツ』などの番組の製作に携わった。その他にも、数多くのコマーシャルや物語などを手がけ、40,000時間以上の番組に携わった。グラナダ・テレビには1977年から1995年まで勤め、最後の2年は労働組合の代表を務めた。

リストラに遭い失業し、「エンターテインメントの最もピュアな形」である小説を書こうと作家への転身を決意。1997年、処女作『キリング・フロアー』(原題:Killing Floor )を上梓し、翌1998年の夏にアメリカへ移り住む。

ペンネームの“リー (Lee) ”は、家族がルノーのル・カー (Le Car) の発音を間違えたジョークに由来し、“チャイルド (Child) ”は書店のミステリの書棚でレイモンド・チャンドラー (Chandler) とアガサ・クリスティ (Christie) の間に並べられたいとの意図に由来する。

代表シリーズの主人公であるジャック・リーチャーの名前に“リーチャー (Reacher) ”を選んだ理由は、スーパーでの買い物中に妻が長身の夫に対して"'Hey, if this writing thing doesn't pan out, you could always be a reacher in a supermarket.' ... 'I thought, Reacher — good name.'" (ねえ、もし今度の仕事が上手く行かなかったら、あなた、このスーパーで高いところのものを取る係 (reacher) にでもなればいいわ。思ったんだけど、“リーチャー”っていい名前ね。)と言ったことに由来する。リーチャー・シリーズは一人称で書かれている作品もあれば、三人称で書かれている作品もある。チャイルド自身はシリーズをリベンジの物語としており、グラナダテレビからリストラされた怒りを原動力にしているという。チャイルド自身はイギリス人だが、あえてアメリカ風のスリラー作品を書くように心がけている。

2007年、15人の作家がリレー形式で書き継いだ『ショパンの手稿譜』(原題:The Chopin Manuscript )に参加。同年9月25日から11月13日までアルフレッド・モリーナのナレーションでオーディブルで放送された。

2008年6月30日、同年11月から母校シェフィールド大学の客員教授に就任することが発表された。2009年、52のジャック・リーチャー奨学制度を設立したAlison Flood, Students offered scholarships from fictional crimefighter, Jack Reacher, Guardian

2009年にはアメリカ探偵作家クラブの会長に選任された"People and Publishing: Milestones", Locus, April 2009, p.8。

2012年、ジャック・リーチャー・シリーズ第7作『アウトロー』(原題:One Shot )がトム・クルーズ主演で映画化された。チャイルドもカメオ出演を果たした。

2012年1月、ウェールズのの山岳救助チームに新車購入のために10,000ユーロ(約16,000米ドル)を寄付した。前年に衝突事故により大破しており、自身の兄弟がそのチームの元メンバーだったことから寄付を持ちかけたという。

2020年1月、チャイルドはジャック・リーチャーシリーズの執筆から引退し、弟のアンドリュー・グラントに引き継ぎ、チャイルドという姓でシリーズのさらなる本を書くことを発表した。彼はシリーズ全体をアンドリューに引き継ぐ前に、今後数冊の本をアンドリューと一緒に書く予定。

2022年、Amazon Prime Videoで配信されるドラマシリーズ『ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~』の最終回の最終盤において、リーチャーがダイナ―に入ったところですれ違いざまに声をかける男性客としてカメオ出演している。

1998年にアンソニー賞、1998年と2005年にバリー賞、2005年にネロ・ウルフ賞を受賞した。

私生活

妻ジェーンはニューヨーク出身。

バーミンガムを本拠地とするサッカー・チーム、アストン・ヴィラFCのファンで"Exclusive interview with ace author Child in matchday programme". Aston Villa Football Club. 15 September 2011.、チームの選手の名前を作中で使ったこともあるInterview with Simon Mayo on Radio 2 on 1 September 2014.。

2013年、『デイリー・メール』がチャイルド自身の発言として「執筆中はマリファナでハイになっている、44年間、週に5日は大麻を吸ってきた。」とする発言を引用したが、『アイリッシュ・イグザミナー』や『ポスト・スタンダード』に一部否定するなど釈明した。

作品リスト

ジャック・リーチャー・シリーズ

#邦題原題USA刊行年Japan刊行年月Japan訳者Japan出版社備考
1キリング・フロアー1997年2000年7月小林宏明講談社文庫2022年にドラマ化
2反撃1998年2003年2月
3警鐘1999年2006年2月
4(アメリカでのタイトルはRunning Blind2000年
52001年
62002年
7宿敵2003年2021年8月青木創講談社文庫
8前夜2004年2009年5月小林宏明
9アウトロー2005年2013年1月2012年に映画化
10奪還2006年2022年8月 青木創
11消えた戦友2007年2023年8月2023年にドラマ化
122008年
13葬られた勲章2009年2020年8月青木創講談社文庫
1461時間2010年2016年7月小林宏明
15''2010年
162011年
17最重要容疑者2012年2014年9月小林宏明講談社文庫
18ネバー・ゴー・バック2013年2016年11月2016年に映画化
19パーソナル2014年2018年3月
202015年
212016年
22ミッドナイト・ライン2017年2019年4月青木創講談社文庫
232018年
242019年
25^ 2020年
26^ 2021年
27^ ''2022年
28^ 2023年

^ リー・チャイルドとアンドリュー・チャイルド共著

短篇小説

・No Middle Name(2017) ジャック・リーチャー・シリーズの中編2 作と短編10 作を収録

受賞・ノミネート歴

作品結果
『キリング・フロアー』"Killing Floor"1998年アンソニー賞 新人賞
マカヴィティ賞 新人賞
バリー賞 新人賞
ディリス賞
2000年日本冒険小説協会大賞海外部門
"Running Blind"2001年バリー賞 長編賞
"Without Fail"2002年イアン・フレミング・スチール・ダガー賞
2003年バリー賞 長編賞
ディリス賞
『宿敵』"Persuader"2003年イアン・フレミング・スチール・ダガー賞
2004年ガムシュー賞 最優秀ミステリ賞
『前夜』"The Enemy"2005年バリー賞 長編賞
ディリス賞
ネロ・ウルフ賞
『アウトロー』"One Shot"2006年マカヴィティ賞 長編賞
"The Hard Way"2007年ガムシュー賞 最優秀スリラー賞
『消えた戦友』"Bad Luck and Trouble"2008年アンソニー賞 長編賞
ガムシュー賞 最優秀スリラー賞
|2010年バウチャーコン功労賞
『61時間』"61 Hours"2010年イアン・フレミング・スチール・ダガー賞
|2013年ダイヤモンド・ダガー賞

作品の映像化

出典

外部リンク

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