井上真央 : 密着

2012年11月14日更新

【前編】井上真央、不動の国民的女優に向け踏み出した大いなる一歩

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女優・井上真央にとって、2011年は大いなる飛躍の年となった。NHK連続テレビ小説「おひさま」でヒロイン・須藤陽子を演じ切り、平均視聴率18.8%が物語る通りお茶の間の視線を釘付けに。年末には第62回NHK紅白歌合戦で紅組司会を務め、激動の1年を締めくくる。その約2カ月前になる11月1日、井上の姿は大分県大分市にあった。「おひさま」卒業後、初仕事に選んだ主演映画「綱引いちゃった!」の撮影現場。大分市役所広報課勤務・西川千晶という新たな役どころを得た井上の全身からは、演じる喜びがそこはかとなく放たれていた。映画.comでは1年間にわたりその姿を追いかけ、25歳の井上にこれまでの女優生活、そしてこれからについて語ってもらった。(取材・文/編集部 写真/本城典子、編集部)

連続ドラマ初主演が「花より男子」(05)ならば、映画初主演も「花より男子ファイナル」(08)。牧野つくしという当たり役を得た井上だが、それはその後のさらなる快進撃の“序章”にすぎなかった。「おひさま」の陽子は、それほどまでに井上の持つ瑞々しいイメージと寸分の違いもなく、多くの人に受け入れられ愛された。井上自身も「『おひさま』にかかわれたことは、本当に大きかったです。あの作品があったからこそ出会うことができた人やお仕事がありましたから。自分にとって、ひとつ大きな分岐点になりましたね」と明かしている。

紅白の司会後、活動の範囲は女優業にとどまらず、「証言ドキュメント 永遠に咲け なでしこジャパン 日本女子サッカーの30年」「NNNドキュメント'12『戦場に咲いた小さな花』-山本美香という生き方-」ではナレーションを務め、「輝く女『井上真央』」では10日間のアフリカロケを敢行した。TBS系「情熱大陸」では「井上真央が撮る小田和正」と題し、ディレクターに初挑戦。そんな中でも、7月クールで放送された主演ドラマ「トッカン 特別国税徴収官」で演出を手がける水田伸生監督との初タッグ作「綱引いちゃった!」では人情喜劇の世界に身を浸し、新境地を開拓した。

大分プレミア前に大ヒット祈願大分プレミア前に大ヒット祈願[拡大画像]

今作の出演オファーのきっかけとなったのは、10年6月にまでさかのぼる。竹野内豊主演作「太平洋の奇跡」の撮影が行われたタイ王国ラヨンで、日本テレビの飯沼伸之プロデューサーが井上の演技に強く引き込まれたこともひとつの要因となっている。その理由を、「コメディって芝居の幅が広くないとできない。高い技術がないと笑うものも笑えなくなる。そのうえ、主役として真ん中に立てる人材は限られているし、ターゲットの年齢層に合う女優は井上さん以外にいない」と語っていた。

井上はまったく知らなかったそうで、「そうなんですか? (タイの猛暑に耐えられる)体力がこれだけあれば、綱を引けると思ったのかもしれませんね」と笑う。そして、「面白いですよね。そういう風に見ていてくれる方がいらっしゃるんですから。女優というお仕事って、自分が『お芝居をしたい』『こういう作品がやりたい』と思っても、できるかというとそうではないですよね。そうやって純粋にお芝居を見て声をかけてくれるのは、うれしいことですね」とはにかんでみせた。女優の仕事を「本当に不思議なお仕事」と話す姿は、どこまでも自然体。「いろんなお仕事が重なったりすると、モンペをはいていると思ったら公務員になったり、ドレスを着て皆さんの前に出ることもあれば、一歩も家を出ずにずっと台本を読んでいることもある。つくづく面白い職業だなあと思います」

2011年11月、大分での撮影現場風景2011年11月、大分での撮影現場風景[拡大画像]

井上にとっては、銀幕デビューから10本目となった今作だが「自分のことなのに知りませんでした(笑)。記念すべき10本目だったんですね!」と満面の笑みを浮かべる。「おひさま」で“太陽の陽子”を演じた後だけに、「相当濃い作品じゃないと陽子役は抜けきらないと思っていたので、このタイミングでガラッと趣の変わったコメディでうれしかったです」とクランクイン前にコメントを残していることからも、今作にかける並々ならぬ意気込みがうかがえる。

舞妓 Haaaan!!!」「なくもんか」の水田監督の最新作となる「綱引いちゃった!」は、実在した綱引きチームを題材にした人情喜劇。井上扮する千晶は、市のPRに躍起になった市長に女子綱引きチーム結成を厳命されてしまう。勤務先の給食センターが廃止の危機にある母の容子とその同僚たちを誘ったものの、メンバー不足から自らもチーム入りせざるをえず、さらにはキャプテンまで押し付けられてしまう。最初はバラバラだったメンバーたちだが、それぞれの事情を抱えながらも過酷な練習に取り組み、徐々にまとまっていく。

女子綱引きチームの存在がストーリーの軸を担うだけに、共演陣も豪華な顔ぶれになった。井上と母娘を演じる松坂慶子をはじめ、浅茅陽子西田尚美ソニン渡辺直美犬山イヌコ中鉢明子と、大ベテランから今作で銀幕デビューを飾る女優までが、ずらり勢ぞろい。誰もが綱引きを「運動会でするもの」という認識でオファーを受けたため、撮影に際してのトレーニングは過酷をきわめた。

10月20日、第25回東京国際映画祭の グリーンカーペットにて10月20日、第25回東京国際映画祭の
グリーンカーペットにて
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「今回は、お芝居をしている感覚よりも、リアルに綱引きをしている姿を撮られたという感覚が強いですね。何も知らない段階から綱引きをしなければならなくなり、大会を目指して……という過程が、私たちとまったく一緒だったんです。純粋に綱引きに向き合って四苦八苦したり、成長している姿を水田監督がひとりひとりを見ながら面白さを引き出してくださった感じです。ある意味では、ドキュメンタリーのような感じでしたね」

そう話す井上の表情はどこか誇らしげであり、女優陣が撮影中も自主練習に明け暮れ満身創痍の状態で無事にクランクアップを迎えられた喜びをかみ締めている様子だ。また、子どもの頃からあこがれてきた松坂との共演が実現したことにも感慨を抱いているようで、「小さい頃から『こんなにキレイな人が、この世にいるのか』というくらい、すごく憧れて見ていたんですよ。その慶子さんと共演できてうれしかったのですが、まさか一緒に綱引きをすることになるとは思っていませんでしたね(笑)。でも、慶子さんのTシャツにジャージ姿とか、ねじり鉢巻き姿を間近で見られて得をした気分でした」と述懐。さらに、「(松坂が出演した)『蒲田行進曲』が大好きなんですよ。今回の作品のあるシーンで風間杜夫さんと慶子さんが共演しているのですが、『おお、すごい!』と思っちゃいました。慶子さんも『あれ以来なのよ、一緒に演じるのは』とおっしゃっていました。『おひさま』の樋口可南子さんもそうですが、キャリアを重ねてきた女優さんには生き方が出ますよね。生き方や考え方がお芝居に反映されるんだなあ……と思って、素敵な女性に出会えたという気持ちになりました」と目を輝かせる。

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次回更新分へ続く
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