リリアン・ギッシュ : ウィキペディア(Wikipedia)

リリアン・ギッシュ(、1893年10月14日 - 1993年2月27日)は、アメリカ合衆国の女優、映画監督である。サイレント映画時代を代表する映画スターであり、映画女優としてのキャリアは75年間に及ぶ。D・W・グリフィス監督作品で清純可憐な役柄を演じたことで知られ、「アメリカ映画のファーストレディ(The first Lady of American cinema)」と呼ばれた。

生涯

リリアンの母方の先祖は第12代米国大統領ザカリー・テーラー(イングランド系アメリカ人)。父方の先祖はフランス系出自との説もあったが、近年の伝記では、ドイツのライン川付近のザール地方のヴォルファースヴァイラーにいたフランス系の家系で、当地からアメリカに移民してきたことが指摘されている(ドイツ系アメリカ人およびフランス系アメリカ人)。

母親が女優だった縁で、5歳から舞台に立っていた。妹のドロシーも女優。友人だったメアリー・ピックフォードを訪ねてバイオグラフ社を訪れた際、彼女にD・W・グリフィスを紹介され、母と妹と共に映画に出ることになった。その後もグリフィスとコンビを組み、サイレント映画を代表する大作『國民の創生』や超大作『イントレランス』に出演した。D・W・グリフィスに対して、リリアンは一生敬愛の念を持っていた。

1919年の『散り行く花』では、幸薄い少女ルーシーを演じる。この作品により映画は第八芸術として世に認められたと言われる。

1920年には、妹のドロシー・ギッシュが主演の『亭主改造』を監督するも、監督作品はこの一作のみである。なお、ドロシーとは私生活でも大変仲が良く、他の女優ではヘレン・ヘイズなどとも親交が深かった。

1921年の大作『嵐の孤児』を最後にグリフィスの元を離れた後、初期メトロ・ゴールドウィン・メイヤーのスターとして、ヴィクトル・シェストレム監督作品の『真紅の文字』(1926年)や『風』(1928年)に出演。サイレント期を代表する女優として活躍する。

1930年代以降は舞台出演が主になっているが、時折映画にも出演。1987年公開の『八月の鯨』(リンゼイ・アンダーソン監督)では、90歳を超えているとは思えない若々しい容姿で瑞々しい演技を披露した。

1970年には生涯の業績を評価されてアカデミー名誉賞を受賞。また、1984年にはアメリカン・フィルム・インスティチュートから生涯功労賞を受賞している。1999年には、同じくアメリカン・フィルム・インスティチュートが選出した「最も偉大な女優50選」で第17位に選出された。

1993年2月27日に老衰による心不全の為、アメリカニューヨーク州マンハッタンのアパートで死去(99歳没)「99歳映画史を生きた女優・リリアン・ギッシュさん死去」読売新聞1993年3月1日夕刊19面。生涯独身であった。

主な出演作品

映画

公開年 邦題 原題 役名 備考
1912 牧場の春In the Aisles of the Wild 若い娘
1913 母の心The Mothering Heart 若い妻
1914 アッシリアの遠征Judith of Bethulia 若い母親
1915 國民の創生The Birth of a Nation エルシー
清き心Enoch Arden アニー・リー
1916 ダフネと海賊Daphne and the Pirate ダフネ・ラ・トゥール
暴風の後Sold for Marriage マルファ
イントレランスIntolerance: Love's Struggle Throughout the Ages 揺り籠を揺らす女
1918 世界の心Hearts of the World マリー・スティーブンソン
偉大なる愛The Great Love スージー・ブロードプレインズ
人類の春The Greatest Thing in Life ジャネット・ペレ
1919 幸福の谷A Romance of Happy Valley ジユニー・ティンバーレイク
散り行く花Broken Blossoms or The Yellow Man and the Girl ルーシイ
スージーの真心True Heart Susie スージー
大疑問The Greatest Question ネリー・ジャービス
1920 亭主改造Remodeling Her Husband 監督のみ
東への道Way Down East アンナ・ムーア
1921 嵐の孤兒Orphans of the Storm アンリエッタ
1923 ホワイト・シスターThe White Sister アンヂエラ
1924 ロモラRomola ロモラ
1925 ベン・ハーBen Hur 戦車競走シーンの観衆エキストラ(ノンクレジット)
1926 ラ・ボエームLa bohème ミミ
真紅の文字The Scarlet Letter ヘスター
1928 The Wind レティ
1930 白鳥One Romantic Night アレクサンドラ王女
1933 彼の二重生活His Double Life アリス・チャリース
1942 暁の勝利Commandos Strike at Dawn ミセス・ベルゲセン
1946 初恋時代Miss Susie Slagle's スージー・スレイグル
白昼の決闘Duel in the Sun ローラ
1948 ジェニイの肖像Portrait of Jennie マザー・メアリー・オブ・マーシー
1955 蜘蛛の巣The Cobweb ヴィクトリア・インチ
狩人の夜The Night of the Hunter レイチェル・クーパー
1958 私に殺された男Orders to Kill ミセス・サマーズ
1960 許されざる者The Unforgiven マチルダ・ザカリー
1966 歌声は青空高くFollow Me, Boys! ヘティ・ザイベルト
1967 消えた拳銃Warning Shot アリス・ウィロウズ
危険な旅路The Comedians ミセス・スミス
1978 ウエディングA Wedding ネティ
1983 ハンボーンHambone and Hillie ヒリー・ラドクリフ
1986 くたばれ! ハリウッドSweet Liberty セシリア・バージェス
1987 八月の鯨The Whales of August サラ

自伝

  • 『リリアン・ギッシュ自伝 - 映画とグリフィスと私』(リリアン・ギッシュ、アン・ピンチョット著、鈴木圭介訳、筑摩書房・リュミエール叢書、1990.8)
    • The Movies, Mr. Griffith, and Me (with Ann Pinchot) (1969)の翻訳

外部リンク

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