今村夏子 : ウィキペディア(Wikipedia)

今村 夏子(いまむら なつこ、1980年2月20日 - )は、日本の小説家。広島県広島市安佐南区生まれ。大阪市在住。

経歴

広島県内の高校を経て大阪市内の大学を卒業。その後は清掃のアルバイトなどを転転とした。29歳の時、職場で「あした休んでください」といわれ、帰宅途中に突然、小説を書こうと思いつく。そうして書き上げた「あたらしい娘」が2010年、第26回太宰治賞を受賞した。同作を改題した「こちらあみ子」と新作中篇「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』(筑摩書房)で、2011年に第24回三島由紀夫賞受賞筑摩書房 こちらあみ子 / 今村 夏子 著。広島の実家近くで2014年に起きた広島土砂災害では、泥水が実家の周囲に押し寄せ、祖母の墓が流された。「こちらあみ子」には、子どもの頃の郷里の思い出も散りばめ、広島弁もさりげなく登場する。2014年刊の『こちらあみ子』ちくま文庫版に新作「チズさん」が併録されたが、それ以外に作品の発表はなく、半引退状態となっていた。

2016年、西崎憲に声をかけられ、西崎が編集長をつとめる新創刊文芸誌『たべるのがおそい』(書肆侃侃房)で2年ぶりとなる新作「あひる」を発表し、第155回芥川龍之介賞候補に挙がった。同作を収録した短篇集『あひる』で、第5回河合隼雄物語賞受賞。2017年、『星の子』で第157回芥川賞候補、第39回野間文芸新人賞受賞。2019年、『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞。笙野頼子、鹿島田真希、本谷有希子、村田沙耶香に続いて5人目の純文学新人賞三冠芥川賞・三島賞・野間文芸新人賞の3賞。作家となる。2019年度咲くやこの花賞受賞。

2013年に結婚し、大阪市内で夫と娘と3人暮らし。庄野潤三の長女(1947年生れ)は同姓同名の別人。岡山市出身の小川洋子を「神様みたいな人」と敬愛し、「ずっとあんなふうに書いていけたらすてき」と話している。

2020年2月、広島市民賞を受賞。

2022年、「こちらあみ子」が実写映画化映画『こちらあみ子』公式ホームページ

作品リスト

単行本

  • 『こちらあみ子』(2011年1月 筑摩書房 / 2014年6月 ちくま文庫 解説:町田康、穂村弘)
    • 「こちらあみ子」 - 『太宰治賞2010』掲載時「あたらしい娘」から改題
    • 「ピクニック」 - 書き下ろし
    • 「チズさん」(文庫版のみ) - 書き下ろし
  • 『あひる』(2016年11月 書肆侃侃房 / 2019年1月 角川文庫 解説:西崎憲)
    • 「あひる」 - 文学ムック『たべるのがおそい』vol.1
    • 「おばあちゃんの家」 - 書き下ろし
    • 「森の兄妹」 - 書き下ろし
  • 『星の子』(2017年6月 朝日新聞出版 / 2019年12月 朝日文庫)※ 2020年に芦田愛菜主演で映画化。
    • 「星の子」 - 『小説トリッパー』2017年春号
    • 「対談 書くことがない、けれど書く 小川洋子×今村夏子」(文庫版のみ) - 『群像』2018年2月号
  • 『父と私の桜尾通り商店街』(2019年2月 角川書店 / 2022年1月 角川文庫 解説:瀧井朝世)
    • 「白いセーター」 - 文学ムック『たべるのがおそい』vol.3
    • 「ルルちゃん」 - 『文芸カドカワ』2017年12月号
    • 「ひょうたんの精」 - 『文芸カドカワ』2017年10月号
    • 「せとのママの誕生日」 - 『早稲田文学』増刊女性号
    • 「冬の夜」(文庫版のみ) - 『文芸カドカワ』2017年8月号
    • 「モグラハウスの扉」 - 書き下ろし
    • 「父と私の桜尾通り商店街」 - 『文芸カドカワ』2016年9月号
  • 『むらさきのスカートの女』(2019年6月 朝日新聞出版 / 2022年6月 朝日文庫 解説:ルーシー・ノース【今村夏子著『むらさきのスカートの女』文庫解説】英語版翻訳者のルーシー・ノース氏が考える国境を超える魅力
    • 「むらさきのスカートの女」 - 『小説トリッパー』2019年春号
    • 芥川賞受賞記念エッセイ(文庫版のみ)
      • 「むらさきのスカートの女と、私」 - 『文學界』2019年9月号
      • 「今日までのこと」 - 『文藝春秋』2019年9月号
      • 「何とも思わなくなる日」 - 2019年7月22日共同通信配信
      • 「人と接しない仕事」 - 『朝日新聞』2019年7月25日
      • 「ぐるりと回るレストラン」 - 『毎日新聞』2019年8月1日夕刊
      • 「芥川賞に決まって」 - 2019年8月20日付『西日本新聞』ほか
      • 「懐かしの本屋さん訪ねたい」 - 『中国新聞』2019年7月30日
      • 「背中を押してくれた小説」 - 『産経新聞』2019年9月8日
      • 「受賞のことば」
  • 『木になった亜沙』(2020年4月 文藝春秋 / 2023年4月 文春文庫 解説:村田沙耶香)
    • 「木になった亜沙」 - 『文學界』2017年10月号
    • 「的になった七未」 - 『文學界』2020年1月号
    • 「ある夜の思い出」 - 文学ムック『たべるのがおそい』vol.5
    • ボーナスエッセイ(文庫版のみ)
      • 「バイキング」 - 『文學界』2016年9月号
      • 「日記とエッセイ」 - 『文學界』2021年2月号
      • 「日記」 - 『新潮』2021年3月号
  • 『とんこつQ&A』(2022年7月 講談社)
    • 「とんこつQ&A」 - 『群像』2020年7月号
    • 「嘘の道」 - 『群像』2020年10月号
    • 「良夫婦」 - 『群像』2021年7月号
    • 「冷たい大根の煮物」 - 『群像』2021年12月号

アンソロジー収録

  • 「あひる」 - 『文学 2017』(2017年4月 講談社)
    • 初出:『たべるのがおそい』vol.1
  • 「父と私の桜尾通り商店街」 - 『短篇ベストコレクション 現代の小説 2017』(2017年6月 徳間文庫)
    • 初出:『文芸カドカワ』2016年9月号
  • 『パンデミック日記』(2021年6月 新潮社)
    • 初出:「創る人52人の「2020コロナ禍」日記リレー」 - 『新潮』2021年3月号

単行本未収録

小説
  • 「ティラミス」 - 『ちくま』2022年6月号
  • 「三影電機工業株式会社社員寮しらかば」 - 『群像』2024年5月号
  • 「貯金箱」 - 『新潮』2024年5月号
エッセイ
  • 「思い出ステーション」 - 『小説すばる』2011年3月号
  • 「サクランボの家」 - 『群像』2022年9月号

注釈

出典

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/04/08 12:00 UTC (変更履歴
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