トン・ワイ : ウィキペディア(Wikipedia)

トン・ワイ董瑋、スティーブン・トン・ワイ、スティーブン・トン、Stephen Tung Wai、Tung Wei、1954年2月2日 - )は、香港出身の俳優、映画監督、武術指導、アクション監督。本名、董雲瑋。

人物・経歴

中国上海に生まれる。4歳の時に香港に移住

。 京劇女優、映画女優として著名なの主宰する京劇学校「春秋戯劇学校」

に8歳で入門。そこで北派の武術と京劇を学ぶ。同門にはラム・チェンイン(林正英)やチョン・ファ(鐘發)、ジョン・ローン、マン・ホイ(孟海)、シャオ・ホウ(小侯)、ロー・ガーイン(羅家英)、オースティン・ワイ(恵天賜)らがいた

すでに入門時から子役として映画に出演。16歳でスタントマンとして活動を始めた。1973年公開ブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』において「Don’t think. FEEL!(考えるな、感じろ)」と頭をはたかれていたのは少年トン・ワイである。その後もキン・フー(胡金銓)監督の『忠烈図』など多くの映画に出演。

1970年代末からは俳優の他に武術指導としても活動、台湾に渡ってディン・ジョン(丁重)監督作での主演をつとめる。一方、ジョー・チョン(張同祖)の初監督作品を手伝ったことをきっかけに、サモ・ハン・キンポーと共演した『プロジェクトD』(燃えよデブゴン9)をはじめとするジョー・チョン監督作品に多く出演するようになり、その後も長きにわたり監督と武術指導として組むことに繋がった。

79年には香港に戻り、香港のテレビ局TVBと契約。テレビドラマを中心に活動するとともに映画『霊幻百鬼 人嚇鬼』に出演するなどした。1986年にはジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』に武術指導として参加。この頃より徐々に軸足を武術指導へと移すことになってゆく。 その後も、『チャイニーズ・ウォリアーズ』『マカオ極道ブルース』、ウォン・カーウァイ監督の『いますぐ抱きしめたい』などの武術指導を担当。

1989年には『新・霊幻道士 風水捜査篇』で監督デビューを果たし、90年代に入ると『欲望の翼』『キリング・アンド・ロマンス 狂気の愛』(殺人者の童話)、ツイ・ハーク監督の『ブレード/刀』、レスリー・チャンアンディ・ラウ共演の『上海グランド』といったヒット作に携わり、1997年のテディ・チャン監督『ダウンタウン・シャドー』でアクション監督として第17回香港電影金像奨の最優秀動作設計を初受賞した。

組む監督にもよるが、トン・ワイ自身は常にアクションに意味を持たせたいと考えており「人を殴る場面なら、殴る行為の中にその事情を盛り込む。何故彼は人を殴らねばならないか、その心情を強調するんだ」と語っている。 彼の推薦により「香港動作特技演員公會(香港スタントマン協会)」唯一の日本人会員となった

日本のアクション監督谷垣健治によると、トン・ワイは京劇出身者には珍しく宙返りが嫌いで、格好いいだろうとクルクル回ったりすると「何故そこで回るのか、意味なく回らないで」とNGを出すことが多々あったといい 、 ワイヤーアクションにおいても、初動の吊られ感を軽減するためワイヤーと引き手との間にゴムを挟む工夫を取り入れた。ゴムによって遊びができ引くのが先であっても演者が主体的に動け自然な動きに見えるという。以来これは現在のワイヤーワークの基本仕様となった。

1999年公開の『パープルストーム 紫雨風暴』では2度目の金像奨と金馬奨にて動作設計賞をダブル受賞。その後も『アクシデンタル・スパイ』『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』『ヒロイック・デュオ 英雄捜査線』『セブンソード』『墨攻』『ビースト・ストーカー/証人』『孫文の義士団』『レイン・オブ・アサシン』など数々の大作を手掛け、2017年には自身6度目にあたる金像奨の最優秀動作設計をダンテ・ラム監督の『オペレーション・メコン』で単独受賞し、今や中華圏を代表するアクション監督の1人である。

主な作品

監督作品

  • 1989年

 新・霊幻道士 風水捜査篇

  • 1990年

 錯體追擊組合/獵狐

  • 1998年

 ヒットマン日本で発売されたジェット・リー主演のこの映画ソフトの表記では監督の名を「チュン・ウェイ」としているが、本作の監督はトン・ワイである

  • 2001年

 地上最強 EXTREME CHALLENGE

武術指導、アクション監督担当作品

  • 1977年

 紅衣冷血金面人

  • 1978年

 十八羅漢拳

  • 1979年

 鐵首無情追魂令  神腿

  • 1980年

 搏紮

  • 1986年

 雙龍吐珠  男たちの挽歌 英雄本色

  • 1987年

 チャイニーズ・ウォリアーズ 中華戰士  霊幻道士3 キョンシーの七不思議  靈幻先生  マカオ極道ブルース  江湖龍虎門

  • 1988年

 いますぐ抱きしめたい  旺角卡門

  • 1989年

 ワニハンター 專釣大鱷  霊幻道士5 ベビーキョンシー対空飛ぶドラキュラ! 一眉道人

  • 1990年

 欲望の翼  阿飛正傳  アンディ・ラウ/武闘派列伝  再戰江湖

  • 1991年

 蒼き獣(おおかみ)たち 五虎將之決裂  暗黒英雄伝 衝擊天子門生

  • 1992年

 神槍手與咖喱雞  ツイン・ドラゴン 雙龍會

  • 1993年

 アンディ・ラウのスター伝説  天長地久

  • 1994年

 キリング・アンド・ロマンス 狂気の愛 殺手的童話

  • 1995年

 ブレード/刀 

  • 1996年

 ビビアン・スーのロマンシング・ドラゴン 龍在少林  上海グランド  新上海灘

  • 1997年

 kitchen キッチン 我愛廚房  ダウンタウン・シャドー  神偷諜影

  • 1998年

 ヒットマン 殺手之王  ヴァーチャル・シャドー 幻影特攻 幻影特攻  玻璃の城 玻璃之城

  • 1999年

 パープルストーム 紫雨風暴 紫雨風暴

  • 2001年

 アクシデンタル・スパイ 特務迷城

  • 2002年

 プリンセスD 想飛

  • 2003年

 ヘブン・アンド・アース 天地英雄 天地英雄  風雲!格闘王 安娜與武林  ヒロイック・デュオ 英雄捜査線 雙雄

  • 2004年

 ベルベット・レイン 江湖  2046 2046

  • 2005年

 セブンソード 七劍  ウィンター・ソング 如果愛  PROMISE 無極

  • 2006年

 墨攻 墨攻  我要成名  シルク 詭絲

  • 2007年

 詠春 The Legend of WING CHUN 詠春(TVドラマ)

  • 2008年

 花花型警  画皮 あやかしの恋 畫皮  ビースト・ストーカー/証人 証人

  • 2009年

 ムーラン 花木蘭  孫文の義士団 十月圍城  白銀帝國

  • 2010年

 功夫詠春  レイン・オブ・アサシン 劍雨

  • 2012年

 妖魔伝 レザレクション 畫皮II  大魔術師"X"のダブル・トリック 大魔術師

  • 2013年

 楊家将〜烈士七兄弟の伝説〜 忠烈楊家將

  • 2014年

 カンフー・ジャングル 一個人的武林  白髪妖魔伝 白髮魔女傳之明月天國3D

  • 2015年

 三城記 三城記

  • 2016年

 喜樂長安  オペレーション・メコン 湄公河行動

  • 2017年

明月幾時有 九龍不敗

出演作品

  • 1977年

 紅衣冷血金面人  人虎戀  血玉  快刀亂麻斬

  • 1978年

 戚繼光 十八羅漢拳

  • 1979年

 鐵首無情追魂令  清洪幫  神腿  十大弟子  プロジェクトD 醒目仔蠱惑招

  • 1980年

 搏紮

  • 1981年

 皇帝與太監

  • 1984年

 霊幻百鬼 人嚇鬼 人嚇鬼

  • 1985年

 水兒武士

  • 1992年

 ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌 辣手神探  神槍手與咖喱雞

  • 1997年

 女ともだち 自梳

  • 1999年

 わすれな草 半支煙

  • 2001年

 地上最強 EXTREME CHALLENGE

  • 2006年

 我要成名

  • 2009年

  神鎗手

主な受賞

  • 第17回香港電影金像奨 (1998) 最佳動作設計:トン・ワイ『ダウンタウン・シャドー』
  • 第36回金馬奨 (1999) 最佳動作指導:トン・ワイ『パープルストーム 紫雨風暴』
  • 第19回香港電影金像奨 (2000) 最佳動作設計:トン・ワイ『パープルストーム 紫雨風暴』
  • 第21回香港電影金像奨 (2002) 最佳動作設計:トンワイ、成家班『アクシデンタル・スパイ』
  • 第42回金馬奨(2005) 最佳動作設計:ラウ・カーリョン、トン・ワイ、ホン・ヤンヤン『セブンソード』
  • 第29回香港電影金像奨 (2010) 最佳動作設計:トン・ワイ、リー・タッチウ『孫文の義士団』
  • 第34回香港電影金像奨 (2015) 最佳動作設計:ドニー・イェン、トン・ワイ、ユン・ブン、イム・ワー『カンフー・ジャングル』
  • 第36回香港電影金像獎(2017)最佳動作設計 : トン・ワイ『オペレーション・メコン』

出典

関連項目

  • ワイヤーアクション
  • アクション監督

外部リンク

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