「ドラゴン・タトゥーの女」特集:デビッド・フィンチャー×「ドラゴン・タトゥーの女」いま誕生する、映画史上 最も衝撃的な化学融合《ケミストリー》

 ミュージック・ビデオ出身のデビッド・フィンチャー監督といえば、ダークでスタイリッシュな作風で知られる。手に汗握るスリラーとの相性が抜群に良く、初期の作品はすべてこのジャンルに収まる。代表作は、やはり奇怪な連続殺人事件を追うサイコスリラー「セブン」だろう。

 しかし、ある役で有名になった俳優が同じ役柄ばかりオファーされるように、「セブン」があまりにも強烈だったため、フィンチャー監督は作品の選択肢が限られてしまうことになる。それでも、監督は同じスリラーというジャンルのなかでも少しずつ違った題材を描くことで自らのポテンシャルをアピールし、生と死を描くファンタジー映画「ベンジャミ・バトン 数奇な人生」で大きく飛躍。そして、「ソーシャル・ネットワーク」で、ハリウッドを代表する監督の1人となったのだ。

 「ドラゴン・タトゥーの女」は、全世界のミステリー・ファンを驚喜させた大ベストセラーという題材を手に、監督がもっとも得意とするジャンルに復帰した待望の新作だ。「セブン」の世界観と、人間ドラマの成熟した人間描写があいまって、極上のスリラーとなっているのだ。
「ドラゴン・タトゥーの女」のタイトル・シークエンスは、嬉しいことにフィンチャー監督による久々のミュージック・ビデオになっている。トレント・レズナーがカバーしたレッド・ツェッペリンの「移民の歌(Immigrant Song)」(歌はヤー・ヤー・ヤーズのカレンO)に乗せて、フェティシズムに満ちた邪悪な世界が展開する。強烈なタイトル・シークエンスで観客を物語世界に引き込むのは、「セブン」以来。最高のオープニングである。
「ドラゴン・タトゥーの女」では事件解決のプロセスと並行して、ヒロイン、リスベットの心の変化が丁寧に描かれていく。調査員として異常なほどの情報収集能力を持っているものの、社交性がまるでなく、感情表現が苦手な彼女は、ミカエルと仕事をすることで、いつしか恋心を抱いていく。エンディングでリスベットは"失恋"をするわけだが、その描写が美しくも切ない。この場面は、成熟したフィンチャー監督の真骨頂といえるかもしれない。