【第83回ベネチア国際映画祭】ダニー・ボイル「INK」で幕開け、マーティン・マクドナー作品、ヘルツォークがリンチに捧げた新作も話題
2026年9月4日 12:00

ダニー・ボイル監督がイギリスのタブロイド紙、The Sunの黎明期を描いた新作「INK」が、第83回ベネチア国際映画祭のオープニングを飾った。レッドカーペットにはボイル監督を囲んで、主演のジャック・オコネル、ガイ・ピアース、クレア・フォイらが並んだ。
ジェームズ・グラハムの戯曲をもとに、グラハム自身が脚本を担当した本作は、1969年、メディア王ルパート・マードックが「The Sun」を買収し、ラリー・ラムを編集長に抜擢して大々的にリニューアルをおこなう過程を描く。部数を上げることを目的にセンセーショナリズム、面白さを追求したマードックとラムだったが、ある事件をきっかけにふたりの間に亀裂が入る。
パンチの効いた音楽にのったスピーディな展開で、熾烈なメディア競争と、そのなかでラムが徐々にモラルを失っていくさまがスリリングに描かれる。

映画祭開幕2日目には、「スリー・ビルボード」「イニシェリン島の精霊」で評価を高めたマーティン・マクドナー監督の新作「Wild Horse Nine」が披露された。今回の舞台は彼が長年魅せられてきたというイースター島。そこに、あるミッションによりチリのサンチャゴに居たふたりのCIA局員(ジョン・マルコビッチとサム・ロックウェル)がやってくる。サルバトル・アジェンデ大統領による社会主義政権が誕生したばかりの1971年が舞台であり、政治的な背景とバディ・ムービーの要素、さらに島の神秘的な雰囲気が混ざり合った独創的な物語。現地の評価も高く、早くも来年のオスカー候補の1本と囁かれている。

ベルナー・ヘルツォークがルーニーとケイト・マーラ姉妹、オーランド・ブルームを起用した「Bucking Fastard」も、この監督らしいなんともユニークな作品だ。ヘルツォークのオリジナル・ストーリーで、「デビッド・リンチに捧げる」と冒頭に明記された物語は、つねに同時に喋り、同じ男を好きになり、未知の土地を探求して洞窟を一緒に掘り始める姉妹が主役。現代が舞台にも拘らずいつの時代かわからない、まるで夢物語のような寓話的な要素に魅せられる。(佐藤久理子)
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