「スター・ウォーズ」を陰で支えた“もう一人のルーカス”が死去
2026年6月3日 09:00

「スター・ウォーズ」シリーズの原点となった旧3部作の編集を手がけた映画編集者、マーシア・ルーカスさんが、5月27日にがんのため死去した。80歳だった。遺族の発表をもとに、米ハリウッド・リポーターなどが報じている。
マーシアさんは1970年代、当時夫だったジョージ・ルーカス監督の初期作品を編集者として支えた。青春群像劇「アメリカン・グラフィティ」に続き、1977年公開の「スター・ウォーズ」では、ポール・ハーシュ、リチャード・チューとともに編集を担当し、アカデミー賞編集賞を受賞している。「アメリカン・グラフィティ」でも、同じ編集賞の候補に選ばれた。
その手腕は、夫の作品の枠にとどまらなかった。マーシアさんはマーティン・スコセッシ監督とも組み、「アリスの恋」「タクシードライバー」「ニューヨーク・ニューヨーク」といった作品の編集を手がけている。感情の起伏を刻むその編集は作品の評価を左右したとされ、映画界に女性の編集者がまだ少なかった時代に、第一線で腕を振るった先駆者だった。
ルーカス監督との結婚生活は、長くは続かなかった。ふたりは1969年に結婚し、「ジェダイの帰還」が公開された1983年に離婚している。マーシアさんはこの作品を最後に、編集者として第一線に立つことはほとんどなくなった。アカデミー賞に輝いた腕を持ちながら、キャリアの絶頂で映画界の表舞台から退いたことが、その後の長い「過小評価」につながったとも語られている。
そしてこの離婚は、思わぬ形で映画史を動かすことになる。報じられた和解金は約5000万ドル(現在のレートで約80億円)にのぼり、その資金を用意するため、ルーカス監督はルーカスフィルムが抱えていたコンピューターグラフィックス部門を手放した。これを1986年に破格の安値で買い取ったのが、アップルを追われた直後のスティーブ・ジョブズだった。その部門こそ、のちに「トイ・ストーリー」を生むピクサーである。自身が手がけた作品だけでなく、まったく別の映画史の出発点にも、マーシアさんの人生は間接的に結びついていた。
ルーカスフィルムは追悼の声明で、マーシアさんを「映画界における女性の真の先駆者であり、映画史上もっとも影響力のある編集者の一人」と讃えた。
遺族は声明のなかで、その仕事ぶりが「感情的な知性、リズム、そして人間味」にあふれていたと振り返っている。
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