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2025年の中国映画市場を徹底分析! 観客と映画館の関係に変化、「ナタ 魔童の大暴れ」の存在感、日本映画の行方は?【アジア映画コラム】

2026年2月17日 16:00

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「ナタ 魔童の大暴れ」
「ナタ 魔童の大暴れ」
プロデュース&製作;可可豆動画 彩条屋影業

2025年の中国映画市場は、久々に明確な回復曲線を描いた1年として記録されることになるでしょう。年間総興行収入は518.32億元(約1兆730億円)に達し、前年比21.95%増を記録しました。都市部における観客動員数は延べ12.38億人に上り、こちらも前年比22.57%増となっています。

さらに注目すべきは中国国産映画の存在感です。年間国産映画興収は412.93億元(約8548億円)に達し、市場シェアは79.67%を占めました。つまり、中国映画市場は量的回復のみならず、国内作品を中心に再構築されつつあることが数字からも読み取れます。

しかし、2025年の中国市場を単純に「劇場への回帰」として理解するだけでは、その本質は見えてきません。今年起きた変化は、観客の再流入と同時に、市場構造そのものが再編され始めた転換点と見るべきでしょう。

●観客は“戻った”――しかし“映画館との関係”に変化

観客数は直近10年で最高水準に戻りましたが、観客行動は以前と同じではありません。中国国家電影局のデータによれば、一人当たり年間観映画数は2.17回まで低下しています。

つまり観客総数は増えましたが、一人ひとりが映画館へ通う回数は減少しているのです。年間に鑑賞する映画の本数が1回のみの層が半数以上を占める一方、頻繁に映画館へ通うコア観客層は縮小しています。

ここから見えてくるのは、中国の映画館が日常的な娯楽空間から、特別なイベントを体験する場所へと役割を変えつつある現実です。観客は「常に映画を見る」のではなく、「話題作だけを劇場で体験する」方向へ移行しています。

この傾向は中国特有の現象ではなく、配信サービス普及後の世界市場共通の変化でもあります。

●市場を再起動させたのは「ナタ 魔童の大暴れ

2025年の市場を語る上で避けて通れないのが、旧正月最大のヒット作「ナタ 魔童の大暴れ」です。本作は公開直後から爆発的なヒットを記録し、最終的には世界歴代興収トップ5入りを果たしました。

重要なのは興収規模だけではありません。観客の約半数が新規観客、あるいは長期間映画館から離れていた層でした。多くの観客が2018~2019年以来の劇場復帰だったという調査結果もあります。

画像2プロデュース&製作;可可豆動画 彩条屋影業

さらに44%の観客が「この作品をきっかけに他の映画にも関心を持った」と回答しています。つまり本作は単なるヒット作ではなく、市場そのものを再起動させた作品だったのです。

旧正月に生まれた観客回帰の流れは、その後の夏休みや秋の新作へと連鎖し、2025年全体の市場回復を支える土台となりました。

●少数の超大作が市場を牽引する「話題作依存」構造から抜け出せていない

一方で課題も明確です。年間興収は増加しましたが、その大部分は旧正月や夏休みなど大型連休に集中しています。

話題作が存在しない時期には観客動員が急落し、市場の熱気は一気に冷え込みます。つまり中国市場は依然として少数の超大作が市場を牽引する「話題作依存」構造から抜け出せていません。

観客は戻ってきましたが、安定して映画館へ通う習慣が完全に回復したわけではありません。この構造をいかに改善できるかが今後の市場成長の鍵になります。

2025年、興収1億元(約20.7億円)を突破した作品は51本あり、そのうち33本が国産映画でした。

年間制作本数は764本、そのうちドラマ映画が511本を占めています。制作基盤は完全に回復しつつあると言えるでしょう。

中国の観客は現在、ハリウッド型スペクタクルだけでなく、自国の文化や社会を扱う作品に強く反応しています。市場はすでに国産コンテンツ主導型へ移行したと言えます。

2025年、新たに2219スクリーンが増設され、全国スクリーン数は9万3187に達しました。

さらに農村地域での公益上映は年間801万回行われ、観客数は約3.94億人に上ります。映画は都市部の娯楽に留まらず、文化普及の手段としても機能しています。

●北米市場との違いは?日本映画はアニメ作品の存在感が際立つ

北米市場と比較すると、中国市場の回復速度は顕著です。2025年時点で市場規模は2019年の約8割以上まで回復し、前年比でも大きな伸びを示しています。

世界市場の回復がまだ途上にある中、中国市場はすでに次の段階へ進み始めていると言えるでしょう。

2025年、中国では24本の日本映画が公開され、合計興収は16.12億元(約334億円)、観客動員は約4100万人でした。これは2024年の22.8億元(約472億円)、2023年の21.4億元(約443億円)と比べると減少しています。しかし国別では、依然としてアメリカ映画に次ぐ海外映画興収第2位のポジションを維持しています。

特にアニメ作品の存在感が大きく、市場を支えました。

【主なヒット作】
「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」
興収:6.78億元(約140億円)/2025年公開洋画の興収3位、日本映画の中国歴代興収4位を記録
画像3(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)
興収:3.98億元(約82億円)/シリーズ中国興収の歴代最高を更新
画像4(C)2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

過去の成功例である「すずめの戸締まり」(8.07億元/約167億円)や「THE FIRST SLAM DUNK」に続き、日本アニメ作品は依然として中国市場で強いブランド力を持っています。

しかし11月中旬以降、“高市早苗首相の発言”の影響で、12月公開予定だった日本映画はすべて延期となり、2026年に入っても公開再開の見通しが立っていません。

もし関係改善が進まなければ、日本映画が中国で生み出してきた年間約20億元(約414億円)規模の市場が失われる可能性もあります。

さらに重要なのは、興収以上に文化交流への影響です。ここ十数年、日本映画・アニメは中国の若者に日本文化への関心を広げ、旅行や留学など多方面の交流へつながってきました。同時に、中国映画の日本公開も増え、双方の理解が深まっていました。この流れがここで止まることは、極めて残念であり、早期回復が望まれます。

●まとめ:問われているのは“観客をいかに定着させるか” “最大の問い”も残り続ける

2025年の中国映画市場は終着点ではありません。むしろ新しい段階の入り口です。

観客が戻った今、問われるのは観客をいかに定着させるかです。単発ヒットではなく、継続的な観客関係の構築が重要になります。

そして最大の問いは残っています。もし次の爆発的ヒットが現れなかった時、それでも観客は映画館へ戻り続けるのでしょうか。その答えが見えるのは、これから数年後になるでしょう。

(筆者:徐昊辰

執筆者紹介

徐昊辰 (じょ・こうしん)

X(Twitter)

1988年中国・上海生まれ。07年来日、立命館大学卒業。08年から中国のポータルサイトSINA、映画専門誌「看電影」、映画専門Web媒体DeepFocusなどで、日本映画の批評と産業分析を続々発表。2016年から、北京電影学院に論文「ゼロ年代の日本映画~平穏な変革」などを不定期発表。中国最大のSNS、微博(ウェイボー)のフォロワー数は約270万人。WEB番組「活弁シネマ倶楽部」の企画・プロデューサー。2020年から上海国際映画祭・プログラマーに就任、日本映画の選考を担当。2024年「現代中国映画祭」を企画・設立。

X:@xxhhcc



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