「楓」あらすじ・概要・評論まとめ ~スピッツの宇宙(名曲)を映画的に再構築した“世界”が深い余韻を残す~【おすすめの注目映画】
2025年12月18日 09:00

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!
本記事では、「楓」(2025年12月19日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。
(C)2025 映画「楓」製作委員会世代を超えて愛されるスピッツの名曲「楓」を原案に、大切な人を失った男女がたどる切ない運命を描いたラブストーリー。
須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・涼だった。恵の死後、ショックで混乱した亜子は目の前に現れた涼を恵だと思い込み、涼も本当のことを言い出せずにいた。幼なじみの梶野だけが真実を知り、涼を見守っていたが、涼を慕う後輩・日和や亜子の行きつけの店の店長・雄介は違和感を抱く。涼は二重の生活に戸惑いながらも、明るく真っ直ぐな亜子にひかれていく。一方、亜子にもまた、打ち明けられない秘密があった。
福士蒼汰が双子の涼と恵の2役、福原遥が亜子役で主演を務め、宮沢氷魚が梶野役、石井杏奈が日和役、宮近海斗(Travis Japan)が雄介役で共演。「世界の中心で、愛をさけぶ」「窮鼠はチーズの夢を見る」の行定勲監督がメガホンを取っている。
(C)2025 映画「楓」製作委員会人は愛する者に何を求め、見ているのだろうか。その人の本当の心や姿が見えているのだろうか。「愛は盲目」(ウィリアム・シェイクスピアの「ヴェニスの商人」に由来)なる言葉があるが、恋に落ち、愛するあまり客観的な判断が難しくなってしまう状況に陥る時がある。愛を“欲望”と言い換えてもいいかもしれない。その対象は何者なのか。
本作は、世代を超えて愛されるスピッツの心揺さぶる名曲を原案に、インスパイアされて描く男女の再生の物語である。別れにはいろいろな形がある。美しさや楽しかった甘い記憶にすがる一方で、恋愛における別れには、人間の愚かさや身勝手さ、弱さが露呈することがあるだろう。それでは、突然愛する人が亡くなってしまう喪失に直面した時、人はどのように対処しようとするだろうか。
(C)2025 映画「楓」製作委員会髙橋泉によるオリジナル脚本が、世界を見る“視覚”というものを物語の重要な要素に裏設定していることに気づくと、本作の見方がさらに味わい深いものになる。見えているものが現実なのか、それとも自分の望むように世界を見ようとしているだけなのか。これは人それぞれ意識の仕方、見る対象によって捉え方が違ってくる。それが愛する人と一緒に巻き込まれた事故後の世界となればなおさらだろう。
さらに世界を記録する“カメラ”というものも、もうひとつの重要なアイテムとなっている。恵と亜子が最初に出会った高校時代、屋上で空を見上げる亜子をカメラで撮影したのは誰だったのか――。天体観測が趣味だった恵と一緒に新しい星を発見しようとしていた亜子。そんな亜子の想いを受け止めようとする涼の職業はカメラマンである。彼らの想いはやがて、スピッツの作品世界のように宇宙へと広がっていく。
(C)2025 映画「楓」製作委員会映画は“世界”をカメラで撮影し、再構築して人々を感動させることができる媒体であり、総合芸術の一つである。スピッツの宇宙(名曲)を本作は映画というもので捉え直し、愛する人の“声を抱いて”新たな人生を歩いていこうとする男女の葛藤を描いていく。また、21年前に日本中を感動の涙で包み込んだ映画「世界の中心で、愛をさけぶ」を手掛けた行定勲監督が、本作のメガホンをとっていることとも重なり合ってくる。
人によって愛=欲望は非常にあいまいな対象かもしれないが、捉え方や選択、想いの強さによって、いかようにも世界は変わるのだということを気づかせてくれる。
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