舘ひろしが眞栄田郷敦に説く、芝居よりも大事なもの【「港のひかり」インタビュー】
2025年11月25日 19:00

若手随一の実力派・藤井道人監督と、日本を代表する名キャメラマン・木村大作が初タッグを組んだ意欲作「港のひかり」が、全国で公開中だ。今作で7年ぶりに単独主演を務める舘ひろしと、「ゴールデンカムイ」に続き共演を果たした眞栄田郷敦が芝居について、そして今作のテーマのひとつでもある“恩人”について語り合った。(取材・文/大塚史貴、写真/根田拓也)
藤井監督による完全オリジナル脚本の今作は、元ヤクザの“おじさん”と、両親を事故で失い、視力も失ってしまった不遇の少年の十数年間に渡る友情物語。舘が元ヤクザの“おじさん”、眞栄田が“おじさん”と年の差を超えた友情を結ぶ目の見えない少年・幸太の青年期を演じた。
藤井組のスタッフの顔ぶれを見るにつけ、藤井監督と木村が現場を共にしていることが想像し難いと考える映画人は少なくないはずだ。実際に俳優部として現場にいたふたりは、どのような光景を目の当たりにしたのか聞かずにはいられない。



ふたりの表情から、現場がいかに知的好奇心を刺激するものであったかが容易に見て取れる。撮影は23年11~12月に能登半島・富山県で行われたが、クランクアップ直後に起こった能登半島地震の影響で、海が隆起して入船することが難しくなってしまった大沢漁港や、焼失してしまった輪島の観光名所・朝市通りなど、重要なシーンの多くに美しい輪島や登山の情景が収められている。それだけに、撮影でお世話になった人々を激励する意味でも能登でジャパンプレミアを開催し、舘、眞栄田、尾上眞秀らが現地を訪れ、完成を直接報告した意義は非常に大きい。
舘は、藤井監督と「ヤクザと家族 The Family」で仕事をし、「必ずもう一度ご一緒したい」と約束を交わしていたそうで、今作では企画から参加。脚本の内容についても、何度も打ち合わせを重ねてきたという。再び相まみえることになった藤井監督の最大の強味を、舘はどんなところに見出したのか聞いてみたくなった。

今作のキャッチコピーに、「おじさんが僕の世界を照らしてくれた」とある。ふたりにとって、俳優のキャリアの中で自分の世界を照らしてくれた恩人と考えたとき、誰の顔が思い浮かぶだろうか。

本編を観るにつけ献身、見返りを求めない無償の愛がちりばめられており、舘が製作決定時に出したコメント「人の強さとは何か、誰かのために生きるとはどういうことか、かつて親分に教えられたその思いを愚直に守りながら、漁師として孤独に生きようとする男を演じました」という一文に改めて目がいく。必然的に、“かつての親分”からの教えについて、より深掘りして話を聞いてみたくなる。

舘の軽妙洒脱な会話に、眞栄田は目を輝かせながら聞き入っている。それもそのはず、眞栄田は「僕は大人になったら舘ひろしさんみたいな大人になりたいってずっと思っていたので」と明かし、相好を崩す。すかさず、「お芝居はこれ以上、上手くならなくていいから。眞栄田くんには皆の目が釘付けになるような魅力があるんだから、そのままを大事にした方がいいね」と舘が切り返す。

執筆者紹介
大塚史貴 (おおつか・ふみたか)
映画.com編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。2026年2月から映画.com編集長に就任。
Twitter:@com56362672
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