【世界の映画館】酒蔵跡地の建物を改装したユニークなミニシアター「深谷シネマ」
2025年9月1日 18:00

埼玉県深谷市の深谷シネマ(1スクリーン、57席)は、1694年創業の七ツ梅酒蔵跡地の建物を改装したユニークなミニシアターです。
かつて深谷市には3つの映画館がありましたが、1970年代初頭に最後の映画館が閉館して以来、映画館が途絶えていました。そこで映画館の常設を求める有志が、1999年3月に「県北にミニシアターを!市民の会」を立ち上げ、市民からの賛同署名を集めて市と話し合いをし、映画館常設の活動が始まりました。当初は市の文化会館での上映会や、ホール上映、野外上映などを重ね、その間、NPOの申請や深谷市の市街地活性化構想に参加などを通して、常設館の準備を進めたそうです。

そして2002年1月に、深谷市から正式に構想が認定され、深谷市、商工会議所、市民の協力を得て2002年7月に旧さくら銀行跡地を改装して常設館がオープンしました。その後、当初より予定されていた深谷市区画整理事業のため移転が決定。2010年3月をもって銀行跡地での営業を終了し、同年4月より七ツ梅酒造跡地にて新オープンしました。



運営はNPO法人市民シアター・エフが行っており、上映作品は、洋画、邦画、ジャンルを問わず良質の作品を1日5作品上映しています(入替制)。ロードショーから少し時期をずらして、新作を「一般・シニア1300円」と手頃な価格で鑑賞できるのが魅力で、今回取材に応じてくれた深谷シネマ館長の小林俊道さんによると、最近はロードショーも行うハイブリッド型の劇場を目指しているとのことです。


作品のブッキングにおいては、平日の昼の時間帯はシニア層を意識し、同時に映画館というメディアの未来も見据えながら、若年層に観てほしい作品を上映するよう心掛けているとのことですが、取材に伺ったタイミングでは、「104歳、哲代さんのひとり暮らし」を観に来たシニア層と、「片思い世界」を友人と観に来た学生さんや若い人の姿も目立ち、平日の昼間にも関わらず賑わっていました。また、来場者に観たい作品のアンケートを行っており、上位に入った作品をブッキングしています。

コロナ禍以降で最も動員が良かった作品は、ヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」で、シニアの方で「タイトルは忘れたけれど、役所さんが出てる映画を観に来た」という観客もおり、ミニシアター好きだけでなく幅広い層に届いた印象を小林さんは受けたそうです。また、ロードショー上映をした「教皇選挙」も、偶然、フランシスコ教皇の死去と重なったこともあり、満席の回が続いたとのことです。
客層は近隣在住の方が多くを占めていますが、東京や神奈川などの遠方から小旅行がてらに訪れる観客も珍しくないそうです。ちなみに新宿から湘南新宿ラインに乗車すれば、1時間20分程度で深谷に行けます。

映画館と同じ敷地内には、台湾料理店、雑貨屋、カフェ、古本屋、古着ショップなどの店舗があるため、映画鑑賞だけでなく様々な楽しみ方ができそうです。また、敷地内はとても趣があるため映画のロケに使われることも多く、最近だと塚本晋也監督の「ほかげ」や広瀬すず主演の「遠い山なみの光」の撮影が敷地内(50 COFFEE & ROASTERYなど)で行われたそうです。
なお、深谷シネマを運営するNPOが、2025年10月から七ツ梅酒蔵跡地の敷地管理業務を引き継ぐことが決定しており、小林さんは「この場所を残す活動を始めたいです」と今後の抱負を語りました。
NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公で、“日本資本主義の父”である渋沢栄一のお膝元にあるユニークなミニシアターまで、小旅行してみてはいかがでしょうか。

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