ペドロ・コスタが来日、個展「インナーヴィジョンズ」は“白い”美術館を黒く変化させる試み
2025年8月28日 07:00

ポルトガルの映画監督、ペドロ・コスタによる日本最大規模、東京では初となる美術館での個展「総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」が東京都写真美術館で8月28日より開催される。27日、報道向け内覧会が行われ、来日したコスタが会見した。
同展はコスタの映像表現とその背景にある歴史的・社会的文脈に触れることで、「インナーヴィジョンズ」という主題を考察するもの。ポルトガルで暮らすアフリカ系移民の歴史を照らし出した「ホース・マネー」(14)など、コスタ作品において重要な役割を担う、ヴェントゥーラをはじめとする登場人物たちや、彼らが生きる場所に関わる映像作品に加え、東京都写真美術館のコレクションも紹介する。

美術館地下の会場は、光で作られる映像の数々とコスタの“インナーヴィジョン”を歩きながら、(実際には触れられないものの)手探りでその深淵に触れていくような展示、導線となっている。「通常は“白い”美術館という場所を黒く変化させるということで、ある意味何かをクリアにさせ、同時に迷路、ラビリンスに迷い込んでいくような感覚を試みました」と、暗闇で支配された展示室を作った意図を明かす。
映画を主軸にしながら、これまでそのほかの映像作品を展覧会の形で発表してきている。「私自身は自分がフィルムメーカーであると考えています。アーティストでもありますが、この言葉が私は嫌いです。特に現代美術は苦手です」と告白する。「2,30年前から映画というものにかかわり、映画もアートの形だと言えるかもしれません。絵画や彫刻といったもの、芸術と呼ばれるものは死に絶えたかもしれませんが、映画の中にはまだそれを見つけることができるのではと考えています」と語る。

「皆さんがここでご覧になるのは、いわゆるインスタレーションではありません。何かの断片であったり、瞬間を捉えたものです」と説明し、展示の前半には、コスタの「ホース・マネー」で映し出し、また同美術館が所蔵する写真家ジェイコブ・リースがニューヨークの貧困地帯を撮影した作品が並ぶ。「彼の作品を入口に展示するということは、道案内のようなものです。私たちに共通する部分は、小さくささやかな生活を送り、誰にも知られていない人たちの生活を描く。私はそこに魅せられて映画を作ってきたと言えます」と、同展とこれまでのフィルモグラフィーに通底するテーマについて語った。
「ホース・マネー」、「溶岩の家」、短編映画「火の娘たち」 などの映像も用い、映像・写真・音が交錯する展示空間を歩きながら鑑賞する構成となっており、「(鑑賞者の)皆さん自身でご覧になって、映画編集をするようなそんな試みをしてほしい」と呼びかけた。
展覧会のタイトル「インナーヴィジョンズ」は、コスタが10代の頃に出合い、深い影響を受けたスティービー・ワンダーのアルバムと同名であり、また、今回「ホース・マネー」の音楽シーンから構成された新作映像作品も披露される。「近年、人生と仕事の中で、音楽がますます大きな位置を占めるようになりました。自分の中にあるものを外に出して世界と共有する、そういった意味において素晴らしいタイトルになった」と自身と音楽の深いかかわりについて解説。さらに、「スティービー・ワンダーと関係する展示かなと勘違いしてくれる人がいるかもしれない。まったく似ても似つかない展示だけれど、そこに何かしらを見つけて、面白いと思ってくれる方がいるかもしれない、そんな経済効果も考えました」という裏話も明かした。

会期は8月28日~12月7日。会期中には、コスタの代表作「血」「溶岩の家」をはじめとした11プログラムの上映、また、ポルトガルのマルガリーダ・コルデイロとアントニオ・レイスの共同監督作「トラス・オス・モンテス」、イッセー尾形が昭和天皇に扮する「太陽」などコスタが自由に選んだ11本の映画を上映する「ペドロ・コスタ カルト・ブランシュ」、アーティスト・トークやゲストとの対談も行われる予定だ。上映スケジュールなど詳細は公式HP(https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5093.html)で告知する。
そのほか、ドキュメンタリー「ホース・マネー」の特別上映会が、8月31日に東京・ユーロスペースで開催され、コスタ監督がトークを行う。
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