「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」強烈キャラたちのキャスティング秘話 あらすじ・キャスト・トリビア

2023年3月10日 18:00

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3月12日(現地時間:日本時間は13日)に開催される第95回アカデミー賞授賞式。作品賞にノミネートを果たした「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」は、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、衣装デザイン賞、編集賞、作曲賞、歌曲賞と、計10部門(11ノミネート)の候補にあがっています。

映画.comでは、同作の概要&あらすじ、キャスト、トリビアをまとめました。本記事でしっかりと予習を行ってから、興奮必至の授賞式に臨みましょう!


●目次
[概要&あらすじ]
[評価]
[スタッフ&キャスト]
[トリビア1:企画のきっかけは”不安”】]
[トリビア2:ストーリーを深めたポイント]
[トリビア3:ミシェル・ヨーの“転機”になった!]
[トリビア4:強烈キャラのキャスティング秘話]


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【概要&あらすじ】

カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を掛け合わせ、生活に追われるごく普通の中年女性が、マルチバースを行き来し、世界を救う異色のアクションアドベンチャー。奇想天外な設定で話題を呼んだ「スイス・アーミー・マン」の監督コンビのダニエルズ(ダニエル・クワンダニエル・シャイナート)が手がけた。

経営するコインランドリーは破産寸前で、ボケているのに頑固な父ゴンゴン、いつまでも反抗期が終わらない娘ジョイ、優しいだけで頼りない夫ウェイモンドに囲まれ、頭の痛い問題だらけのエヴリン。そんな彼女の前に、突如として「別の宇宙(ユニバース)から来た」というウェイモンドが現れる。

混乱する彼女に、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と、驚きの使命を背負わせるウェイモンド。そんな“別の宇宙の夫”に言われるがまま、ワケも分からずマルチバースに飛び込んだ彼女は、カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、まさかの救世主として覚醒。全人類の命運をかけた壮大な戦いに身を投じる。


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【評価】
・第80回 ゴールデングローブ賞(2023年)/最優秀主演女優賞(ミュージカル/コメディ)、最優秀助演男優賞
・第28回クリティックス・チョイス・アワード/作品賞、助演男優賞、監督賞、脚本賞
・第75回米監督組合賞(DGA)/長編映画部門
・第34回アメリカ製作者組合賞/映画部門:作品賞(Darryl F. Zanuck Award for Outstanding Producer of Theatrical Motion Pictures)
・第29回SAG賞/キャスト賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞
・第38回インディペンデント・スピリット賞/作品賞、監督賞、脚本賞、主演俳優賞、助演俳優賞、新人俳優賞、編集賞


【スタッフ&キャスト】

<スタッフ>
監督・脚本:ダニエル・クワンダニエル・シャイナート
製作:ジョー・ルッソアンソニー・ルッソマイク・ラロッカダニエル・クワンダニエル・シャイナートジョナサン・ワン
製作総指揮:ティム・ヘディントンテレサ・スティール・ペイジトッド・マクラスジョシュ・ラドニックミシェル・ヨー
撮影:ラーキン・サイプル
美術:ジェイソン・キスバーデイ
衣装:シャーリー・クラタ
編集:ポール・ロジャース
音楽:サン・ラックス
音楽監修:ブルース・ギルバート

<キャスト(役名)>

ミシェル・ヨー(エヴリン)
ステファニー・スー(ジョイ・ワン/ジョブ・トゥパキ)
キー・ホイ・クァン(ウェイモンド)
ハリー・シャム・Jr.(チャド)
ジェームズ・ホン(ゴンゴン)
ジェイミー・リー・カーティス(ディアドラ・ボーベアドラ)


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【トリビア1:企画のきっかけは“現代を生きる不安”】

企画が芽生えたのは、2016年頃のこと。ダニエルズは「僕たちが実際に感じた、現代を生きる不安」をきっかけにして、本作の輪郭を描き始めている。その頃のミーティングルームの写真には、壁いっぱいに広がる黒板に、複雑な図が展開。12のストーリーラインが色分けされており、次々と浮かぶアイディアが殴り書きされていたのだ。

クワン「理屈抜きに楽しめる満足度の高い映画でありながら、愛と理解というテーマで制作したいと思った。それだけでも楽しい挑戦になったよ。探り探りではあったけど、とにかく映画のスクリーンでそれを実現したいという気持ちだった」

完成した作品は、ファミリードラマ、SF、哲学などなど、さまざまな要素が混濁したカオスな仕上がり。ダニエルズは「どのような映画なのか説明を求められると、整理がついた今でもうまく答えられない」と話している。


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【トリビア2:ストーリーを深めた「家族との会話」「ADHDの診断」】

脚本開発において、ダニエルズは自分たちが家族と実際に交わした会話を盛り込んでいった。彼らの母親も、ジェネレーションギャップに苦労している……そうした世代間の違いは誰にでも通ずるもの。デジタル時代の到来によって、その違いがさらに大きくなった。
 クワン「エヴリンは僕の母親にどんどん似ていった。慌てふためいていて、いっぱいいっぱいになっている。一度にたくさんのことをしなければならないから、どれにも集中できていないんだ」

初期の設定では、エヴリンは正式に診断されてはいないが「ADHD(注意欠如・多動性障害)を患っており、その症状ゆえに別の世界に入っていける」というアイデアがあった。しかし「ADHDという症状を安易に扱っているのではないか?」と心配になったクワン監督。より深く調べ始めたところ、自分にもADHDの要素があることに気付いたのだ。

セラピストの元に1年通った結果、クワン監督は正式にADHDと診断された。そのおかげで、30代にして自分の脳の仕組みや子ども時代の葛藤を改めて理解できるようになり“自分の母親とエヴリンを新しい視点で見ることができた”という。

クワン監督「ADHDという設定にしたことで、エヴリンを個性的で生き生きとした人物として描くことができた。僕も人生の大半を、いろんなことをやりたいと思いながら、何もできていないと感じながら過ごしてきたから、そこに彼女を重ねたんだ」


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【トリビア3:エヴリン=ミシェル・ヨーの“転機”となったキャラクター】

007 トゥモロー・ネバー・ダイ」のボンドガールに抜擢されて以来、ハリウッドで活躍してきたレジェンド女優ミシェル・ヨー。本作で演じるエヴリンは、盛りだくさんのトラブルを抱えている平凡な主婦であり、多次元世界を行き来する――輝かしいキャリアを邁進してきたミシェル自身ですら「もしも……」と思いを馳せてしまうほどの役どころになったようだ。

クワン監督「僕たちは皆、金曜日の夜はミシェルが泊まっているホテルの部屋に行った。一晩中、ただ飲みながらおしゃべりをしていた。そんなある晩、ミシェルが『もっと前にこの映画に出演していたら、私のキャリアはどう変わっていたかしら』と言ってくれて、とても感動したよ」

そんなミシェルは、ダニエルズを通して、スクリーンに映る自分を“新しい視点”で見ることになったようだ。

ミシェル「若い監督と仕事をするのが好きなの。決まりきった見方で私のことを見ないから。玉ねぎの層を一つ剥がすみたいに、その下に何があるのかを見て、クレイジーな提案をするのよ」


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【トリビア4:強烈キャラのキャスティング秘話 ハリウッドへのメッセージも】

強烈個性のキャラクターたちのキャスティングにも、さまざまな秘話がある。

国税庁の監査官ディアドラ役を務めたのは、「ハロウィン」シリーズでも知られるジェイミー・リー・カーティス。「『ミシェル・ヨー主演の映画に出演してくれないか?』としか言われなかったとしても、私はOKしたわ」と語っており、そのエピソードを補足するように、ミシェルとクワン監督がこんな発言を残している。

ミシェル「ジェイミーがまず私に、『あの子たち(=ダニエルズ)が気に入らなければ、一緒に逃げましょう。駆け落ちするのよ』と言ってくれたの」

クワン監督「基本的にミシェルはとても勇敢だけれど、それでも時々躊躇することがあった。でもジェイミーと一緒のシーンの時は、何でもやるんだよ。『何が起きているのかよく分からないけれど、とにかく私たちは一緒にやるの』と言っていた。美しい光景だったよ」

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エヴリンの娘ジョイ役のステファニー・スーは「マーベラス・ミセス・メイゼル」のシーズン4に出演し、全米映画俳優組合賞アンサンブル演技賞を受賞。「セットアップ ウソつきは恋のはじまり」「シャン・チー テン・リングスの伝説」などにも出演している。シャイナート監督は「僕たちは、彼女のユーモアのセンスや少し変わった魅力を基に、役を書き直した。インスピレーションを与えてくれる存在と出会えたのは、映画監督として、とてもありがたいことだね」とコメント。クワン監督は「彼女はとても多才なんだ。絶対大物になると思う」と付け加えている。

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ウェイモンドを演じたのは、「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」(ショート・ラウンド役)、「グーニーズ」(データ役)で一世を風びしたキー・ホイ・クァン。長らく俳優業を休止していたが、再び“原点”に戻ることを決意。役者復帰と、本作のオーディションのタイミングが運命的に重なり、参加を果たしている。

映画.comのインタビューでは、シャイナート監督のこんな発言が印象的だった。

シャイナート「今回のキャスティングに関しては、ハリウッドに対して『ほら、見たことか!』というような気持ちがあったりするんですよね。例えば、キー・ホイについては『こんなにも素晴らしい才能を持った人を、あなたたちは何十年も放っておいたんだ』と言いたい。彼だけではありません。その他にもさまざまな恩恵をもたらしてくれる才能がある人々を『あなたたち(=ハリウッド)は使ってない』と。そのようなことを、この映画を通じて伝えられていると自負しています。彼らが世界の皆さんに愛されている光景を目の当たりにするのは、とても爽快な気分ですね」


※上記の内容は、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のマスコミ用プレスに掲載された資料などを参考に構成しています。

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