年末年始に読みたい映画の本 話題の原作本、#MeToo、ファスト映画など様々なテーマで編集部が推薦する10冊

2022年12月28日 18:00


「その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い」(新潮社)、「ドキュメンタリーの舞台裏」(文藝春秋)、「女になれない職業 いかにして300本超の映画を監督・制作したか。」(ころから)
「その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い」(新潮社)、「ドキュメンタリーの舞台裏」(文藝春秋)、「女になれない職業 いかにして300本超の映画を監督・制作したか。」(ころから)

話題の映画の原作本、映画監督が執筆した自身の足跡、そして今年注目を集めた“ファスト映画”など、映画.com編集部スタッフがおすすめする映画に関する本を紹介します。


■「その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い」(著・ジョディ・カンターミーガン・トゥーイー、翻訳・古屋美登里/新潮社)

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この本は衝撃的でした。映画スタジオ、ミラマックスの創業者であり、数々のアカデミー賞作品をプロデュースしてきたハーベイ・ワインスタインの度重なるセクハラが暴露されるからです。そもそも、ワインスタイン兄弟(ハーベイと、弟のボブ)は、映画業界のレジェンドです。私たちが若い頃、ミラマックスの新作映画は特別の意味がありました。それは、常に「次のオスカー候補作」だったからです。「パルプ・フィクション」や「イングリッシュ・ペイシェント」「恋におちたシェイクスピア」「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」などなど、忘れられない名作群を次々に放った伝説のプロデューサーの裏の顔がこれでもかってほど暴かれていくのですが、彼を告発しようとするニューヨークタイムズの女性記者の奮闘に興奮します。映画「SHE SAID シー・セッド その名を暴け」と一緒に是非!(駒井尚文


■「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形」(著・稲田豊史/光文社)

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あなたは「タイパ」というワードをご存知ですか? 答えは「タイム・パフォーマンス」。「コスパ」の時間版です。本著は、近年広がる映画・映像の倍速再生視聴をメインに、なぜ映画や漫画などの作品の楽しみ方が「鑑賞」から「消費」に変化したのか、そしてなぜ「タイパ」にこだわる人々が現れたのか、その背景を丹念なヒアリングによって紐解いた労作です。また、製作者の思いも紹介されており、それらを知ることで作品の楽しみ方も広がるはずですので、普段倍速視聴をしている方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。(小山晃弘)


■「狂伝 佐藤泰志-無垢と修羅」(著・中澤雄大/中央公論新社)

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映画本という括りで考えると番外編という立ち位置になるかもしれないが、現在までに6本の映画が製作されるに至った小説家・佐藤泰志という人物をここまで掘り下げてみせた中澤氏の執念深さには頭が下がる思いだ。評伝という表現にも適さない。佐藤が遺した高校時代からの1500枚に及ぶ膨大な手紙類を読み解き、当時の文学賞選考の内実、「海炭市叙景」連載中断の背景、自殺の真相にも迫るうえで親族のみならず、かつての恋人まで実に多くの関係者の声を拾う中澤氏の丁寧な仕事ぶりは、愛情という表現以外には当てはめることができない。608ページに怯むことなかれ。年末年始に一気読破をオススメしたい。(大塚史貴)


■「インディペンデントの栄光 ユーロスペースから世界へ」(著・堀越謙三、編集・高崎俊夫/筑摩書房)

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東京・渋谷のミニシアター・ユーロスペースの設立者である堀越謙三氏が半生を語ったインタビュー集。レオス・カラックスアッバス・キアロスタミらとの映画作り、多くの映画人を輩出し続けている映画美学校、東京藝大大学院映像研究科の設立エピソードが、今だから話せる秘話を交えながら惜しみなく披露されている大変貴重で労作の1冊です。ユーロスペースという名前を少しでも知っている方には面白く読めること間違いありません。(五所光太郎)


■「ドキュメンタリーの舞台裏」(著・大島新/文藝春秋)

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なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川1区」で知られるドキュメンタリー監督の大島新氏が、自身の足跡を振り返りながらドキュメンタリーの魅力と制作の実態をつづった自伝・入門書。フジテレビに新卒で入社してADとして働きながら「ザ・ノンフィクション」で企画を通したり、同社退社後にフリーのディレクターとして「情熱大陸」などに携わったりした番組・作品づくりのメソッドが、切実なお金事情とともにつづられています。


■「ジ・アート・オブ・めめめのくらげ」(著・村上隆/Kaikai Kiki)

「めめめのくらげ」場面写真
「めめめのくらげ」場面写真

現代美術家の村上隆氏が、自身の監督作「めめめのくらげ」を総括した大ボリュームの大型本。関係者インタビューや制作資料はもちろん、公開1週目で早期打ち切りがきまった同作の総製作費を明かすなど、通常のメイキング本には記載されない内容も多く盛りこまれています。一度中止が発表されたパート2の制作も継続中とのことで、テレビアニメ「6HP」8話以降の放送とともに、村上監督の新作を楽しみに待ちたいと思います。(五所光太郎)


■「女になれない職業 いかにして300本超の映画を監督・制作したか。」(著・浜野佐知/ころから)

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初めて見た浜野佐知監督のピンク作品「巨乳DOLL わいせつ飼育」でそのハードな性描写、SF×フェミニズムという独創的な設定に驚き、尾崎翠の夢うつつのような世界観を見事に映像化した「第七官界彷徨 尾崎翠を探して」「こほろぎ嬢」で、浜野監督と本書に興味を持ちました。女一人でピンク映画の世界で闘いぬいた波乱万丈の半生、映画製作にかけるエネルギーに打ちのめされます。浜野監督の人生そのものが映画のよう。(編集部M)


■「こちらあみ子」(著・今村夏子/筑摩書房)

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先に森井勇佑監督の映画を見て、衝撃を受けました。私にとってのあみ子は、子どもの頃に長い間探し求めていた友人のような気もしますが、家族や同級生たちの困惑にも共感します。あみ子のことが理解できなくても、自分と違った人間がいることを認める、不本意な行動があっても悪意として受け取らない“大人”になることを読む人に促させる物語でもあるので、あみ子ワールド未体験の方には映画と併せて読んでほしいです。(編集部M)


■「厄介者のススメ ジョン・ウォーターズの贈る言葉」(著・ジョン・ウォーターズ、翻訳・柳下毅一郎/フィルムアート社)

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カルト映画「ピンク・フラミンゴ」などで知られるジョン・ウォーターズが、アメリカのデザイン学校の卒業式で読んだ祝辞全文を収録した書籍です。“悪趣味の帝王”に加え、最近新たに“人民の変態”との称号も加わったという鬼才監督のスピーチはクリエイティブな仕事を目指す人はもちろん、そうでない人の心にも刺さる至言が盛りだくさん。世の中の価値観はひっくり返るもの――装丁もおしゃれで、プレゼントにピッタリです。(編集部M)


■「ぼくの伯父さん」(著・ジャン=クロード・カリエール、イラスト・ピエール・エテックス、翻訳・小柳帝/アノニマ・スタジオ)

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ジャック・タチの名作で、風変わりなユロ氏を描いた同名映画のノベライズ。のちにルイス・ブニュエル監督作品など名脚本家として知られることになるジャン=クロード・カリエールが、大人になった“僕”の視点から、超モダンな家に住む両親と伯父さん、その愛すべき日常をやさしい文体で綴っていきます。イラストは、タチの盟友だったピエール・エテックス。タチのファンは本書もエテックスの回顧上映(開催中)もお勧めします。(編集部M)

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