東映、日本最大のLEDスタジオを新設 2023年1月から実証実験をスタート
2022年9月30日 04:00
映画会社の東映が、10月1日、東京撮影所に新しくバーチャルプロダクション部を発足し、先端技術による新しい映像制作技術である「バーチャルプロダクション」の実証試験に取り組むことがわかった。
また、東京撮影所の「No.11ステージ」を横30メートル、縦5メートルのLED ウォールを設置した、日本最大のLEDスタジオ(現時点)としてリニューアル。2023年1月から運用開始する予定だ。今後5年間で約20億円を投資。制作する映像作品の制作工程で、LEDスタジオを利用していく。
これにより「先端技術であるバーチャルプロダクション」を含む映像全般のテクニカルフォローができるテクニカルチームの育成、背景用のデジタルアセットの制作ノウハウ、デジタルアセットの蓄積、制作する映像コンテンツの高品質化などを図る。
「バーチャルプロダクション」とは、仮想空間の背景と実物の被写体(俳優や小道具)を同時に撮影し、合成する撮影手法。多くは背景にLEDパネルを設置したもので、背景のLEDパネルに映像やCGIを表示させる。アメリカ、インド、韓国などでは多くのLEDステージが新しく設立され、制作作品数も増えている(「マンダロリアン」「THE BATMAN ザ・バットマン」など)。日本国内では、CMやMVなどで利用されているものの、映画やドラマに使用される例はまだ少ない状況だ。
バーチャルプロダクションが映像製作にもたらす効果は、以下の通り。
1、従来のグリーンバックを使用したクロマキー合成は、ポストプロダクション工程(撮影後の工程)において多大な加工処理を要したが、LEDウォールを使用したバーチャルプロダクション撮影は、合成工程が不要であり、ポストプロダクション工程の大幅な圧縮が可能になる。
2、ロケ地や移動時間、天候に左右されないため、移動等にかかる経費を削減でき、また俳優や監督等スタッフのスケジュールも確保しやすくなる。
3、LEDウォールが照明の代わりを果たすため、環境光を自然に作ることが可能となり、照明セッティングの時間が短縮できる。
4、従来のグリーンバックを使用したクロマキー合成と異なり、LEDウォールに映像が映し出されるため、俳優に対し、演技に没入しやすいより良い芝居環境を提供できる。
5、LEDウォールに映す背景用に制作したデジタルアセットは、次回以降の撮影において活用することができ、またスタジオに現物セットを建込み、撤去する時間が不要なためスタジオの稼働率を向上させる。また廃材等も発生せずESG経営につながる。
6、映画配給会社が自前でLEDスタジオを保有・運用するのは国内初となり、蓄積した新技術自体を活用した企画開発や、今後も日進月歩する映像表現の未来をリードする体制作りが可能となる。