知られざるトリュフハンターの世界に迫る「白いトリュフの宿る森」監督に聞く 交流の深め方、実際の味は?

2022年2月17日 20:00

撮影中の監督たち
撮影中の監督たち

北イタリアのピエモンテ州で、高級食材の白トリュフを採取する老人たちを追ったドキュメンタリー「白いトリュフの宿る森」が、2月18日から公開される。栽培は行われず、どのように、なぜそこに育つのか解明されていない白トリュフを探すトリュフハンターたちの知られざる姿を収めた本作で監督を務めたマイケル・ドウェックグレゴリー・カーショウに、話を聞いた。

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世界で最も希少で高価な食材とされるアルバ産白トリュフ。その名産地である北イタリアのピエモンテ州では、夜になると森に白トリュフを探しにやって来る、まるで妖精のような老人たちがいるという。様々な危険が潜む森の奥深く、彼らは犬とともに、伝統的な方法で白トリュフを探し出す。そして彼らはその場所を、家族や友人にさえも決して明かさない。

君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督が製作総指揮を務めており、ドウェック監督とカーショウ監督は、トリュフハンターと信頼関係を築いたうえで3年間にわたって彼らの貴重な姿を撮影した。

マイケル・ドウェック
マイケル・ドウェック

――本作で密着するトリュフハンターのことはどうやって知りましたか?

マイケル・ドウェック:この題材は偶然見つけました。僕たちは2人ともテクノロジーの外にあるもの、そして自分たちのアイデンティティを保ちながら地元の歴史に関わっている世界に興味を持っていました。僕らは偶然2人共ピエモンテ州に旅をしていて、その場所は現代の世界と違うリズムを刻んでいるような、デジタル化する前のような世界でした。

白トリュフの産地であり、そこでトリュフハンターたちのことを聞きました。秘密結社なのかっていうくらい彼らには秘密があり、真夜中にハンティングに行っている。この白トリュフは養殖できないということにもすごくそそられて、それがこの映画の出発点でした。

グレゴリー・カーショウ
グレゴリー・カーショウ

――自分たちを撮りたいと言われたときのトリュフハンターたちの反応はいかがでしたか?

グレゴリー・カーショウ:まず「撮影したい」と言い出すまでかなり時間をかけています。僕たちの作品作りは、まず撮影前に長いプロセスがあります。その時間でこのコミュニティのことを僕たちが知っていくのですが、コミュニティのなかでもハンターたちのアイデンティティは秘密になっているので、外から来た人には余計に知らせたくないと思っています。

例えば、僕たちがディーラーにトリュフをどこから仕入れているか聞くと、ハンターには会ったことがないって言われました。「真夜中に箱にお金を入れておくと朝にトリュフが入っている」と言われてしまう状況だったので、ハンターたちにたどり着いてコミュニティに入るまでかなり時間をかけています。でも、彼らと会ってからは一緒にコーヒーやワインを飲んで親交を深めていきました。

ドウェック:カメラを取り出すまで3、4カ月はかかっています。僕たちは3週間現地に滞在して、1週間戻ったらまた3週間行くというのを繰り返していました。彼らのもとには必ずお土産を持って行って、ゴルゴンゾーラが好きな人のもとに持っていくと「じゃあ、ワインを飲もう」と誘ってもらうのですが、彼らの家の中に招いてもらうまでにも時間がかりました。ただ、家の中に招いてもらってからは家族のように接してもらいました。

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――トリュフハンターたちの中にはテレビを持っていない人も多いそうですが、彼らは実際に作品を見たのでしょうか。

カーショウ:作品は2年前に完成しましたが、その直後にコロナ禍になってしまって、遅れに遅れて去年の11月にやっと見てもらうことができました。ピエモンテの街に小さな町に映画館があって、関わってくれた皆さんをお招きして上映したのですが、自分たちの世界が大きなスクリーンに映っているのは彼らも感じるものがあったと思います。彼らはデジタルテクノロジーがない生活を送っている方がほとんどですし、コロナもあったのでより胸に迫るものがあったと思います。

僕らは彼らがトリュフハントをする場所に自然保護地域を作りました。彼らがトリュフを採取する森林を守れるよう資金を集めるのですが、そのプロジェクトのアナウンスもその場でしました。

ドウェック:(ワインを見せながら)これはトリュフハンターワインなのですが、映画のワンシーンをラベルに使っています。このワインの収益のほか、映画の写真展も行われて、その収益もプログラムに使用されます。

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――彼らの生活に密着するうえで、禁止されたことはありますか?

カーショウ:彼らには3年間密着しましたが、ハンターたちが本当に秘密にしているトリュフハントの場所を教えてもらえたかは、僕たちもわかっていないです。ハンターは誰もがここは教えないという場所があるからです。それでも家族のような関係になり、親密になれたからこういう映画を撮ることができたので、撮影が終了した今は友人と呼べる関係です。

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――見ていると食欲を刺激されます。実際の白トリュフの香り、味はいかがでしたか?

カーショウ:映画を作っている間にたくさん白トリュフをいただきましたが、特に思い出深いのは最初に食べたトリュフです。ハンターたちと交流した1年目に干ばつがありました。地面が乾燥しているとトリュフは出てこないのですが、やっと雨が降ってから、早朝にあるハンターが犬を連れてトリュフを狩りに行くので僕らもついて行きました。

生産量が少なく単価がとても高いので、トリュフが手に入ったらすぐディーラーに電話すると思ったら、しなかったんです。彼は私たちを家に招待してくれて、暖炉の上に鉄板を置いて、そこに6つの卵焼きを作りました。そこにトリュフを削ってみんなでシュアしました。これが今まで食べたトリュフのなかで一番美味しかったです。僕たちをこのコミュニティに入れてくれる合図でもあったんだと思います。

白いトリュフの宿る森」は2月18日から公開。なお、マイケル・ドウェック監督の写真展は2月16日から4月24日まで、東京・ブリッツ・ギャラリーで開催中。作品の販売収益の一部は、イタリアのトリュフの森を守るための保護プログラムに寄付される。

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