野本梢監督と主演の藤原麻希が共犯関係で撮り上げた「愛のくだらない」

2021年8月19日 14:00


野本梢監督(左)と藤原麻希
野本梢監督(左)と藤原麻希

野本梢監督「愛のくだらない」が、8月27日から9月16日までテアトル新宿で開催される「田辺・弁慶映画祭セレクション2021」で1週間限定上映される。上映を前に、野本監督と主演の藤原麻希が作品に込めた思いや、二人の関係性などについて語った。

愛のくだらない」は、新しい才能を輩出し続けている田辺・弁慶映画祭で、第14回の弁慶グランプリと映画.com賞をダブル受賞した注目作。テレビ局で働く30代のひとりの人間が、忙しさや意地の張り合いにより、仕事でもプライベートでも失敗しながら成長する姿を描いている。「私は渦の底から」「透明花火」などの作品で、“生きづらさ”を感じている人々を独自の視点で描き高い評価を得た野本監督が、自身のリアルな体験を元に撮り上げた渾身作だ。

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脚本も手掛けた野本監督は、「映画を撮ってきて見えてきたものがいろいろあり、自分がいま置かれている状況なども投影した長編を撮りたいと思いました。現時点の総括というか、自分寄りの視点のものを一回描いてみようとした」という。そんな自身を投影した作品の主演は藤原と決めていたのだろうか。「当て書きというと麻希さんのイメージが良くないんですけど、話し方とか、佇まいとかは意識し、麻希さんが道標になってくれたので、ブレずに書き上げることができました」と信頼を寄せている。

野本監督の処女作から多くの作品に出演している藤原は今回の脚本を読み、最初は出演をためらったと明かす。「ちょうど私生活で出産し、やわらかいマシュマロみたいな精神状態になっている頃でした。ほぼ全シーンに主人公の景が出ていて、しかもトゲトゲした役を状況的にも感情的にも演じ切れるのか、有難くもすごく重責を感じたのです。でも、景のリアルな感情がすごく理解できたし、彼氏とのやり取りも身につまされるくらいリアルで、野本監督の思いの詰まった長編ならばと出演を決意した」という。

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強い信頼関係で結ばれている二人の出会いは約10年前、アルバイト先で一緒になるという運命的なものだった。野本監督は「脚本を勉強している頃に出会い、その数か月後にニューシネマワークショップに入って最初に撮る10分の作品に、役者をやっていた麻希さんに出演してもらえたのはラッキーでした。麻希さんに出会っていなければ映画作りを続けていなかったかもしれません」と振り返る。

藤原は「当時から彼女は内に熱い炎みたいなものを持っていました。今回の長編へのオファーは、私に対しての愛情や情熱からではないか」と受け止めている。そして、「今までの短編では、大きな題材の中にある一番近いコアな人間関係しか描いていなかったんですけど、今回は人物として描かれる部分も分厚く、描かれる世界もより広がったので、演じがいがありました。また、共演者が個性のある常連と魅力的な方々ばかりだったので、自然とそこにいることができました」とし、野本組で一緒にやってきた長尾卓磨橋本紗也加根矢涼香笠松七海といった共演者たちとの掛け合いも見どころになっている。

「今回は他のキャストの皆さんも脚本作りと並行してオファーしていきました。書きながら人物が立ち上がってきて、その方に寄せて、その方の部分も取り入れながら書いていきました。書き終わってからオファーしたのは、景の相手役の岡安章介さんと手島実優さんです。お二人が役にバチっとはまった時は感動し、本当にこれでこの話が目の前に現れてくれると思えました」と野本監督。藤原も「お笑いトリオ・ななめ45°の岡安さんは好きでしたが、役者としてやられている姿は見たことがなかったので、お芝居に対しても難しくやらずに、感覚でその場にリアルにいてくださって、本当に愛すべき方でした」と称賛する。

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野本監督は「スタッフも仲間が増えてきて、今回は若いスタッフも加わり、これまで以上に賑やかな現場になりました。最初は自分の中に溜まっていたものをぶつける感じで脚本を書き上げたんですけど、それは結局自分に返ってくるもので、この作品を撮ったことが自分を顧みるきっかけになりました。いろんな人が出てきて、見る人によってどこに感情移入するか、どこにポイントを置いて見るかで捉え方が違ってくる作品」とし、「自分は現場でいっぱいいっぱいになることがあるから、やりたいことは共犯者として麻希さんに予め伝えておいて撮影に臨みました」と共に作り上げたことを強調する。

藤原も「女性の共感は一定数あると思うんですけど、いろんな方がいろんな部分に感情移入できるバリエーション豊かな話なので、男性から見てどうなんだろう、全然共感しない女性もいるのかなと、お客さんの反応がとても気になります。今回は、一生に一度の我が家の記録だというくらいプライベートもすべて捧げました。準備も大変でしたが、追い詰められた状態が役とリンクしたような気がしています。野本監督は普段は穏やかな雰囲気ですが、強い芯を持っていて、好奇心も旺盛です。現場でも言い合える関係で、彼女が10年かけて頑張ってきた軌跡を見てきているので、集大成と言えるような大きなチャレンジを一緒にできて良かった」と述べ、二人の絆の強さを感じさせた。

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なお上映に先立ち、清水崇監督や佐久間宣行氏 (テレビプロデューサー)、天野千尋監督ほか著名人の応援コメントが続々と届いている(https://kudaranai-movie.com/)。また、シンガーソングライター・工藤ちゃんによる主題歌「嘘でもいいから」のミュージックビデオ「映画『愛のくだらない』ver」(https://www.youtube.com/watch?v=gaCJfZRoYO4)も公開された。映画の前日譚を描いた内容で、藤原、岡安らが出演し、野本監督が演出した。

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