林遣都&中川大志、「犬部!」で見つめた動物保護の現実 ふたりで「乗り越えた」撮影を語る

2021年7月23日 10:00

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青森県北里大学獣医学部に実在した動物保護サークルをモデルに描いた「犬部!」が公開中だ。傷つきながらも、動物の命を守ろうと奮闘する若者たちを演じた林遣都中川大志が、動物保護の現実と向き合った撮影について語った。(取材・文/編集部、撮影/根田拓也)

※本記事は「犬部!」の内容に触れています。

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子どもの頃から大の犬好きだった獣医学部生・花井颯太(林)は、目の前の命を救いたいという一途な思いで動物保護活動を続けてきた。そんなある日、心を閉ざした1匹の実験犬を救ったことをきっかけに、同じく犬好きで「不幸な動物をなくすために動物保護センターの所長になる」という目標を持つ同級生・柴崎涼介(中川)らと、動物保護サークル「犬部」を設立することに。仲間と動物たちと青春を駆け抜け、やがてそれぞれの夢へ向かって羽ばたいていく。16年後、獣医師となってからも熱心に保護活動を続けていた花井が逮捕されたという報道を受け、かつての犬部のメンバーたちが再結集するが、そこに柴崎の姿はなかった。

片野ゆか氏の著作「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社刊)を原案に、動物ドキュメンタリーの名手・山田あかねが脚本を執筆。保護犬や保護猫をめぐるリアルな問題や課題を、丁寧にストーリーに織りこんだ。花井のモデルとなったのは、「犬部」を設立した実在の獣医師・太田快作氏。柴崎は、台湾の保健所で殺処分を減らすために尽力した獣医師など複数の人物がモデルとなっている。


――最初にこの物語を知ったときの感想や印象について教えて下さい。

林 実話に基づいたお話ということで、(製作陣が)保護犬についてや、犬部の発足から現在に至るまでのいろいろな資料を用意してくださいました。脚本を先に読んで、原案書籍は後から読みました。こういった素晴らしい活動をしている若者たちがいるというのは、いい素敵な題材だなと思いました。

中川 僕も最初に脚本を読ませていただいて、花井颯太のモデルになった太田快作先生のドキュメンタリー映像も拝見しました。この作品を通して犬部の存在や、動物愛護の歴史、現状を知ったので、初めて目にすることもたくさんありました。

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――今作でも描かれた、動物愛護センターに送られる犬や、獣医学発展のために生体を使った外科実習に使われる動物がいることについての考えを教えてください。

林 動物保護センターの光景などは知らなかったので、ただただ苦しい気持ちになりました。ずっと命のために闘い続けている人たちがいて、ゴールがなくて……。でも、よくなってきていることもたくさんあるので、少しでもそういう人たちの思いが広まればいいなという思いです。

自分は、動物に対してただ好きという気持ちで過ごしていたんですけれど、この映画に出演させていただくことで、初めて少しでも力になれればなという思いを抱き、作品に取り組みました。

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中川 柴崎が保健所や現在の動物保護センターがどういう場所で、どう移り変わってきたのかという部分に実際に入っていくお話でもあるので、(そういった側面を見せる役割を)担っている部分が大きかったです。

自分も犬を飼っているので、役作りは結構キツいだろうなと思っていて……。そこは悩みましたが、わかっていたことだったので。資料や映像を見て、実際の動物保護センターにも行き、ここでどういうふうに何が行われているのかを教えていただきました。

こういった問題を映画にするときは、扱い方が難しいと思うんです。けれど、僕らは「これを見てどうこうしてください」というわけではなく、本当に純粋に、そこで生きていた人たちの姿を、僕らもこの作品に出会うまで知らなかったこういう人たちの存在を、まずは知ってもらえたらいいなという思いで演じました。

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――動物保護や殺処分といったシリアスな社会問題の要素と、青春物語としての爽やかさやエンタメ要素が溶け合った物語でした。役どころの解釈とアプローチの仕方について教えて下さい。

林 僕が現場作品に入る段階から監督や、(今作の企画を)立ち上げたプロデューサーさん、原案者の方が、何年も前からリサーチを重ねて準備をしてくださっていたので、用意してくださった資料ものを見てまずは知るところから始めました。

いざ自分の役をどう作っていくかとなると、いろいろと試行錯誤しまして、撮影前に太田先生にお会いする機会を設けていただきました。具体的に言葉で説明するのが難しいのですが、命を救い続けている人にしかない独特のオーラや、エネルギーのようなものをひしひしと感じて、僕が目指すべきところはこの人柄かなという思いでやっていました。

――中川さんが演じられた柴崎は、優しく、目標が明確で志のあるキャラクターです。そんな彼が志半ばで弱ってしまう様子を演じるのはいかがでしたか?

中川 大きく2つ大事にしていたことがあって、1つは花井颯太という男との関係性です。学生時代も大人になってからもですが、柴崎にとっての花井颯太はどういう存在なのかをすごく大事にしました。本当にお互いタイプが違って、自分にないものを持っているふたりが同じ志を共有して、犬部を立ち上げていくのですが、どこか(柴崎にとって花井は)憧れであり、嫉妬もあるというか。誰よりも側にいて、花井颯太という人物のすごさや力を知っているからこそ、絶対的に敵わない部分があることを柴崎も分かっているところがあるんです。

同じ土俵で競おうということではなく、そこに負けない自分にしかできないことって何だろうとか、自分の目指すべきところ、自分らしさって何だろうと考えさせてくれる存在なのかなと思います。だからこそ、未来を見据えたときにふたりは違う道を選択していくのですが、その関係性は大人になってからも続いていくものなので、そこを大事にしていました。

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もう1つは、動物保護センターに行ってからの柴崎はこの映画のなかではあまり出てこないところでもあるので、そこをどう作っていけるかということです。これが1番の課題でした。自分の手で動物たちを毎日処分するというのはどういうことなのか、想像する以上に少しでも体感として自分のなかに入れていけたらいいなというのはありました。

獣医学部の外科実習のために実験犬たちを手にかけなくてはいけなくなるシーンで、柴崎は「僕はやる。でもこの命を奪ったことを一生忘れない」と言っているのですが、そういう人間だからこそ、柴崎は自分の手で処分した犬のことを1匹残らずすべて覚えていているんだろうという気持ちで演じました。

――初めての本格的な共演ですが、お互いの印象はいかがでしたか? また、台本への意見交換を綿密にされたとのことですが、どのように行われたのでしょうか?

林 最初から年齢とか関係なく、作品や役のことをみんなで共通認識を持ってやっていけるように現場に立つ人だなという印象を受けました。特に今回は(作品内の)時間が一気に経過して描かれない部分も多く、撮影の順番もバラバラだったので、擦り合わせておかないといけないことがたくさんあって。素直にみんなで心を開いて話し合いました。

もちろん、それぞれが愛情を持って自分の役に取り組んでいるんですけれど、客観的に見て、このシーンで何を描きたいのかということをたくさん話をしながら撮影できました。映画を作るパートナーとしても、役のパートナーとしても心強く、同じ方向を向いて大事に一つ一つのシーンを乗り越えてきたという印象が強くて、嬉しかったです。

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中川 本当に大好きな役者さんだったので、こうしてがっつりと共演できるのは楽しみでしたし、嬉しかったです。現場でふたりで話して、監督に(案を)提出したこともあったり、一つ一つ丁寧に時間をかけてやれたのは、本当に贅沢な時間だったなと思います。

林 空いた時間には、(中川と)ふたりで犬の散歩に行きました。動物たちを扱う撮影なので、もちろん上手くいかないこともありますし、それが当たり前だと思ってやらなければいけません。

僕たちが出演している動物と1番近い距離で接していたので、ワンちゃんたちの負担を僕たちしか感じ取れない瞬間もありました。ふたりでそういう(動物と触れ合う)時間を設けていたので、「ちょっとこれ以上粘ってもダメだな」と感じたときには、(中川と)監督に相談しに行ったり。そういう時間を持てたのはよかったです。

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――コロナ禍での撮影でした。これまでの製作と違い難しかった点、青森十和田でのロケについてお聞かせください。

林 撮影前は、映画製作やロケをすることに大変な思いをしていた時期で、本当に青森に行けるのかという状況でもありました。でも、スタッフの方の熱意もありロケを受け入れて下さって、僕たちにはいつもと違う状況を感じさせないような環境を作っていただいて、ひたすら役と作品とワンちゃんのことを考えることに集中できました。作品の内容はとても優しい物語で、毎日動物たちが現場にいて、ただただ幸せな時間だねって話しながら、青春を過ごさせていただいた期間でした。

中川 (コロナ禍の)現場の環境に慣れてきていたところだったので、大変さや難しさはそこまでは感じませんでした。本当に何より、こういう状況のなかでご協力いただいた地元の方々、エキストラとして参加してくださった方々、ワンちゃんを連れてきてくださった方々に感謝していますし、そういったご協力がなければ映画は完成しないんだなと改めて感じました。ご協力いただいたみなさんにも、この映画が届いたらいいなと思っています。

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