ディズニー元CEOボブ・アイガー、Disney+は「人員倍増」 Netflixの功績、人種差別問題にも言及

2020年10月28日 13:30

ボブ・アイガー氏
ボブ・アイガー氏

米ウォルト・ディズニーの元CEOボブ・アイガー氏が「American Family Insurance」主催のイベントに出席。ピクサー買収、スパイダーマンのMCU離脱騒動のエピソードに加え、コロナ禍によるディズニーへの影響、人種差別問題について語ってくれた。(文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

アイガー氏はイサカ大学卒業後、74年にABCに入社し、88年にABCエンターテインメントの社長に就任。ディズニーによるABC買収時、その実力が評価され、99年にディズニー・カンパニー・インターナショナルの社長、05年にはディズニーのCEOに就任。今年2月25日には、CEOを退任し、会長となっている。

アイガー氏は、まず06年のピクサー・アニメーション・スタジオ買収について言及。「2000年代初期にピクサーのアニメが台頭し、ディズニーの事業が不振に陥っていた際、僕らはピクサーの買収を決め、その発表を1時間後にする予定だった。そんな時、アップルのスティーブ・ジョブズから呼び出され、彼の個人的な情報を共有してもらった。彼は当時のピクサー筆頭株主。ディズニーは74億ドル(7696億円=1ドル104円換算)でピクサーを買収する予定だった。それまでピクサーは『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』などを手掛けて絶好調。以前の交渉の時もクリエイティブ面での相違、エゴのぶつかり合いがあった」と明かし、ジョブズ氏との秘話を語ってくれた。

アイガー氏「それでも買収にこぎつけたのに、なぜスティーブは、僕を呼び出したのだろうと思ったんだ。スティーブとの関係は、ディズニーにとって重要で、さらにピクサーのアニメーションはディズニーにとっても最重要案件だった」

「僕とスティーブがピクサーの敷地内を歩いている時、彼から『これから僕が言うことは、僕の妻と医者しか知らないことだ。僕のがんが再発した』と明かされた。スティーブは、その数年前にがんを告白し、その後、職場に戻っていた。僕はがんを完治させたと思っていたから、驚いたんだ。続けて、彼は『僕は君にこの交渉を降りる機会を与えている』と話していた」と振り返った。ジョブズ氏が示唆した「スティーブ・ジョブズが不在となるピクサー」を、ディズニーに検討させてディールを締結。2人の友人関係は、ジョブズ氏が亡くなるまで続いたそうだ。

アイガー氏のトークは、複雑だったスパイダーマンの権利関係の問題に転じた。スパイダーマンのキャラクター版権は元々マーベルのものだったが、映画化権に関してはソニー・ピクチャーズが保有。そのため、サム・ライミ版「スパイダーマン」の頃から、ソニーが配給に関わってきた。15年、両社が提携契約を結んだことで「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」以降、ディズニー作品にもスパイダーマンが登場。だが、その契約更新が金銭面で成立せず、スパイダーマンがMCUを離脱する可能性があった。アイガー氏は、その騒動の解決に一役買っていた。

アイガー氏「『D23 EXPO』(ディズニー最大のファンイベント)を開催した際に、トム・ホランドが『2分の1の魔法』のキャストとして参加していた。トムがこの件に関してファンに何かを訴え、ファンも同様にスパイダーマンが再びMCUに戻ってきて欲しいと願っていた。『D23 EXPO』が終わった頃、トムが僕のチームに連絡先を聞いてきた。そして、僕はトムと話すことができたんだ。彼がこの件に関して気にかけてくれたのは明確だった。彼との電話を終えた際、僕はまずディズニのチームに電話し、次にソニーのトップ、トム・ロスマンにも連絡した。その時『トム・ホランドとファンのために、この問題を解決しなければいけない』と伝えたことで、この問題をようやく解決することができた」

Disney+関連では、ライバル会社Netflixの名をあげて「Netflixから(ディズニーの)コンテンツを戻した点が、とてもうまくいった。3年前であれば、Disney+を設立できていたかはわからない」と説明。「『技術』『コンテンツ』『コンテンツを作る才能を持った人々』『マーケット』が確保できず、あらゆる面で成立しなかったと思う。それに、これまでNetflixが思い切って(さまざまな内容の)作品を配信したり、人々に提供したことによって、仕事のしやすいオンライン市場が既に完成されていた。だからこそ、あの時(=サービス開始日:2019年11月12日)が良い時期に思えて、Disney+を始めることができたんだ」と語っていた。

コロナ禍での影響については「経済的に非常に大きな打撃を受け、スタッフのなかには命を失った方もいる。20万人ほどの従業員から多くの感染者が出てしまった。世界中のディズニーのテーマパークが閉鎖――今ではカリフォルニア州のディズニーランド以外が再開しているものの、大きな影響が生じている。映画館は長期にわたって閉鎖。ライブスポーツは再開されたが(ディズニーの傘下にある)ESPNなどが影響を受け、ディズニー・クルーズも大打撃を食らった。だから、今は効率性を追求しながら、人々が満足するための措置を講じているところだ。ただ残念ながら、事業が閉鎖されたら、スタッフの人数を減らす必要もある」と分析しながらも、希望を感じさせる言葉も残している。

アイガー氏「それほど悪影響を受けず、むしろポジティブに見ることができるのは、Disney+などのデジタル・メディア・ビジネスのおかげだ。プラスに持っていく可能性の高い長期的なビジネスとして、人員を倍増させている。テレビ、ケーブルネットワークもしっかり稼働してくれた。この暗い時期を乗り越えるため、より快活に、きびきびと働かなければいけないと思っている」

さらに「今年は人種間の争いを目にすることが多かった」というアイガー氏。「アメリカでは、人種間の不公正と不平等が、効果的な対処をされずに、長い間存在してきた。我々の会社はその点に関して、これまで良い教訓を学び、多くの異なる方法で改善もしてきた。我々は作品を通しても、多様性を反映してきた。しかし、ディズニーの上層部は、まだまだ多様性を尊重していないと思う。会社の会合で、もし自分だけが有色人種だったら、おそらく快適に感じることはできない。誰もが働きやすくなるためには、上層部の多様性への理解が必要だと思っている」と指摘していた。

(映画.com速報)

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