ポストパンク時代、英国労働者階級の若者の破滅的な生きざまを描く青春映画「アウェイデイズ」監督に聞く

2020年10月23日 14:00

パット・ホールデン監督
パット・ホールデン監督

1998年に発表された同名小説を基に、1979年、ポストパンク時代のマージーサイドで英国フットボール発祥の文化「Football Casual」(カジュアルズ)の黎明期に自らの拠りどころを求めてもがく、労働者階級の若者たちの破滅的な生きざまを描いた青春映画「アウェイデイズ」が公開中だ。パット・ホールデン監督に話を聞いた。

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――この映画を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。

原作であるケビン・サンプソンの小説「Awaydays」の長年のファンだったので、この名作を映画化出来るチャンスが訪れた時には大変に興奮しました。「さらば青春の光」の様なユースカルチャーを描いた映画の大ファンなので、この題材で英国映画史に加わる機会を得た事は夢が叶ったも同然でした。私自身も80年代初頭にはカジュアルズだったので、その文化を理解していましたし、その文化との繋がりもありました。バーケンヘッドを舞台に、圧倒的な暴力と労働者階級の生活様式を背景に、タフで男性的な2人の若者の間のロマンスを描くアイデアは、私を本当に魅了しました。

――とても強弱のある映画だと思います。カジュアルズのシーン、またカーティとエルヴィスのシーンを撮る時に気をつけたことがあれば教えてください。

脚本は、極端でダイナミックなものでした。ある瞬間には全身にエナジーが漲り、危険で、アドレナリンが溢れている。でも、時には労働者階級のおどけた雰囲気に満ちていて、かと思うと次の瞬間には陰惨で繊細な雰囲気になります。基本的には、脚本にも演技にもそこにある感情に素直に反応して、感情の多様性を反映させようとしました。

――監督自身はカジュアルズのことを知っていたのですか?

私が16歳くらいの時にイングランド北部でカジュアルズが流行しはじめました。80年代の“モッズ”のように一般的なムーヴメントで、特に私の友人の一人が信奉者でした。彼らはフルタイムで働いていて、金銭的な余裕があったので、フィラ、ラコステ、タッチーニの服や、高価なスニーカーを買う余裕がありました。私は大学に通っていて余裕がなかったので、彼らは時々ビヨン・ボルグのジャケットを貸してくれました! スタジアムでのファン同士のやり取りには怯えていましたが、一方で魅力も感じていました。

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――音楽が印象的に使われます。時代背景を忠実に描くために使っているのですか? また監督自身が好きな音楽のシーンはどこですか?

当時のカジュアルズは、モッズやスキンヘッズと違って、いわゆる「自分たちの」音楽を持っていませんでした。彼らは服装や自分の属するチームとサッカーへの忠誠心を大事にするシーンでした。ですが、私は劇中の感情や北の工業地帯の背景を伝えるために、ストレートに音楽を使おうと考えました。Joy Division、Magazine、Ultravoxが大好きで、彼らの知的でありながらハードで時代を超越した妥協のない音楽は、この映画の陰鬱で時に荒涼とした雰囲気に本当に合っているように思えました。劇中ではMagazineの”The light pours out of me”に合わせた壮大な決闘シーンがお気に入りです。

――役者を選んだポイントはどんなところですか?

配役の鍵となったのは、主役を二人ペアでキャスティングして、大胆さと化学反応があることを確かめることでした。カーティには冷静沈着さを求め、エルヴィスにはより感情的になってもらいたいと思いました。そして間違いなくリアルであり、リアルを感じられる俳優を求めていました。それ以外のキャストは、非常に熟練した俳優たちで、このプロジェクトに本当に没頭してくれました。イングランド北部出身の役者たちは本当に才能に溢れています。

――原作を読んだ時の印象を教えてください。

原作の「Awaydays」が本当に大好きでした。魂がこめられているのが伝わってきます。ケビン・サンプソンがこの世界を知り尽くしていて、とても情熱を持った男であることが伝わってきました。この物語は現実世界のように繊細で残忍で、面白くて悲劇的で、そこが好きでした。一方である時代のある場所のポートレイトでもあり、カジュアルズたちの複雑な背景を見事に俯瞰し、分析していました。

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――現在撮影中の新作はありますか?

現在は旧ユーゴスラビアの戦争を背景に、民族浄化、強制収容所、サラエボ包囲網、セルビア人の狙撃から生き抜いた陸上の長距離選手で1992年のバルセロナオリンピックで初のオリンピックボスニア代表として出場した女性ミルサダ・ブリッチの伝記映画「FASTER THAN BULLETS」に取り組んでいます。ケビンは「STATION TO STATION」という「アウェイデイズ」と似たテーマで続編とも言える素晴らしいプロジェクトがあります。彼の成功を願っています。

――日本の観客にメッセージをお願いします。

日本は私にとってとても大切な国です。日本人の文化や美意識には、いつも驚かされます。また、私がこれまでに出会った日本人は皆、礼節とマナーの教育を受けてきました。私の映画が日本で上映されることをどれほど誇りに思っているか、言葉にできません。

アウェイデイズ」は、東京・新宿シネマカリテほかで公開中。

(映画.com速報)

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