【インタビュー】短編動画配信サービスQuibiは「物語形態の第3世代」 ハリウッドの大物プロデューサーが語る革新性と勝算

2020年4月14日 15:00

ジェフリー・カッツェンバーグ
ジェフリー・カッツェンバーグ

ドリームワークス・アニメーションを長年にわたり率いたジェフリー・カッツェンバーグが、ebayやヒューレット・パッカード/エンタープライズの社長兼最高経営責任者を務めたメグ・ホイットマンと組んで、新興メディア企業Quibiを立ち上げたというニュースが轟いたのは、2018年8月のこと。ハリウッドとシリコンバレーの大物がタッグを組む注目の新会社は、ディズニーやNBCユニバーサル、ソニー、ワーナーメディア、バイアコム、アリババなどから10億ドルもの資金を調達。その後、またたく間にハリウッドのトップ俳優や有名監督によるオリジナルコンテンツが発表されていった。(取材・文/小西未来

「若いユーザーが対象」「配信は携帯端末のみ」「動画1本の尺は10分以内」というユニークな動画配信サービスQuibiは、4月6日、ついにアメリカとカナダでローンチした。ゴールデングローブ賞を主催するハリウッド外国人記者協会は、その直前にカッツェンバーグの電話会見を実施。Quibiを立ち上げた経緯と勝算を尋ねた。

――1本の動画は短いですが、短編ではありませんね。長大な物語を10分間以下の章に区切って提供する点がユニークです。

これはストーリーテリングの新しい形だと思っている。Quibiは、映画の物語形態の第3世代なんだ。第1世代はもちろん映画だ。2時間で完結する物語はまず映画館で上映され、その後、テレビやDVDやストリーミングで提供される。これには100年以上の歴史がある。

第2世代はテレビドラマだ。長大な物語が1話あたり1時間の章で区切られ、年13話から24話のペースで綴られていく。これにも70年ほどの歴史があり、とくに動画配信サービスの登場をきっかけにますます活況を呈している。そして、物語形態の次の世代は、映画とテレビドラマの特徴を掛け合わせたものになると私たちは考えている。全体で2時間から2時間半の物語を、6分から10分の章で分けられて、綴られていく。利用者は携帯端末で好きな時間に好きなペースで楽しめるんだ。

――携帯向け動画というと安っぽいイメージがありますが、Quibiはハリウッドのトップの才能が手がけたハイクオリティな作品を多く取り揃えています。いったいどうやって彼らを説得したのですか?

いまから18カ月前に、ハリウッドのクリエイティブコミュニティに話を持ちかけたんだ。私が40年以上も過ごした馴染みの場所で、こう説明した。「これは新しくて、違ったことに挑戦できるチャンスだ』とね。さっき説明したように、ストーリーテリングの新しい形態だとアピールしたうえで、技術的な革新性も説明した。スマートフォンで映像を見る場合、縦長のポートレートモードで撮影した映像は、横長のランドスケープモードに向きをかえると、左右に黒い帯ができてしまう。せっかくの映像が切手のようになってしまう。逆の場合ならば、上下に同様の帯ができる。Quibiでは、どちらのモードにしても、画面一杯に美しい映像が表示されるテクノロジーを採用している。

さらに、金銭的なメリットも説明した。こちらは制作費を提供するが、引き替えに要求するのはライセンスのみで、所有権は制作者に属する。つまり、制作者側にインセンティブを与えたんだ。彼らがQuibiに賛同してくれたのは、新たなストーリーテリングの可能性と美しいテクノロジー、ユニークな金銭的メリットの3点が響いたからだと思う。

そもそもハリウッドにいる人たちは、ストーリーテラーであるだけでなく起業家だ。考えてみてほしい。映画を世に送り出すためには、まずオリジナルのアイデアを見つけ、それを脚本に仕上げたりして、出資者から資金を調達する。それからチームを率いて製品を生み出し、市場に送り出す。一連のプロセスは、シリコンバレーの起業家と何ら変わらない。送り出すものが映画やテレビドラマというだけでね。開拓者精神に溢れる彼らだからこそ、Quibiが提供する機会にわくわくしてくれた。それに、新たなテクノロジーをストーリーテリングに取り入れるのは、ハリウッドの長い伝統でもあるしね」

――料金形態はどのようになっているのですか?

「2つの料金プランを用意している。広告ありが1カ月4ドル99セント。冒頭に10秒から15秒コマーシャルが流れるのみで、物語の途中に差し込まれることはない。広告無しプランは1カ月7ドル99セントだ。また、メニュー画面などに広告などは表示しない。利用者に対して可能な限りクリーンプラットフォームを提供しつつ、利用料もお得にしている。Quibiを1時間見たら、2分半のコマーシャルを見る計算になる。HuluやCBS All Access、あるいはSpotifyの無料プランを1時間利用したら10分の広告が流れるので、こちらがいかに少ないか分かってもらえると思う。

――アメリカ国外で展開する予定は?

私たちは北米ローンチの4月6日をゴールに設定して、ひたすら突っ走ってきた。だが、構想開始からQuibiをグローバルなプラットフォームと捉えている。アメリカとカナダのローンチに成功したら、ローカリゼーションを開始する。可能な限りスピーディーに世界で展開し、各国のクリエイターやテレビ局にローカルコンテンツを作ってもらいたいと思っている。

――具体的な予定はありますか?

現時点では明確なプランはないが、イギリスなどの英語圏から展開を始めることになるだろう。すでに英語コンテンツがかなり揃っているからね。アメリカとカナダでのローンチが終わったところで、今後のタイムラインを考えることになる。ご存じのように、アリババはQuibiの重要な出資者なので、中国展開のパートナーになる。

――新型コロナウイルスの感染拡大にともない、アメリカの多くの地域で自宅待機命令が発出されていますが、ローンチ予定を変更することは検討しましたか?

新型コロナウイルスは、私たちにありとあらゆる影響を与えている。いまから3週間前、メグと対策を話し合った。まずは、Quibiを立ち上げた際の目標を振り返った。私たちは、情報と娯楽とインスピレーションを提供したいと思って、この事業を立ち上げた。そして、いま用意しているコンテンツを見直して、目標をきちんとクリアできていることが確認できたんだ。

いまは、新型コロナウイルスのせいで生活がひっくりかえされてしまって、先が見えないことから不安や恐怖を抱えてしまっている人が多い。Quibiは人々に笑いや娯楽を届けることを目的としているのだから、延期してしまうよりも、予定通りローンチしたほうがいいと考えたんだ。ただし、ひとつだけ変更を加えることにした。4月中にQuibiに登録した人には、90日間無料で利用できる特典をつけた。長い試用期間のうちに、Quibiが気晴らしや笑いを提供してくれるものだと気づいてもらえれば、そのあとも生活の一部として取り入れてもらえると信じているからね。

――映画の成否は、オープニング週末の興行成績である程度わかりますが、Quibiの判断基準はどうなるのでしょうか?

たしかに新作映画のリリースは、短距離走のようなものだ。成否は1日から数日、ときには数時間で決まることもある。その一方、サブスクリクション・プラットフォームは、マラソンと言える。数日や数週間じゃなくて、数カ月、数年と時間をかけて積み上げていく。指標は、もちろん有料会員数だ。これが長期戦であることを心得ているからこそ、90日間の試用期間を設けている。そのあいだに、スマートフォンでコンテンツを楽しんでもらえば、きっと日常生活でも維持したいと思ってくれるはずだ。いまからちょうど1カ月前に、Quibiは第2回の資金調達を終えた。予定していたよりも2億5000万ドル多い、7億5000万ドルを獲得した。そのおかげで、Quibiにじっくり会員数を増やしていく余裕が生まれたよ。

――あなたのキャリアにとって最大の挑戦といえそうですが、これまでに失敗した経験はありますか?

もちろんある。1999年に、スティーブン・スピルバーグロン・ハワードブライアン・グレイザーと私で、pop.comという会社を始めた。覚えてる?

――いいえ(笑)。

インターネットを通じて短いコメディ動画を発表しようと考え、どうにか収益化できると期待していたんだが、まったくうまくいかなかったんだ。だが、あのときの経験がなかったら、Quibiはなかっただろうね。

(映画.com速報)

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