吹き替えならではの生命力を感じてほしい――江原正士&山寺宏一が語る「ジェミニマン」裏話

2019年10月26日 09:00

吹き替え版の魅力を語り合った
吹き替え版の魅力を語り合った

[映画.com ニュース] ウィル・スミスVS若きウィル・スミスという衝撃の戦いを描く「ジェミニマン」が、10月25日から全国公開された。日本語吹き替え版で、現在のスミスこと最強のスナイパー、ヘンリー役を務めた江原正士、若きスミスことヘンリーのクローンであるジュニアに息吹を注いだ山寺宏一が、吹き替え版の魅力から、2人を起用したスペシャルビジュアルの裏話まで、たっぷりと語り尽くした。

トップガン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズを手掛けたジェリー・ブラッカイマーが製作、アカデミー賞監督賞に2度輝いた巨匠アン・リーがメガホンをとった本作。ヘンリー(スミス)は、政府に依頼されたミッションを遂行中、何者かに襲撃される。自分の動きを全て把握し、神出鬼没で絶対に殺せないと評される最強のターゲットを追い詰めたヘンリーだったが、襲撃者の正体が秘密裏に作られた“若い自分自身”のクローンだという事実を知る。

――江原さんは「メン・イン・ブラック」シリーズなど、山寺さんは「インデペンデンス・デイ」や「アラジン」などでウィル・スミスの吹き替えを担当されてきました。今回お2人で同じ俳優の吹き替えを務めた感想を教えてください。

江原:僕はずっと一緒にやりたかったんです。山寺くんと2人で同じ俳優さんを演じられるなんて、しゃれた企画だなと思いました。もちろん仕事は真剣に取り組みますが、2人の記念作品のような楽しみもありました。

山寺:僕は「ジェミニマン」のCMの声もやらせていただいて、吹き替えもやりたいなと思っていたんです。そんななか「2人にやってもらいます」と聞いて、きっと若いウィル・スミスは若手が演じるんだろうと思っていたら、「違います、山寺さんはクローン、現在のウィルは江原さんです」って聞いて、なんてすばらしいことを考えるんだろうって思いました。江原さんのことをずっと尊敬していますから、本当にうれしかったです。同じ俳優さんの吹き替えを別の作品で担当したことはありますが、江原さんにはやっぱり勝てない。江原さんに追いつきたいという気持ちで吹き替えを頑張ってきました。

江原:何言ってんだよ、そんなことないよ(笑)。

山寺:江原さんはどんな俳優さんの役でも合っちゃうんです。僕もいろんな俳優さんの吹き替えをやらせてもらいましたが、いまだに続いている人ってそんなにいないんです。

江原:一人で同じ俳優さんの吹き替えを全部できるわけではないけれど、僕たちは全部やりたい気持ちがあるよね。でも、僕らにはそれを選べないですから、お話がきたら全力投球するのが僕らのスタンスです。

山寺:その通りです。

江原:今回は「ジェミニマン」が僕らに与えられたので、見てくださる方にやっぱり吹き替え版も面白いって思ってほしい。だから、山寺くんと一緒にやりたかったんだ。燃えるんですよね(笑)。

――ウィル・スミスが対面するポスターそっくり作られた、お2人が向き合うスペシャルビジュアルも話題になりました。

江原:これで「ジェミニマン」を見てもらえるならありがたいですけれど、最初に見た時、えっ!?と思って笑っちゃいました。撮影の前日に黒いシャツを慌てて買いに行って、撮影では髪の毛もビシっとしてもらったけれど、後から完成版の山寺くんを見たらそのまんまだった(笑)。

山寺:僕はメガネをかけないと誰だかわからないですが、メガネをかけたウィル・スミスなんていないので、ありがたい企画だけれどありがた迷惑だって言っていたんですよ(笑)。「ジェミニマン」を見ているときに僕らの顔を思い出させない自信はあるのですが、あのビジュアルは悪ノリじゃないかと思って、怖くてネットの反応も見られなかったです。話題になったって聞いて安心しました。

江原:変なおじさんたちが頑張っているなって見てもらえたらうれしいよね。

――日本語吹き替え版ならではの魅力はどんなところにあるとお考えですか?

江原:字幕と日本語吹き替え版は、同一だけれど同一と思ってほしくない部分があります。本来はイコールだけれど、そうじゃない楽しみ方をしてほしいです。僕らの大先輩の方々が吹き替えされた作品を見ると、俳優と口が合っていなくても、セリフが染み渡るときがあります。皆さんにもそういう見方をしていただきたい。今は技術で合うようになっているけれど、その奥にあるものを表現できるよう頑張っています。熱というか、吹き替えならではの生命力のようなものを感じてほしいです。

山寺:良い吹き替えは楽しいけれど、ダメな吹き替えはダメって極端ですよね。もちろん、字幕も技術が必要だと思いますが、オリジナルの音が聞こえるので安定はしている。いい吹き替えだと感情も伝わってくるし、俳優さんの表情まで見ることができるけれど、ダメな吹き替えはすべてを台無しにするので、諸刃の刃だと僕は思います。観客の皆さんに判断してもらうしかないですが、良い吹き替えでありたいです。

僕が江原さんのことをいつもすごいと思うのは、いい吹き替えを作るためにご自分でものすごく工夫をされているんです。僕はどっちかというと、俳優さんが日本語をしゃべったらこんな感じっていうのを細かくやっているのですが、江原さんはその先をいつも見据えていらっしゃる。自分なりに、どうしたらこの表現がもっと日本語で豊かになるかをいつも模索されています。

江原:山寺くんはそう言ってくれるけれど、それは彼もやっていることなんです。彼がすごかったのは、連日主役や主役級っていうすごいスケジュールのなかで、とにかくセリフのインもアウトもブレスも、全部バッチリ合っちゃう。みんな驚いて、引いていました(笑)。天性の才能ですよ。とんでもない大車輪で動いていたとき、山寺くんは本当に大変だったと思う。2人でよくやったのは、たくさんしゃべる俳優さんだったよね。

山寺:ロビン・ウィリアムズとかやりましたね。

江原:ジム・キャリーとかもね。僕らは彼らの役をシェアしてきました。大変なんだよね、朝までかかることもあった。

山寺:寝る時間を計算して、それ以外の時間はとにかく練習していました。江原さんがさっき“熱”とおっしゃいましたが、今回のウィル・スミスも過酷なロケをやり、体張ってアクションをしているのに、我々は空調の効いたスタジオで収録をしている。けれど、こっちも気持ちは向こうと同じ熱を持って演じないといけないですよね。

江原:アフレコまでにもっと時間があればなって思うこともあります。けれど、僕らはこなしていかなければならない。僕も忙しいスケジュールだったときに、真ん中にエディ・マーフィの役がきたこともあって、どうしようかと思った(笑)。精神力もないといけないし、仕事をこなすということはすごいことなんです。山寺くんは本当に大変だったんだなって実感しました。つまり、彼はアスリートなんですよ。

山寺:そういう時代を経ていろいろ学ぶことができました。「ジェミニマン」では(ダニーの吹き替え声優を務めた)菅野美穂さんともご一緒しましたが、本業以外の方から刺激を受けることもあります。こういう表現があるんだなって。

江原:本当に日々勉強だよね。

(映画.com速報)

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