上田慎一郎監督は「カメ止め」越えという重圧をどう乗り越えたのか?

2019年10月20日 08:00

上田慎一郎監督の最新作「スペシャルアクターズ」が公開
上田慎一郎監督の最新作「スペシャルアクターズ」が公開

[映画.com ニュース]製作費約300万円のインディーズ映画「カメラを止めるな!」は、興行収入31.2億円の大ヒット作を記録し、社会現象を巻き起こした。あれからおよそ1年半。同作のメガホンをとった上田慎一郎監督の最新作「スペシャルアクターズ」が完成した。「インディーズ映画界の奇跡」とも称された2018年を代表するサクセスストーリーは、驚きをもって世間に迎えられたが、それだけに「こんなにプレッシャーを受けたのは人生で初めて」というほど、次回作には重くのしかかった。だが実際に出来上がった作品は、上田監督らしさが表現された作品となった。彼はいかにして本作を完成に導いたのだろうか?

本作は、「作家主義」×「俳優発掘」を揚げ、13年に始動した「松竹ブロードキャスティングオリジナル映画プロジェクト」の第7弾。緊張が極限まで達すると気絶してしまう主人公・和人は、演じることを使った何でも屋稼業を務める俳優事務所「スペシャル・アクターズ」に所属することになり、そこで旅館乗っ取りをもくろむカルト集団と対決することになる。今回もオリジナルの脚本の下、ワークショップで発掘した15人の無名の俳優たちを抜てき。「カメラを止めるな!」同様、個性豊かなメンバーが集まった。

だが、上田監督がいざ本作の脚本執筆に取りかかろうとすると「『カメ止め』を越える作品を作らなくては」という思いで押しつぶされそうになり、何度か気を失いそうになる日々が続いたという。しかし、そんな彼を支えたのは、家族や周囲の仲間たちだった。例えば「松竹ブロードキャスティング」の深田誠剛プロデューサーは、サザンオールスターズのエピソードを引用しながら、上田監督を激励。いわく、デビューシングル「勝手にシンドバッド」が大ヒットを記録した後、やはり桑田佳祐も大きなプレッシャーに見舞われたというエピソードを伝えた。

セカンドシングル「気分しだいで責めないで」は前作ほどのヒットにはならなかったものの、大ヒットを記録した3曲目「いとしのエリー」を生み出すためには必要なプロセスだった……。そのことを踏まえ、「うちは2曲目になってもいい。上田さんの好きなものを作ってください」という深田プロデューサーの言葉に、暗闇の中であかりが灯されたような気持ちになったという。「そこまでの覚悟を持ってやってくれているんだなと。その言葉を受けて、もう一度シンプルに、自分が面白いと思うものだけを作ろうという気持ちに立ち返ることが出来ました」。そしてそのプレッシャーを逆手にとり、主人公が緊張すると気絶してしまうという設定を作りあげた。ある意味、上田監督自身を投影した物語ともなった。

さらに監督補・宣伝デザインを担当する妻のふくだみゆき、本作で音楽を担当する上田監督の幼なじみ・鈴木伸宏の存在も大きかった。「監督補に入っている妻や、音楽をやっている鈴木がずっとそばにいてくれたから、自分の弱音が吐けた。自分が苦しい、書けないといったことをひとりでため込まないで、口に出して言えたということが大きかったですね」。

今回、監督・脚本・編集という肩書きのほかに、宣伝プロデューサーという肩書きが加わった。インディーズスタイルの宣伝を貫き、「キャスト一丸となってチラシ配りを行ったり、SNSで告知をしたりと、お客さんも巻き込んで。そこまでやるか、というくらいに宣伝活動を行うという基本の部分は『カメ止め!』の時と変わりません」。だが、本作は全国150館規模で公開される作品であり、全国の観客にどう届けるのか、という視点も必要になる。

「全国で公開されるということは、普段、年に1回しか映画館に行かないような人に、どうやって届けたらいいのかということも考えないといけない。やはり有名なキャスト、スターが出ているような映画ではないので、普通の商業映画に比べると一気に広がるということはなかなかない。だから今回は、10月18日の初日にピークを持っていくために、いかにしてメディアに露出させ、広めるかという、メジャーの宣伝手法も勉強になっています」。

上田監督自身、「見終わった後に、映画館をスキップで出てこられるような、愉快痛快なエンタテインメント映画になっていると思います」と自負する。だからこそ「この映画をたくさんの方に届けるべく、馬車馬のように宣伝にまい進します。ぜひ劇場にお越しください」と呼びかけた。

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