民主主義の原点を問う、英国の悲劇の物語  マイク・リー監督がピータールーの虐殺を解説

2019年8月9日 14:00

ブレグジットや香港デモに触れ「今こそ映画化 すべきだと思った」と語るマイク・リー監督
ブレグジットや香港デモに触れ「今こそ映画化 すべきだと思った」と語るマイク・リー監督

[映画.com ニュース] 名匠マイク・リーが、19世紀初頭のイギリスで起きた「ピータールーの虐殺」を映画化した「ピータールー マンチェスターの悲劇」が公開された。1819年8月16日にマンチェスターで起きた英国史上最も悪名高き事件“ピータールーの虐殺”を描いた本作。選挙権を求める民衆6万人の平和的なデモに、騎兵隊と武装した軍隊が突進し多数の死者を出した事件の全貌を明かす。200年前の事件とはいえ、現在の世界で起きている問題と驚くほどに通じている。英・ガーディアン紙創刊のきっかけとなり、民主主義の原点を問う事件と映画について、リー監督が語るインタビュー映像を、映画.comが入手した。

この事件が起きたマンチェスター出身であるリー監督は、英国でもこの出来事を知らない人は多いと説明し、理由として「この出来事を教える学校はさほど多くない。それは、偉大なる大英帝国の栄光の話ではなく、むしろイギリスの体制にとって汚点だからだろう」と厳しく指摘する。

当時の英国では、選挙権を持つのは一部の富裕層だけで、大多数の市民にはそれが与えられておらず、セント・ピーターズ広場では長年政治集会が開かれていたというこの悲劇の背景を紹介する。「民主主義を求めるこのような行動や、それに対する制圧は、今も、世界でも起こっている。今こそ映画化すべきだと思った」と映画化の狙いを明かす。

さらに、日本公開に寄せて「製作を決定してから、今に至る2019年までの5年間で色々な事件が起きた。私のいるイギリスではブレグジット(英国のEU離脱)があり、香港デモで民衆が抑圧されたり、世界中で正気の沙汰ではないことが起こっている。この映画が描くのは、今と何も変わらない民主主義についての物語なんだ」とこの物語が持つ“現代性”を改めて強調する。

リー監督は、「自分の手で映画化することを真剣に考え始めたのはこの数年のことだ」と述べ、それまでは誰かが映画化すべきと漠然としたものだったという。気持ちが変わった理由について、「『ターナー、光に愛を求めて』を撮った後に、急に自分でこの事件を手掛けるのも悪くないんじゃないかと考えるようになったんだ」と明かし、自らこの悲劇を映画として残すことを決意。歴史家とのリサーチに2年半をかけ、脚本執筆に6カ月、オールロケで16週間にも渡る撮影を行った。

映画のテーマについて、「勇気ある行動や邪心、人間の愚かさを描いている。だが、全編を通して人間を立体的に見つめ、誰もが持つもろさと強さを浮き彫りにしているんだ」と、これまでの作品と変わらず、“人間”について描いた作品であるとつけ加える。最後に、「民主主義について、権力を持っている人、いない人についての疑問をこの映画を通じて考えてもらえればいいなと願うよ」と日本の観客にメッセージを寄せた。

ピータールー マンチェスターの悲劇」は、8月9日からTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。

(映画.com速報)

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